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5月27日【今日は何の日?】ドラゴンクエストの日-ゲームが築いてきた技術の歴史と社会への影響を振り返る

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Last Updated on 2025-05-27 16:58 by admin

奇跡の出会いは伝説へ

『ドラゴンクエスト』シリーズのキャラクターデザインを手掛ける鳥山明氏は、2016年12月29日、NHKで放送された本作の30周年記念特別番組『ドラゴンクエスト30th そして新たな伝説へ』でこのようなメッセージを残しました。

ほんの軽い気持ちで、キャラクターデザインを引き受けたドラゴンクエスト。「ロールプレイングゲームってなに?」そんな時代でした。

まさか、その後30年以上も続くなんて思ってもみませんでした。正直、そんなに続くならお断りしていました。”(鳥山明)

ゲームデザイナー・堀井雄二氏は、当時『週刊少年ジャンプ』のライターとしても活躍しており、同作の開発にあたってキャラクターデザイナーを探していたところ、集英社の編集者であり鳥山明氏の担当であった鳥嶋和彦氏から紹介されたことがきっかけでした。

作曲を手掛けるすぎやまこういち氏も複数のメディアで、エニックス(現・スクウェア・エニックス)が発売していた将棋ゲームのアンケートハガキを書くだけ書いて自宅に放置していたら、妻が気を利かせて投函した縁で開発に携わることになったと語っています。

「黄金トリオ」と呼ばれ、日本のゲーム業界を席巻し続けてきた3人の出会いのきっかけはほんの些細な偶然で、誰もここまで巨大なコンテンツになるとは予想もしておらず、まさに神が引き合わせたといっても過言ではないでしょう。

目次

 1.ゲームとしての『ドラクエ』の進化

 2.『ドラクエ』が私たちの社会に与えた影響

 3.仲間たちの別れと新時代

ゲームとしての『ドラクエ』の進化

1986年5月27日 初代『ドラゴンクエスト』(FC)発売

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日本における家庭用ゲーム機向けのRPGゲームの祖となった本作の容量は約64KB。スマートフォンで撮影した写真1枚(約2MB)の1/30以下の容量に、システムも、グラフィックも、音楽も、すべてが詰まっています。

容量を節約するため、堀井雄二氏はカタカナの量を20文字まで削減し、呪文や町の名前なども極力同じカタカナを繰り返し使えるようにデザインしました。また、作中のすべてのキャラクターのセリフも堀井雄二氏自らが一字一句設定しています。

グラフィックに関しても、主人公は常に画面の手前側を向いており、NPCに話しかけるときには毎回方向を指定しなければならないなどの不便も抱えていました。

後にガラケーアプリ向けにリメイクされる際にも、容量の問題を抱えており、SFC版をベースとしながら、各所で調整を行っていました。この配信をきっかけに、モバイル業界にも「ドラクエが動く容量の端末を開発する」という流れを生んだそうです。

当時のRPGと言えば、海外メーカーがパソコン向けに開発したものが主流で、システムなども比較的複雑なものでした。それらの作品に触発された堀井雄二氏が、「日本人にも親しんでもらえるRPGを作りたい」と思ったのがすべての始まりです。

国内累計販売本数は約150万本であり、初作でありながら大ヒットを記録しています。

2018年に、この初代の発売を記念して、一般社団法人・日本記念日協会によって正式に「ドラゴンクエストの日(ドラクエの日)」として登録されました。

1987年1月26日 『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』(FC)発売

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容量は前作の倍の約128KBに増加し、最大3人のパーティ、複数の敵の出現による戦闘の戦略性向上、約6倍の広さのフィールドマップ、船などの新たな移動手段、使用楽曲数の増加などが可能になりました。

国内累計販売本有数は約240万を超え、すでに社会現象を起こしていましたが、発売直前の時期には、人気の無い売れ残りのソフトが大量に余ることで小売店や問屋が圧迫される事態が相次いでおり、発売直後は約40万本ほどしか発注されなかったために、即完売が続出してしまい、余計な混乱を招いてしまいました。

そして本作は開発期間に余裕がなく、全体を通したデバッグが行われておらず、物語のある地点を境に急激に想定レベルが跳ね上がるという事態が発生しました。

それに加えて謎解きやギミックの難易度も高く、多くのプレイヤーが苦しめられたことでしょう。特に「ロンダルキアへの洞窟」は全シリーズを通しても屈指の難易度を誇るダンジョンとして知られています。

1988年2月10日 『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』(FC)発売

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容量はさらに倍の約256KBになり、さらに広くなる世界、「職業」という新たなシステムの導入、昼夜の概念の追加、そしてFC用ソフトとして初の「バッテリーバックアップ」機能が搭載され、「ふっかつのじゅもん」として進行状況を外部(プレイヤー)に記憶させることなく、カセット自体にセーブデータを3つまで保存できるようになりました。

当時はまだ不安定な技術だったためデータ消失が頻発しましたが、以降当たり前となった技術が生まれた瞬間です。特にストーリーを読み進めることを楽しむRPGにとって、セーブデータを保存しておけるという技術がもたらした革新は計り知れないものです。

