Last Updated on 2025-05-23 10:57 by admin
BloombergのMark Gurman記者が2025年5月22日に報じたところによると、Appleは2026年後半にスマートグラスの発売を計画している。これは以前報告されていた2027年の発売予定から前倒しされた形となる。
製品仕様と機能
- カメラ、マイク、スピーカーを搭載
- 電話通話、音楽再生、リアルタイム翻訳、ターンバイターン方式のナビゲーション機能
- AppleのVisual Intelligenceと呼ばれるマルチモーダルAI機能
- Apple Watch用のSシリーズチップをベースとした新設計チップセットを使用
- 2025年末までに大量のプロトタイプ製造を開始予定
- AR機能は搭載されない(真のARグラスは数年後の予定)
競合製品との比較
Ray-Ban Metaグラス(Meta社製、約300ドル)の競合製品として位置づけられ、Apple社員によると「Metaの製品に似ているが、より良く作られている」とされる。ただし、Apple社内では同社のAI技術の課題が新製品に悪影響を与える可能性を懸念する声もある。
市場動向
Meta社は2025年にOakley Metaグラスの発売を計画しており、右目に小型ヘッドアップディスプレイを搭載したハイエンドスマートグラス(約1,000ドル)とニューラルリストバンドも同年リリース予定である。さらにMeta社は2027年に本格的なARグラスの発売を計画している。
長期的なAR戦略
Appleは本格的なARグラスの開発も継続しているが、Tim Cook CEOがMeta社より先に「業界をリードする」ARグラスのリリースに注力しているものの、製品化は2028年以降になる見込みである。
References:Apple Reportedly Plans To Launch Its Smart Glasses In Late 2026
【編集部解説】
複数の信頼性の高いメディアが同様の内容を報じており、Bloomberg Mark Gurman記者の報道の信憑性が裏付けられています。今回の発表で特に注目すべき点について詳しく解説いたします。
市場タイミングの戦略的重要性
Appleが発売時期を2027年から2026年後半に前倒しした背景には、競合他社の急速な進展があります。Meta Ray-Banスマートグラスは2024年に100万台以上を販売し、予想を大幅に上回る成功を収めました。さらに、Google I/O 2025でAndroid XRプラットフォームが発表され、Warby Parker、Samsung、Gentle Monsterとの協業が明らかになったことで、競争環境が一変しています。
OpenAIのSam AltmanとJony Iveによる新会社「io」も2026年にAIハードウェアの発表を予定しており、この分野の競争は想像以上に激化しています。
技術的制約と現実的なアプローチ
今回のAppleスマートグラスで重要なのは、AR機能を搭載しないという判断です。これは技術的制約というよりも、市場への現実的なアプローチと考えられます。真のARグラスには、バッテリー技術、プロセッサーの小型化、ディスプレイ技術の革新が必要で、コストと技術的ハードルが依然として高いのが現状です。
Apple Watch用Sシリーズチップをベースとした新チップセットの採用は、省電力性と小型化のバランスを取る賢明な選択といえるでしょう。
AI競争の新たな戦場
Apple社内でAI技術の遅れを懸念する声があることは、同社が直面している課題を如実に表しています。MetaのLlama、GoogleのGemini、OpenAIのGPTといった強力なAIプラットフォームに対抗するため、AppleはSiriの大幅な改良とVisual Intelligence機能の強化を急いでいます。
スマートグラスは、AIアシスタントの新たな主戦場となる可能性があります。音声だけでなく視覚情報も活用できるため、より自然で直感的なAI体験を提供できるからです。
プライバシーとセキュリティの課題
常時装着される可能性があるスマートグラスが収集する視覚・音声データの取り扱いは、重要な社会的課題となります。Appleのプライバシーファーストのアプローチがどのように実装されるかが、製品の差別化要因となる可能性があります。
産業への波及効果
Appleの参入により、スマートグラス市場は急速に拡大し、関連する部品メーカーやソフトウェア開発者にとって新たなビジネス機会が生まれるでしょう。特に、小型カメラモジュール、MEMS マイク、骨伝導スピーカー、超小型バッテリー技術の発展が加速することが期待されます。
【用語解説】
スマートグラス:メガネ型のウェアラブルデバイスで、カメラ、マイク、スピーカーなどを内蔵し、音声通話や写真撮影、AI機能などが利用できる。従来のメガネにスマートフォンの機能を組み込んだようなイメージである。
Visual Intelligence:Appleが開発したAI機能で、カメラで撮影した対象物の情報を瞬時に認識・表示する技術。GoogleのGoogle Lensに似た機能で、犬の種類を調べたり、お店の営業時間を確認したりできる。
Sシリーズチップ:Apple Watchに搭載されている専用プロセッサー。省電力性に優れており、小型デバイスに適している。現在のS10チップは5nmプロセスで製造されている。
マルチモーダルAI:テキスト、音声、画像など複数の形式の情報を同時に処理できるAI技術。例えば、写真を見せながら音声で質問すると、画像の内容を理解して回答できる。
Android XR:Googleが開発したAR/VR向けプラットフォーム。2025年のGoogle I/Oで発表され、複数のパートナー企業と協業してスマートグラスを開発している。
【用語解説】
Meta(旧Facebook):マーク・ザッカーバーグが創設したアメリカの大手テクノロジー企業。Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営し、現在はメタバースやVR/AR技術に大きく投資している。
EssilorLuxottica:世界最大のアイウェアメーカーで、Ray-BanやOakleyなどの有名ブランドを所有するイタリア・フランス系企業。Metaとスマートグラスで協業している。
【参考リンク】
Apple公式サイト(外部)革新に満ちたAppleの世界。iPhone、iPad、Apple Watch、Macなど全製品の情報と購入が可能。
Meta Quest公式サイト(外部)MetaのVR・AR製品情報。Ray-Ban Metaスマートグラスの詳細も掲載。
Ray-Ban Meta公式サイト(外部)EssilorLuxotticaとMetaが共同開発したスマートグラスの公式製品ページ。