Last Updated on 2025-04-28 14:57 by admin
Varjoは2025年4月24日に、フォトリアリスティックなシーンキャプチャサービス「Teleport 2.0」をリリースした。このアップデートにより、視覚品質が「最高クラス」にアップグレードされ、大規模なシーンでも細部を保持できるようになった。
Teleportは2024年11月に初版がリリースされ、月額30ドル(約4,500円)で最大15スキャンまで利用可能だった。Teleport 2.0では新たに5スキャンまで無料で利用できるプランが導入されたが、有料プランと異なりPLYファイルとしてのエクスポート機能は含まれていない。
技術的には、Varjo TeleportはNianticのScaniverseと同様にガウシアンスプラッティングを採用しているが、Scaniverseがデバイス上で処理するのに対し、Varjo Teleportは高性能なクラウドGPUを使用している。これにより高品質な結果が得られるが、有料サービスとなっている。
初版ではiPhoneアプリからの入力のみをサポートしていたが、Teleport 2.0ではドローンやデジタル一眼レフカメラを含む任意のカメラからの入力に対応するようになった。最大5,000枚・5GBの画像データ、または最大15分の動画をアップロードできる。
スキャン作業は5〜10分間スマートフォンを持って歩き回るだけで、その後クラウドで30分から24時間の処理が行われる。処理時間はスキャンするエリアのサイズによって異なる。
完成したスキャンはiPhoneアプリ、ウェブ、そしてVR対応のTeleport Windowsソフトウェアでプレビュー可能だ。このアプリはQuest LinkやVirtual Desktopなどを通じて、Meta Questヘッドセットを含むPC上のすべてのOpenXRヘッドセットと互換性がある。
VRでの視聴には、小規模なシーンではNVIDIA RTX 3070以上、大規模なシーンではRTX 3090以上のグラフィックカードが推奨されている。Varjoは現在、Quest 3やApple Vision Proなどのスタンドアロンヘッドセット向けのVRクライアントも開発中だと発表している。
フィンランドに本社を置くVarjoは、高解像度VRヘッドセットの開発で知られる企業で、Teleportサービスはその技術力を活かした新たな展開となっている。
from Varjo Teleport 2.0 Offers “Best-In-Class” Photorealistic Scene Capture
【編集部解説】
Varjo Teleport 2.0は、現実世界の空間を短時間で高精度に3Dデジタル化し、VRやPC上で体験できる「スキャン・トゥ・VR」ソリューションの最新バージョンです。2025年4月24日にリリースされた本サービスは、従来のフォトグラメトリーよりも圧倒的に効率的かつ高品質な3D再構築を実現しています。
最大の特徴は、最先端のガウシアンスプラッティングと呼ばれる機械学習技術を活用し、スマートフォンやドローン、デジタル一眼レフカメラで撮影した画像や動画から、フォトリアリスティックな3D空間を自動生成できる点です。従来の手法では数時間から数日かかっていた処理が、Teleport 2.0では撮影5~10分、クラウド処理30分~24時間で完結します。
また、iOSアプリだけでなく、あらゆるカメラやデバイスからの入力に対応し、5,000枚・5GBまでの大規模データ、最大15分の動画にも対応しています。PC VR(OpenXR対応ヘッドセット)やWebブラウザ上での閲覧、PLYファイル形式でのエクスポートも可能となり、UnityやUnreal Engineなど他の3Dエンジンでも活用できます。
この技術によって、建築設計、遠隔点検、教育、訓練、観光、文化財保存など多様な分野で「現実空間のデジタルツイン」を迅速かつ高精度に構築できるようになります。複数のスキャンをリンクしたバーチャルツアーや、ウェイポイントによるガイド、シーンの再配置・スケーリングなど、空間体験の拡張も容易です。
ポジティブな側面として、誰でも手軽に高品質な3D空間を生成・共有できることで、空間の記録や共有、リモートワーク、教育の質が飛躍的に向上します。特に産業用途での遠隔支援やトレーニング、設計レビューの効率化、現場の記録・保存など、実用的なメリットが大きいです。
一方で、現時点では大規模シーンの処理には高性能なGPU(RTX 3070/3090以上)が推奨されており、一般消費者が気軽に利用するにはハードルが残ります。また、現実空間の詳細な3Dデータが容易に生成・共有できることで、プライバシーやセキュリティ、著作権など新たな規制課題も浮上する可能性があります。
長期的には、クラウド処理やAI技術の進化、スタンドアロンVR機器の普及によって、こうした高精度3Dキャプチャがより低コスト・短時間で誰でも使える時代が到来するでしょう。現実と仮想の境界が曖昧になる新たな空間体験の基盤技術として、今後の発展に注目が集まります。
【用語解説】
ガウシアンスプラッティング(Gaussian Splatting):2023年に登場した最新の3D空間再構築技術。従来の3Dモデリング手法と比べて処理が速く、高品質な結果が得られる。小さな点(ガウス分布)の集合体として3D空間を表現するため、リアルタイムレンダリングに適している。
フォトグラメトリー:複数の写真から3Dモデルを作成する技術。建築物や地形の3D化によく使われるが、手動での調整が必要で時間がかかる。
PLYファイル:3Dモデルを保存するための標準的なファイル形式。点群データを含み、他の3Dソフトウェアでの利用が可能。
OpenXR:VR・AR向けの標準規格。異なるVRヘッドセットでも同じアプリが動作するようにする仕組み。
【参考リンク】
Varjo公式サイト(外部):2016年設立のフィンランドの企業。「人間の目レベル」の高解像度VR/XRヘッドセットを開発。特に産業用途に強みを持ち、航空宇宙、自動車設計、医療研究などの分野で採用されている。日本では西川コミュニケーションズが代理店を務めている。
Varjo Teleport(外部)Varjoの3D空間キャプチャサービス「Teleport」の専用サイト。サービス内容や料金プラン、使用方法などが確認できる。