Last Updated on 2024-11-07 16:28 by admin
Appleは2024年11月、Vision Pro向けvisionOS 2.2開発者向けベータ版で、待望のパノラマディスプレイ機能を提供開始した。
機能概要
- Mac仮想ディスプレイに3種類のスクリーンサイズを追加
- 「ワイド」「ウルトラワイド」の2つの新しい表示形式を導入
- 最大解像度は2台の4Kモニター相当(理論値で約7680×2160ピクセル)
- 現時点では開発者向けベータ版のみで利用可能
経緯
- 2024年2月2日:Vision Pro発売時は単一スクリーンサイズのみ
- 2023年6月:WWDC23でパノラマディスプレイ機能を発表
- 2024年10月:Mac新製品発表イベントでの発表見送り
- 2024年11月:visionOS 2.2開発者向けベータ版で機能提供開始
技術仕様
- Mac側でダイナミック・フォビエイテッドレンダリングを採用
- 視線追従による表示最適化機能を搭載
- 複数Macの同時ミラーリングは非対応
正式リリース
- 正確な時期は未定
- 他のAppleプラットフォームの「X.2」アップデートと同時期になる可能性
価格:Vision Pro本体は3,499ドル(約52万円)から
from Apple Releases Long-awaited Panoramic Display Feature on Vision Pro in 2.2 Beta
編集部解説
Apple Vision Proのパノラマディスプレイ機能は、単なるディスプレイの拡張ではなく、空間コンピューティングの新しい可能性を示すものとして注目に値します。
従来のVRヘッドセットでは、仮想モニターを複数並べる方式が一般的でしたが、Appleはシームレスなパノラマディスプレイという異なるアプローチを選択しました。これにより、モニター間のギャップや境界線のない、より自然な作業環境を実現しています。
特筆すべきは、ダイナミック・フォビエイテッドレンダリング技術の採用です。この技術により、ユーザーの視線が向いている部分の解像度を優先的に高めることで、8K相当の広大な表示領域を実現しています。
音声出力に関する改善も見逃せません。従来はMac本体から音が出ていましたが、Vision Pro本体からの出力に変更されたことで、より没入感のある作業環境が実現されています。
しかし、この機能にも課題があります。現時点では複数のMacウィンドウを同時にミラーリングすることはできません。また、ベータ版であるため、安定性や互換性の問題が発生する可能性もあります。
長期的な展望として、この機能は従来のデスクトップ環境からの脱却を促す可能性があります。物理的なモニターの制約から解放されることで、より柔軟な作業環境の構築が可能になります。
特に、モバイルワーカーやクリエイターにとって、場所を選ばず大画面作業環境を構築できることは大きなメリットとなるでしょう。
参考情報
【用語解説】
ダイナミック・フォビエイテッドレンダリング
人間の目の特性を利用した表示技術です。視線が向いている部分は高解像度で表示し、周辺部は低解像度にすることで、処理負荷を下げながら高品質な表示を実現します。例えると、スマートフォンの画面全体を4K表示するのではなく、見ている部分だけを4Kにするようなイメージです。
Mac Virtual Display
Vision ProをMacのディスプレイとして使用する機能です。物理的なモニターの代わりにVision Pro上に仮想的なディスプレイを表示します。ベータ版では一部機能に制限があります。
MR(Mixed Reality)
現実世界とデジタル世界を融合させる技術です。スマートフォンやヘッドセットを通して、現実の空間に3Dの仮想オブジェクトを配置し、それらと実際に対話できるのが特徴です。ARが現実世界に情報を重ねるだけなのに対し、MRは現実とデジタルの境界をより自然に溶け合わせることができます。
【参考リンク】
【参考動画】
Apple Vision Pro公式紹介動画