しかし、ギリギリで容量が足りず、オープニングにロゴを入れることができなかったためにシンプルなタイトルのみの表示となってしまいました。

そして、国内累計出荷本数は約380万本とFC・SFCのソフトの中で3位となった本作は大きな社会現象を巻き起こしました。初代と『Ⅱ』の大ヒットを受けてドラクエブームはさらに過熱し、平日の発売であったにもかかわらず、発売日の前日や早朝から販売店の周りに人だかりができ、学校や会社を休んでまで買いに来た人が続出しました。

特に東京都内の混乱が大きく、一番人が集まった「ビックカメラ池袋東口店」(現在は閉店)では、発売日当日に約1万人が池袋駅までの約2kmの行列をつくるに至りました。

当日の都内だけでも未成年の児童・生徒が356人補導される大事件となり、この事態を受けて警察庁はエニックス(現・スクウェア・エニックス)に対し「予約券を発行し、子供たちが学校を休まないような対応をすべき」と文書で依頼し、その券も日曜日や放課後などの時間に配布するように各販売店にも協力を仰ぎました。

文部省(現・文部科学省)も各都道府県の教育委員会に、子供たちが休んでまで買いに行かないように指導・注意喚起するよう通達しました。

高額な転売や、カツアゲ、窃盗などの事件も多発し、多くのメディアに取り上げられました。この事態を受け、エニックス(現・スクウェア・エニックス)は以降、発売日を祝日や夏休み、冬休みなどにする方針を決めました。

1990年2月11日 『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』(FC)発売

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容量は約512KBまで増加しました。半導体技術の発展や、メモリ管理技術の向上など、初代の発売から3年半という短い期間で8倍にまで増加したのは類を見ないほどの技術革新と言えるでしょう。その代わり前作までが定価5000円台(税別)だったのに対し、8500円(税別)と大幅な値上げとなりました。また半導体調達の都合で発売が当初の予定より遅れてしまったという背景もあります。

前作では省略されてしまったオープニングですが、本作ではより少ない容量でアニメーション表現を実現することに成功しました。この秘訣については、当時の開発であるチュンソフトの社員であった内藤寛氏が自身のYouTubeチャンネルにて語っています。

そしてなにより特徴的なのが「AI戦闘システム」の導入です。

従来のゲームにおけるAIとは、簡単なパターンを繰り返したり、特定の動作に特定の反応を返すに留まっていましたが、本作における革新的な要素とは「作戦によって戦闘方針をプレイヤーがいつでも変えられる」「行動直前に行われるリアルタイムな状況判断」「相手のHPや自分のMP残量を考慮した行動」「敵モンスターの呪文耐性の学習」といった複雑な機能を複数備えていた点です。

この時代では「エキスパートシステム」と呼ばれ、特定の専門分野における知識をルールベースで構築し、推論エンジンを用いた意思決定を行うAIシステムが存在していました。産業や医療など幅広い分野での活躍が見込まれていましたが、導入コストの高さや技術者の少なさから社会への浸透は進まず、AIへの過度な期待を裏切る形となり、開発は進まず、資金提供も減り、企業の倒産や研究者の転向が余儀なくされる事態が相次ぎました。1950年代から1960年代に起こった同様の事例を第1として「第2のAIの冬」と呼ばれた時期でした。

そんなさなかに家庭用ゲームという娯楽にAIが用いられ、それが途切れることなく開発され続けて、形を変えながら現代におけるゲームの常識となっているのです。

1992年9月18日 『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』(SFC)発売

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シリーズ初のSFC用ソフトとなり、容量もさらに向上し約1.5MBになりました。当初はFC向けに開発されていましたが、ゲーム内容が充実していくにつれ、開発が困難になり、SFC向けに作り直すことになったそうです。

戦闘AIもキャラクターごとに別々に指示することができるようになり、敵のHPや行動パターンだけでなく、呪文耐性も最初から把握済みに変更され、無駄の少ない行動をとれるようになりました。

グラフィックや音楽が大幅にボリュームアップし、コントローラにもXボタン、Yボタンが追加されたことで操作性も大きく向上しました。

漢字も使用できるようになり、カナカナもようやくほぼすべて使用できるようになりました。状態異常を表すアイコンも独自に作られ、瀕死や死亡を表す色の変化がキャラごとに分けられるようにもなりました。

サウンドもステレオに対応し、中ボス専用にも曲を用意できるようになり、ダンジョン内では音が響いているように聞こえるリバーブ効果も再現されました。

メニュー画面でも、項目の1番上と1番下がループするようになったり、Bボタンを押すことで、以前はすべてのメニューが閉じてしまっていたのを、1階層ずつ戻るようになるなど、UIにも大きな変化が起こっています。

