Last Updated on 2025-03-19 12:05 by admin
Meta Platforms(旧Facebook)の最高技術責任者(CTO)Andrew Bosworth氏が、同社がVR(仮想現実)とMR(複合現実)の両方を表す用語として「MR」を使用するようになったことに関する業界からの批判に対して反論した。
この用語変更は2025年2月に確認され、Meta社のウェブサイト、ブログ記事、開発者向けコミュニケーションなど全社的に適用されている。同社は以前「VR/MR」と区別していたものを単に「MR」と呼ぶようになり、これが開発者やユーザーの間に混乱を招いていた。
Bosworth氏はこの批判について「史上最も完全に作り上げられた論争の一つ」と表現し、「コミュニティが無から完全に作り上げたもの」と述べた。同氏によれば、この用語変更はAppleがVision Proの複合現実機能を強調してマーケティングしていることへの対抗策であり、Meta Quest 3が他社製品と同等かそれ以上の性能を持つことを消費者に伝えるための戦略だという。
Meta社はこの戦略変更の背景に市場調査の結果があることを明らかにした。Bosworth氏は「私たちがマーケティングしている大多数の人々は、すでに参加している熱心なユーザーではなく、現在参加していない人々だ」と強調し、より広い市場へのアピールを目指していることを示した。
from:Meta CTO Responds To Controversy Around Using “MR” To Mean Both MR And VR
【編集部解説】
Meta社のVRからMRへの用語変更は、単なる言葉の問題ではなく、XR業界全体の方向性を示す重要な動きと言えるでしょう。この変更の背景には、Apple Vision Proの登場によって「複合現実(Mixed Reality)」という言葉が市場で注目を集めるようになったという状況があります。
Meta社は長年VR市場をリードしてきましたが、Apple社が高級MRデバイスでこの分野に参入したことで、戦略的な対応を迫られたと考えられます。Bosworth氏の発言からは、すでに業界に詳しいユーザーではなく、まだXR技術を採用していない一般消費者へのアピールを重視していることが読み取れます。
この用語変更は、Meta社が2025年を重要な年と位置づけていることとも関連しています。同社のXR戦略が成功するか失敗するかの分岐点に立っていると言えるでしょう。
興味深いのは、Meta社内でも組織再編が進んでいることです。Reality Labsをより中核事業に統合する動きが見られ、マーケティングや販売部門が全社的な組織構造に組み込まれています。これはXR技術がもはや実験的なものではなく、Meta社の将来を担う主力事業として位置づけられていることを示しています。
また、Meta社はAI技術への投資も強化しており、XRとAIの融合が今後の戦略の中心になると予想されます。Zuckerberg CEOの発言でも、「メタバース」という言葉よりも「AI」という言葉が頻繁に使用されるようになっています。
VRからMRへの用語変更は、技術の進化を反映したものでもあります。初期のVRヘッドセットは外界から完全に遮断された体験を提供していましたが、最新のQuest 3などではパススルー機能によって現実世界とバーチャル要素を組み合わせた体験が可能になっています。この技術的進化を表現するために、より包括的な「MR」という用語を採用したとも考えられます。
しかし、この用語変更は業界内で混乱を招いていることも事実です。開発者やユーザーからは、「MR」が従来の意味(パススルーを使った体験)で使われているのか、新しい包括的な意味で使われているのか区別がつきにくいという声が上がっています。
長期的に見れば、この動きはXR業界全体の用語統一につながる可能性もあります。一方で、Meta社がAR(拡張現実)グラスなどの新しい形態のデバイスに軸足を移す準備をしているという見方もあり、今後の展開が注目されます。
ただし、業界内のコミュニケーションを円滑にするためには、明確な用語の定義と使い分けも重要です。Meta社がこの変更をどのように定着させていくのか、そして業界全体がどう反応するのかを引き続き注視していきたいと思います。
【編集部追記】
ただの用語変更ではなく戦略的なApple Vision Proに対する対抗策ということで、自社製品がApple製品と同等かそれ以上の性能を持つことを消費者に伝えたいという意図があることは理解できたのですが、用語変更となると少し混乱してしまいますなあ…。
2025年はMeta社のXR戦略にとって重要な年と位置づけられているらしく、この変更がどのような影響をもたらすか気になるところです。
【用語解説】
VR(仮想現実): 完全にコンピュータで生成された環境に没入するテクノロジー。現実世界から完全に遮断された体験を提供する。
MR(複合現実): 現実世界とデジタルコンテンツを融合させるテクノロジー。現実の環境を見ながら、そこにバーチャルな要素を重ねて表示する。
パススルー機能: VRヘッドセットに搭載されたカメラを通して外の世界を見ることができる機能。Meta Quest 3やApple Vision Proなどで採用されている。
CTO(最高技術責任者): 企業の技術戦略を統括する役職。Meta社のAndrew Bosworth氏はこの役職に就いている。
【参考リンク】
Meta公式サイト(外部)
Meta社の公式サイト。同社のビジョンや製品、サービスに関する情報を提供している。
Meta Quest公式サイト(外部)
Meta社のVR/MRヘッドセット「Quest」シリーズの公式サイト。最新製品の情報や購入方法を案内している。
Apple Vision Pro公式サイト(外部)
Apple社の複合現実ヘッドセット「Vision Pro」の公式サイト。製品の特徴や機能を紹介している。