innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

米HTX Labs、XRとAI融合の軍事訓練プラットフォームに580万ドル調達──次世代空軍技術者育成の未来図

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-21 11:59 by admin

米国のイマーシブラーニングソフトウェア企業HTX Labsは、米空軍のイノベーション部門AFWERXから580万ドル(約8.4億円)の資金を獲得した。

この資金は、ボーイングKC-135給油機のF108エンジンメンテナンス作業員向けにAI搭載の仮想教室を開発するために活用される。HTX Labsは2024年に米空軍および宇宙軍との3年間で9000万ドル(約130億円)の契約も獲得している。同社は2017年に設立され、クラウドベースのイマーシブトレーニングプラットフォーム「EMPACT」を通じて、軍事訓練に拡張現実(XR)技術を導入することで、より効果的な訓練環境を提供している。今回の新たなイニシアチブは、英国のミルデンホール空軍基地と協力して完了したKC-135メンテナンス訓練プログラムの第2フェーズに続くものである。

References:
 - innovaTopia - (イノベトピア)HTX Labs $5.8 Million to Scale XR Training | XR Today
 - innovaTopia - (イノベトピア)HTX Labs | Immersive Learning Software

【編集部解説】

AI搭載の仮想教室で実践的な軍事訓練を実現

HTX Labsが開発するEMPACTプラットフォームは、軍事訓練の常識を覆す可能性を秘めています。従来の軍事訓練では、特に航空機のメンテナンスなど複雑な作業の実地訓練機会が限られていました。しかし、XR技術とAIを組み合わせることで、実機を使わずとも高度な訓練が可能になります。今回の資金で開発されるKC-135給油機のF108エンジンメンテナンス向けの仮想AI搭載教室では、整備士が複雑な修理作業を安全かつ効果的に練習できるようになります。メイン州空軍州兵の第101空中給油航空団整備隊のライアン・ウィング少佐は「KC-135整備士は訓練環境で複雑な航空機やエンジン修理を行う機会が限られている」と指摘しており、イマーシブトレーニングが任務遂行能力の確保に不可欠だと述べています。

多様なデバイスに対応する柔軟なプラットフォーム

EMPACTプラットフォームの強みは、タブレット、ラップトップ、VRヘッドセットなど様々なデバイスで利用できる点にあります。特に高性能なVarjoのヘッドセットと組み合わせることで、訓練の効果をさらに高めることができます。HTXのイノベーション担当ディレクター兼共同創業者のハビエル・ファドゥル氏によれば、Varjoのヘッドセットは視覚的な忠実度が高く、人間工学に基づいた設計により長時間の使用でも快適です。また、空間音響機能により、機械の正常な動作音と異常時の音の違いを学ぶことも可能になっています。

デジタル資産の効率的な管理と活用

HTX Labsの「EMPACT CATALOG」は、デジタルトレーニング資産を管理するためのセキュアなクラウドベースのリポジトリです。これにより、教官やカリキュラム開発者はデジタル資産を整理、再利用、共有し、それらを活用してイマーシブなトレーニングソリューションを開発できます。「EMPACT CREATE」はコーディング不要でイマーシブな教室やレッスンを効率的に作成するツールであり、「EMPACT TRAIN」は場所や使用デバイスを問わず、高度にスケーラブルなクラウドベースのイマーシブトレーニング機能を提供します。

軍事分野での専門知識の強化

HTX Labsは組織強化にも積極的に取り組んでいます。2025年1月には退役空軍大佐のブライアン・リースを空軍担当戦略アカウント副社長に迎え入れました。彼は同社と米空軍との関係を監督する役割を担っています。また、2022年にはダラスを拠点とするCypress Growth Capitalから320万ドルの投資を受けるなど、着実に成長を遂げています。

訓練効果の測定と分析

EMPACTプラットフォームは、訓練のパフォーマンスを定量化し、即時フィードバックを提供するツールも備えています。Varjoのヘッドセットに統合されたアイトラッキング機能と組み合わせることで、インストラクターと学生のパフォーマンスを比較するなど、トレーニングの効果を測定・分析することが可能です。ファドゥル氏は「仮想世界でのトレーニングが実世界でどのような効果をもたらしたかをより理解できるようになることに非常に興奮している」と述べています。

【用語解説】

XR(拡張現実):VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などを包括する概念で、現実世界とデジタル世界を融合させる技術の総称。

AFWERX:米空軍のイノベーション部門で、民間企業の技術を軍事利用に適応させるために設立された組織。

EMPACT:HTX Labsが開発したAI対応のクラウドベースイマーシブトレーニングプラットフォーム。CATALOG(デジタル資産管理)、CREATE(コンテンツ作成)、TRAIN(トレーニング実施)の3つの主要機能で構成される。

KC-135:ボーイング社製の空中給油機で、米空軍で広く使用されている。F108エンジンを搭載している。

【参考リンク】

HTX Labs(外部)
イマーシブラーニングソフトウェアを提供する米国企業。クラウドベースのイマーシブトレーニングプラットフォーム「EMPACT」を開発し、軍事訓練に革新をもたらしている。

InnovationMap(外部)
ヒューストンを中心とした革新的企業や技術に関するニュースサイト。地域のスタートアップやテクノロジー企業の動向を発信している。

Varjo(外部)
高性能XRヘッドセットを開発するフィンランドの企業。HTX Labsのトレーニングプラットフォームと連携し、高い視覚的忠実度と人間工学に基づいた設計の製品を提供している。

【関連記事】

VR/ARニュースをinnovaTopiaでもっと読む

テクノロジーと社会ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!
ホーム » VR/AR » VR/ARニュース » 米HTX Labs、XRとAI融合の軍事訓練プラットフォームに580万ドル調達──次世代空軍技術者育成の未来図