結婚相手を「ビアンカ」にするか「フローラ」にするか、という論争はいまだにファンの間で巻き起こっています。

この件に関しては、堀井雄二氏が2011年発売の『ドラゴンクエスト25thアニバーサリー 冒険の歴史書』内に以下のようなコメントを残しています。

”ただ、みんなふつうはビアンカを選ぶだろうと思ってたんですが、フローラを選ぶ人も多かったのは、ちょっと意外でしたね。そこでDS版では、ホントにこれは選ばないだろう、というキャラクターを追加したんですが、やっぱり彼女を選んだ人も多かった(笑)”(堀井雄二)

ゲームという作品が、作者の思惑を超えて社会的な影響を与えている典型的な例です。それだけドラクエという作品が我々の生活に浸透し、受け入れられ、愛されている証拠です。特別なものではなく、誰しもが当たり前のように楽しんで、共通の話題として盛り上がり、コミュニティを形成していく様は、ゲームとして理想の姿と言えるでしょう。ちなみに私はフローラ派です。

☆1993年12月18日 リメイク版『ドラゴンクエストⅠ・Ⅱ』(SFC)発売

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時代が流れ、SFCが主流となり、FCを持っていないプレイヤーが増えたタイミングでのリメイク発売となりました。

これまでパソコンや他社ハードからの移植は多くありましたが、本作はゲーム業界におけるリメイク作品の先駆けともいえる存在です。

初代だけではボリューム不足でしたが、『Ⅲ』まで入れるほどの容量はなく、『Ⅱ』とのカップリングとなった背景があります。

1995年12月9日 『ドラゴンクエストⅥ 幻の大地』(SFC)発売

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本作は「プレイヤーの自由度」という点に焦点が当てられており、容量は約4MBにまでなりました。これはSFCソフトとしても最大級であり、シリーズ初の定価10000円(税別)を超える事態になりました。

その豊富な容量を生かした大幅なグラフィック向上、上と下に分かれた2つのワールドマップが織りなす、奥深く、考えさせられるストーリー。『Ⅴ』から引き続きモンスターを仲間にできたり、『Ⅲ』以来の復活となる職業システムには上級職という新システムが追加されました。

堀井雄二氏いわく、当時社会的流行となっていた「自分探し」というものをテーマにしたということで、とにかくプレイの自由度の高さや難易度を上げ、プレイヤー体験を上げるとともに、攻略情報を求めてコミュニティを活性化させてほしいという狙いがあったそうです。

特に、進化したエフェクトやアニメーションを見てほしいという思いも込められており、モンスターのステータスが他の作品よりも主人公たちに対して高めに設定されています。

サウンド面でも強化が入っており、距離によって音量が変わるSEであったり、室内に入ると外のBGMの音量が下がるといった、細かい仕様が採用されており、戦闘終了時も、開始前まで流れていたBGMの続きから流れるようになりました。

☆1998年9月25日 『ドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランド』(GB)発売

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シリーズ初の携帯ゲーム機向けに発売された本作は、1996年に発売された『ポケットモンスター赤・緑』の後追いという立場ではなく、元スクウェア・エニックス取締役であり、馬主でもある当時のプロデューサー・千田幸信氏のアイデアでモンスター同士の配合というシステムを取り入れた経緯があり、どちらかというと『ダービースタリオン』シリーズから着想を得たものだそうです。

その他にも『Ⅵ』の外伝作品という位置付けや、携帯ゲームというハードを選択することで小さい子供にもドラクエに触れてほしいというコンセプトで開発されています。

過去作に登場したモンスターだけでなくオリジナルのモンスターもデザインされており、それがナンバリングタイトルに逆輸入されるケースも多く見受けられます。

累計出荷本数約230万本と、GB用ソフトの中でも10本の指に入る超大ヒット作となり、以降『モンスターズ』シリーズは『ドラクエ』外伝の中でも特に特別な扱いとなりました。『モンスターズ2 イルの冒険・ルカの旅立ち』『モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』、『キャラバンハート』、『ジョーカーズ』シリーズ、『スーパーライト』といった数多くの作品が生まれ、リメイクもされています。

2000年8月26日 『ドラゴンクエストⅦ エデンの戦士たち』(PS)発売

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シリーズ初のPS用ソフトとして発売され、国内累計出荷本数の約410万本という数字は、現在でも「最も売れたPS用ソフト」としての記録を保持しています。

約660MBのCD-ROMの2枚組という容量にはプリレンダリングムービーの収録や、圧倒的なボリュームのシナリオが詰まっています。

PSの2年後に販売されたNINTENDO64のカートリッジタイプのソフトでは64MBというSFCと比べ物にならない容量ではあったものの、CD-ROMには足元にも及ばず、PSのようなプレイ中の差し替えなどは技術的に困難だったため、プレステはゲーム業界に革新的な存在だったのです。

グラフィック面では2Dのドットと3Dポリゴンを組み合わせた手法で表現されており、従来のテイストを残しつつ、立体感と迫力のあるマップが作られ、カメラを最大360度回転させることもできるため、一見、死角になるようなところにアイテムが隠されていたりなど、プレイヤーの体験も大きく向上しました。

これは2001年11月22日発売のリメイク版『Ⅳ』や、DSリメイクの『Ⅳ』『Ⅴ』『Ⅵ』にも流用される基本的なグラフィックとなりました。

CD-ROMの弱点はROMカセットに比べるとロードが長いという点ですが、これも独自の技術によって解決させ、特許申請も行われました。1度に読み込むデータ量を少なくするための工夫が各所に施されていますが、フリーズが多発するというデメリットを抱えていました。

致命的なほどに再現性の高い進行不能バグが存在し、これが修正されたPS one Books盤は中古で1万円以上の価値がつくプレミアとなっています。

また、作中には「移民の町」というものが存在し、決められた場所にランダムに出現するNPCを集めることで、町を発展させていくというものがあります。特定の住民を集めることで異なる発展を遂げ、そこでしか手に入らないアイテムがあるため、本作の重要なやりこみ要素の一つです。PSに異なるセーブデータが保存されたメモリーカードを2枚差し込むことで、住民を交換することができるという機能もありました。

☆2003年9月19日 『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』発売

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本作はテレビに接続する「紋章ユニット」と呼ばれる本体と、反射板がついた剣型のコントローラーからなる家庭用体感型ゲームです。

「紋章ユニット」から発せられた赤外線が、剣で反射することで動きを認識し、あたかも本当に魔物に対して剣を振って戦っているかのような体験ができるゲームとしてデザインされており、Wiiの発売の約3年前に存在していました。

新世界株式会社が開発した「XaviX(ザビックス)」という技術が利用されており、当時はすでにプレイヤーの動きを認識するゲーム技術はいくつか存在していましたが、「XaviX」は精度や反応速度、そしておもちゃなどで家庭向けに導入しやすいという点では革新的な技術でした。

また、そういった体感型ゲームの多くがスポーツゲームだった中、RPGゲームが採用したというのは稀な例となっています。

☆2004年3月25日 リメイク版『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』(PS2)発売

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シリーズ初のフル3DCGで表現されましたが、キャラクターは既存のドット絵と同様な低等身で、立ち止まっているときに足踏みモーションを繰り返すなど、従来のドラクエの延長的な表現でした。システム面の多くも『Ⅶ』の流用となっています。

また、音源としてオーケストラ演奏を本格的に採用した初の作品でもあります。

2004年11月27日『ドラゴンクエストⅧ 空と海と大地と呪われし姫君』(PS2)発売

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シリーズで初めて等身大のフルポリゴンの3Dグラフィックで製作されました。キャラクターやモンスターはセルシェーディング技術が採用され、3Dグラフィックでありながら、鳥山明氏のイラストの雰囲気を感じさせるアニメ調での表現が可能になっています。

カメラも従来の作品のような俯瞰視点からプレイヤーの目線の高さで常に360度回転できる仕様に変更され、広大なフィールドを見渡すことで迫力のある体験ができます。

表現方法が変わったことにより、階段などもスケールに合わせた描写に変更する必要があるためにマップの多くが開発時の想定よりも縮小されることになったり、戦闘時には仲間のアニメーションなどを作りこんだりしたために戦闘の頻度を少し下げるようにしたりなどのバランス調整が多くあったそうです。

加えて、テキストのみの描写でプレイヤーの想像にゆだねていた表現も本作では取り入れられにくくなり、ランダムでいろいろなことが起こる呪文「パルプンテ」や、ドラゴンに変身する呪文「ドラゴラム」などの伝統的な要素が採用を見送られました。

パーティメンバーも4人に減り、自由に組み替えたり、転職のシステムが採用されなくなった代わりに、「スキル」システムを導入し、プレイヤーによる個性的な育成が可能になり、これは以降のシリーズにおいて採用される重要な要素となりました。

また、この作品から本格的に海外向けのローカライズに注力し、世界的な認知を高めた作品でもあります。海外版ではUIやシナリオに手が加えられ、日本に先んじてシリーズ初となるフルボイス化もされています。

☆2007年6月21日 『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』(アーケード)稼働開始

アーケード向けに開発された本作は、独自にデザインされた歴代のキャラクターやモンスター、アイテムなどのカードを組み合わせて戦い、基本的には赤と青の2つのボタンで操作します。戦闘中にゲージがたまると「とどめの一撃」という大技を使用することができ、筐体に刺さっているかのように搭載されている剣を差し込むことで発動できるという、シンプルながら没入感の高いゲームデザインになっています。

歴代の様々なキャラクターやモンスターが登場した本作の3Dモデルは、以降の多くの作品に流用されています。

カードのコレクション性も高く、定期的に全国大会が開催されるなどして、多くのプレイヤーを集め、稼働から1年でカードの累計出荷枚数1億枚以上という大ヒットを記録しました。最終的には累計2億枚を突破し、現在でも当時のカードはコレクターの間で人気を持ち続けています。

2008年12月3日には『モンスターバトルロードⅡ』としてリニューアルされ、2010年7月15日には家庭向け移植版である『モンスターバトルロード ビクトリー』が発売され、アーケードのカードのQRコードを読み込んでゲーム内にデータで使用するための3DS、iモード向けアプリもリリースされました。

2009年7月11日 『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』(DS)発売

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DS用として発売され、ナンバリング初の携帯ゲーム機用ソフトとなりました。通信によって近くのプレイヤーとのマルチプレイに対応したり、オンライン経由でアイテムを受け取ったりすることができるようになり、さらにDSに備わっている「すれちがい通信」による「宝の地図」の交換は大きな社会現象となりました。

さらにキャラクターメイクも初めて実装され、性別、身長、顔、髪型、目の色などを組み合わせて個性的なキャラクターを作ることができ、すべての装備品がグラフィックに反映されるのも特徴的です。

さらには『Ⅲ』を彷彿とさせるルイーダの酒場システムの復活や、歴代のキャラクター達を宿に招いたり、歴代のラスボスたちと戦えるなど、往年のファンにも嬉しい要素の多い作品となっています。

DSのスペックに合わせるため、基本は3Dポリゴンを使用ししつつ、一部のNPCはドットで表現するなどの工夫がなされていました。

本作はDS普及率の高さや、すれちがい通信によるプレイヤー体験の高さから新規プレイヤーの獲得につながり、国内での売上は約437万本と、(リメイクを合算せず)「国内で最も売れたドラクエ」となっています。

強力な武器や道具が確定で入手できる、通称「川崎ロッカーの地図」や、レベル上げに最適なモンスターが確定で出現する、通称「まさゆきの地図」などの存在が明らかになると、ますますすれちがい通信のブームは過熱していきました。都心ではすれちがい通信目的のプレイヤーが集まるスポットが生まれ、人々のリアルな交流の場を提供する大きなきっかけとなりました。

その結果として、2010年5月20日には「ワイヤレス通信を用いて1億1757万7073人(2010年3月4日現在)がすれちがったゲームソフト」としてギネス記録に認定されました。

2011年3月には全世界累計出荷本数が530万本を突破し、シリーズ初の500万超えを記録することになります。

実は開発が開始されたのは『Ⅹ』よりも後であり、オンライン要素を盛り込むのは時期尚早と考えられ、試行錯誤の果てに開発当初のアクション性の高い路線から変更し、MMORPGである『Ⅹ』のような大量のサブクエスト、マルチプレイ要素などを盛り込み、2006年12月28日発売の『ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー』のシステム面を流用しながら開発が進められました。

そのため、当初の予定であった2007年から2年以上も延期した末の発売となりました。

2012年8月2日 『ドラゴンクエストⅩ 目覚めし五つの種族 オンライン』(Wii)発売

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シリーズ初のMMORPGとして発表され、当初は非常に物議を醸しました。オンラインゲームは特にディープなゲーマーがやるもので、長時間かけないと遊べないものというイメージや、他者との協力プレイを余儀なくされるというイメージが強く、内外からの反発が少なからずありました。

Wiiの発売から約5年半も経ってしまっており、すでに次世代機であるWiiUも発表された後のタイミングというのも向かい風でした。

しかし、『Ⅹ』はこれを払拭するべく、「一人でも遊べる、依存化しない、いつものドラクエ」というコンセプトで作られており、その後着実にプレイヤーを獲得していきました。Wiiに始まり、WiiU、Windows、3DS、PS4、Switchと、非常に多くのプラットフォームで展開していきました。(2025年現在、Wii、WiiU、3DSはサービス提供を終了しています。)

他のプレイヤーが育てたキャラクターを仲間NPCとしてレンタルできる機能や、ログアウトしている時間をアイテムに交換できるシステム、そして発売したバージョン1の時点で、アップデートを待たずにラスボスとエンディングが用意されているという点で、MMORPGに馴染みのない人でも1本のドラクエとして遊べるようにデザインされていました。

開発当初の「10年は続けたい」という目標を達し、更に数年がたった今でも新たなストーリーが追加されているというのは、MMORPGの中でも非常に稀なことです。昨今でも多くのMMORPGやスマホゲームが数年でサービスを終了していくように、どれだけドラクエというコンテンツが愛されているのか、そしてゲームとしての完成度が高いのかを物語っています。

☆2015年10月15日『星のドラゴンクエスト』(iOS、Android)配信開始

前年に配信された『スーパーライト』とは対照的に、装備を集めて人間が戦うことを主体にしたスマホ向けゲームとなっています。

『Ⅹ』とは別のアプローチで、長く遊べるゲームとして成功を収めています。歴代のキャラクターになりきれる装備品の数々や、ナンバリングタイトルとのコラボなどでボスと戦ったりなど、これまでの『ドラクエ』すべてを網羅した作品の1つです。

イラストレーターのカナヘイ氏が本作中で他プレイヤーとの交流に使用できるスタンプやSNS用のイラストを担当しており、独自のグッズ展開も行われています。『ドラクエ』のグッズの多くは鳥山明氏のデザインを踏襲したものが多い中、変わったデザインが目を引くこともあって人気を博しています。

2017年7月29日 『ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて』(PS4、3DS)発売

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PS4と3DSと同時発売された本作は、PS4版では最新の高画質3DCGで製作され、3DS版では、『Ⅸ』を彷彿とさせる低等身ポリゴンとドットの組み合わせの3Dモードと、昔ながらのドット絵の2Dモードを切り替えられる仕様となっていました。

また、3DS版の独自要素として「すれちがい通信」を利用して、過去作の印象的なイベントに介入するというやりこみ要素も用意されていました。

そして、「ふっかつのじゅもん」によって異なるプラットフォーム同士でもある程度の進行度を共有できるようになっており、これは後に発売された『Ⅺ S』で使用することもできます。ただし、『Ⅺ S』には新たなストーリーを含む追加要素が含まれているため、『Ⅺ S』のじゅもんを『Ⅺ』で使うことはできません。

2024年12月には『Ⅺ』及び『Ⅺ S』の全世界累計出荷本数は合計で700万本を突破し、「世界で最も売れたドラクエ」となっています。これには複数のハードや、Windows向けにも発売されていることが大きく影響しているでしょう。

本作は30周年記念作品としての位置づけもあり、各所に歴代の作品を彷彿とさせるような要素が多くちりばめられており、新規プレイヤーや世界中に向けて大ヒットを打ち出しつつ、シリーズのファンであれば2倍楽しめるようになっています。私はこの作品をプレイしたとき「今までの人生でドラクエを好きになれて本当に良かった」と心の底から感動しました。

音源もシンセサイザー版と、「東京都交響楽団」による演奏音源の両方が収録されており、プレイヤーが自由に切り替えられるようになっています。

☆2019年9月12日 『ドラゴンクエスト ウォーク』(iOS、Android)配信開始

スマホ向けに開発された位置情報利用ゲームで、すでに『ポケモン GO』が世界的なブームを巻き起こした後にリリースされました。

本作は同じ位置情報利用ゲームではありながら、全く異なるアプローチがなされており、『ポケモン GO』が「収集」に特化しているのに対し、『ウォーク』は「冒険」に特化したゲーム性になっています。

ストーリーが用意されており、読み進めるためには自分で設定した地点まで歩いていき、選択したクエストに合わせてモンスターが出現する方式になっているため、地域格差を軽減する設計がなされています。各都道府県に4か所ずつ「ランドマーク」となる場所が設定されており、ここでしか手に入らない特別なゲーム内のコレクションアイテムが存在しています。他プレイヤーと交換しながらコンプリートを目指すという楽しみ方も用意されています。

また、自宅から出ずとも簡易的にこなせる要素も現在では増えており、天気の悪い日や、休日に無理に外に出る必要もなく、気軽に遊べるような機能も順次追加されています。

『ポケモン GO』で問題視された歩きスマホの増加に対しては、リリース直後から自動で戦闘を行う「ウォークモード」が実装されており、その後、自動でアイテムを拾う設定や、戦闘後に自動で回復呪文を使ったり、残りMPに応じて自動で戦闘に入るかどうかを判断できる機能などが追加されることで対策されていました。

☆2024年11月14日 リメイク版『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』(PS5、Swicth、Xbox Series X|S、Windowds)発売

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28年ぶりの『Ⅲ』のフルリメイクとなる本作は、最先端の美麗な3Dグラフィックにと2Dドット絵を調和させた「HD-2D」表現で開発されました。

当時の雰囲気を残したまま美しくリメイクされただけでなく、音楽も「東京都交響楽団」によるオーケストラ演奏音源が使用され、当時256KBしかなかったゲームとは思えないほどの進化を遂げています。

3Dの背景と2Dのキャラクターという組み合わせの技術自体はすでに『Ⅶ』で実現していましたが、本作はさらに強化され、臨場感あふれるクオリティの背景に仕上がり、水面や木漏れ日といったところに非常に細かい表現がなされていながら、ドットのキャラクターに違和感を感じさせない絶妙なバランスがこの技術の最大の特徴です。

そして、ストーリーにも大きく追加要素が加わっており、今までボスがいなかったダンジョンに強力なボスが出現したり、主人公の父「オルテガ」の足跡を感じさせるイベントも多く追加されています。

また、時系列的に前になる『Ⅺ』や後に続く『Ⅰ』『Ⅱ』を前提とした要素も追加されており、堀井雄二氏も「ぜひ『Ⅲ』から『Ⅰ&Ⅱ』という順番でプレイしてほしい」と語っていることから、次回作の『Ⅰ&Ⅱ』にも『Ⅲ』から繋がっていることを強く示すイベントが追加されることが予想されます。

すでに公開されているティザートレーラーには過去作の『Ⅱ』には存在しなかった謎の少女の存在が示されており、今後の続報から目が離せません。発売は2025年、つまり今年中を予定しています。

【追記】
発売日が2025年10月30日に決定しました。
謎の少女は「サマルトリア王子の妹姫」と判明しました。

『ドラクエ』が私たちの社会に与えた影響

『ドラゴンクエスト』はもはやゲームという枠組みを超えて日本を象徴する文化の一部となっています。『Ⅲ』発売当初の社会現象や「ビアンカフローラ論争」などはその一端に過ぎないのです。

先にも解説した通り「コマンド選択式RPG」「バッテリーバックアップ」「AI戦闘システム」など、いまやどんなゲームにも当たり前のように採用されているシステムの基礎を作り上げた作品であり、ゲームの歴史を語るうえで『ドラクエ』は避けては通れない存在なのです。

コミュニティは世代を超えて形成されており、インターネットが普及することでますます活発になりました。現在でもいろいろな配信者が実況プレイを行っていたり、生きたコンテンツとして多くの人々の心に根付いています。

メディアミックスも盛んに行われており、小説、漫画、ドラマCD、アニメ、ライブスペクタクルツアー、映画など数多くの作品がつくられ、様々なリアルイベントも開催されました。

2010年、東京・六本木(現在は秋葉原に移転)にカラオケリゾート「パセラ」とのコラボとして「ルイーダの酒場」が開店。2025年で15周年を迎え、様々なイベントが予定されています。

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六本木店の内装(2017年当時)
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様々な小物が多数展示されていた。秋葉原に移転した後でも変わらず見ることができる
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秋葉原店に寄せられた、15周年を祝うメッセージカードとフラワーアレンジメント

2011年、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて本作の25周年記念として「ドラゴンクエスト展」が開催され、作品の歴史と社会的意義について振り返る展示がなされました。

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当時スマホを持っていなかったので、謎解きクリア特典しか手元に残っていない

2016年~2017年、本作の30周年を記念した「ドラゴンクエストミュージアム」が東京・渋谷ヒカリエ、大阪・ひらかたパーク、愛知・名古屋PARCO、兵庫県・淡路島州本市民広場横赤レンガ建物特設会場で開催されました。
東急東横線渋谷駅では、期間限定で発車メロディが「序曲」に変更されるなど、地域全体を盛り上げる取り組みもありました。

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立ち並ぶ歴代の主人公たち
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精巧につくられた「天空城」の模型
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TVドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズで実際に使われていた小道具たち

2017年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで期間限定コラボアトラクションが製作され、多くの限定グッズなどが販売されました。

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当時のアトラクション入り口の看板
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りゅうおうとの戦いは圧巻の一言だった

2021年、堀井雄二氏の出身である淡路島にある「ニジゲンノモリ」にて屋外型フィールドアトラクション「ドラゴンクエスト アイランド」が開かれました。

「たまねぎスライム」という淡路島の名産品であるたまねぎをモチーフにしたモンスターがオリジナルにデザインされ、様々なグッズ展開がなされています。

リアルとデジタルの融合をテーマにしており、ドラクエの世界を再現した「オノコガルド」という町は細部までこだわりが感じられ、入場時に受け取った「冒険のしるし」を各所にかざすことで物語が進んでいきます。

最初に職業を選び、最大4人のパーティを組んで住民の話を聞いたり、モンスターと闘いながら奥へ進んでいきます。

道中ではゲームでもおなじみの音楽が流れ、最後のボス戦は臨場感あふれる演出で本当に強敵と対峙しているかのような緊張感を与えてくれます。

まだ行ったことがないので写真がないです、ごめんなさい!

その他にも過去には「ドラゴンクエスト カーニバル」として商業施設や周辺地域とのコラボレーションが2024年に神奈川・横浜、2025年には『HD-2D版Ⅲ』発売記念として東京・日本橋で開催されました。

町中のいたるところに立体オブジェや、巨大シールなどが飾られており、まるでドラクエの世界に入り込んだかのような体験ができるイベントです。様々なお店でノベルティを配布していたり、コラボメニューを販売する飲食店も数多くありました。

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「横浜ランドマークタワー」内に浮かぶ巨大なスライムのバルーン
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「MARK IS みなとみらい」にも巨大なオブジェ
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「横浜ランドマークタワー」の展望エリアには当時の資料の数々
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数少ない写真撮影が許可されていたポスター。堀井雄二氏の手書きシナリオや、すぎやまこういち氏の手書きの楽譜、鳥山明氏のモンスターデザイン原画など、非常に貴重な品が展示される珍しいイベントでした
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「COREDO室町仲通り」にはコラボデザインの提灯が並んだ
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それぞれの提灯にはキャラクターやモンスターたちが描かれていた
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「MARK IS 横浜」前に出現したキラーパンサー。皆さんはどんな名前を付けますか?
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「福徳の森」に現れたキラーマシン。一般モンスター最強格の威圧感が半端ない
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日本橋の某所で休んでいるメタルキング。見つけるのにほぼ丸1日かけてしまった

1987年8月20日、東京・サントリーホールで初めて『ドラクエ』のコンサートが開催されてから、すぎやまこういち氏が亡くなった現在でも、オーケストラコンサートが定期的に日本全国で開催されており、ゲーム音楽の規模としては最大級です。数多くのレコード盤やCDが販売され、すぎやまこういち氏が『ドラクエ』を通じて、クラシック音楽の世界に与えた影響は計り知れません。

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『Ⅰ』から『Ⅸ』のほぼすべての音楽がオーケストラ音源としてまとめられたCDボックス

さらに、2019年7月31日には『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の有料追加コンテンツ第2弾として「勇者」が参戦しました。

カラーバリエーションとして『Ⅲ』『Ⅳ』『Ⅷ』『Ⅺ』の主人公が作成され、「最後の切りふだ」の演出には他のナンバリング主人公も映っており、これには『バトルロード』のグラフィックを利用したプリレンダリングムービーが提供されています。

その他にも『スマブラ』で様々な特徴を持っており、

・唯一「文字が読めること」を前提にした性能をしている。

・唯一(Miiファイターを除いて)漢字表記の名前である。

・全キャラクター中、最多の必殺ワザ数。

・初めて主人公同士が戦う描写が特別に許可された。

・初めて主人公がじゅもんを唱えるボイスがついた。

国内でのタイトルの大きさに対してかなり遅れた参戦のように感じるかもしれませんが、これには「国外での認知度」という壁がありあました。

というのも、『Ⅶ』以前のドラクエは『DRAGON WARRIOR』という名前で北米などで販売されていましたが、当時ではアクション性の低いRPGは人気には結びつかなかったのです。

先述ではありますが、『Ⅷ』では本格的な海外向けのローカライズがなされ、そして『Ⅺ』での大ヒットを受けて、ようやく「全世界で愛されるゲーム」として認められたのです。

仲間たちの別れと新時代

2021年9月30日にすぎやまこういち氏が、2024年3月1日に鳥山明氏が逝去されました。

”すぎやま先生の、あまりに突然な訃報を聞き本当に残念でなりません。
ドラゴンクエストを作って35年、その世界に、すぎやま先生は音楽という命をずっと吹き込んできてくださいました。
先生には本当に 素晴らしい楽曲を いっぱい書いていただきました。
これからもドラクエは、先生の音楽とともにあります。
ユーザーの皆さんの心の中に 先生は 生き続けるはずです。
すぎやま先生 長い間 本当に ありがとうございました。”(堀井雄二)

”つい数年前にお会いした時の印象からもいい意味で、永遠の命を持つ魔法使いのように思っていました。
ドラゴンクエストのイメージは、当時からゲームが大好きでいらした、すぎやま先生の素晴らしく印象的な数々の名曲によって決定付けられた。と言っても過言ではありません。
長くご一緒に仕事をさせていただいて本当に光栄でした!
心よりご冥福をお祈りいたします。”(鳥山明)

”本当に、あまりに突然な鳥山さんの訃報で、まだ信じられない気持ちでいっぱいです。
鳥山さんとは、ボクが少年ジャンプのライターをやっていた頃からの知り合いで、担当編集者の鳥嶋さんの勧めもあり、ドラゴンクエストを立ち上げる時に、彼にゲームの絵を頼むことにしました。
あれから37年余り、登場人物のキャラクターデザイン、モンスターデザイン、とても数えきれないほどの魅力的なキャラを描いていただきました。
ドラゴンクエストの歴史は、鳥山さんのキャラデザインとともにありました。
鳥山さん、故すぎやま先生は、ドラゴンクエストを長きに渡って作ってきた仲間でした。
亡くなってしまうなんて‥‥。
これ以上、なんて言えばいいのか言葉になりません。本当に、本当に、残念です。”(堀井雄二)

2021年5月27日に『ドラゴンクエストⅫ 選ばれし運命の炎』の製作が発表されました。すぎやまこういち氏と鳥山明氏の遺作となる本作の音楽とデザインは二人が亡くなる前にほぼ完了しているため、開発に大きな影響はないとのことです。

戦闘システムは従来のコマンド選択式から一新され、大人向けのダークな雰囲気の世界観で製作されていると公表されており、まだその詳細はベールに包まれたままです。

巨匠たちとの別れは、残酷なまでに時の流れを実感させます。そして、その長い歴史の中で、数えきれないほどの人たちが『ドラクエ』という作品に関わってきたことでしょう。

39年。

初めて『ドラクエ』が発売したころに中学生ぐらいだった人には孫がいてもおかしくないくらいの年月が経っています。

いつの時代も当たり前のように流行っていて、世代を超えて誰でも知っている。町を巻き込んだイベントが数多く開かれている。そのような作品がこれから先どれほど生まれるのでしょうか。

私たちはこの作品のことを忘れてはならないのです。日本のゲーム文化を支えてきた『ドラクエ』を、そしてそれらを作り上げた偉大なる人々のことを。

もし、まだ当時のソフトが家にあるなら少し手に取ってみて、ホコリをとったりしながら当時のことを思い出す、そんな日にしてみませんか。

輝かしい冒険の日々が、ゲームという枠組みを超えた体験として鮮明によみがえってくるはずです。

”人生はロールプレイング”(堀井雄二)

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