Last Updated on 2025-06-03 16:48 by admin
DreamParkは現実世界の空間をミックスドリアリティテーマパークに変換する企業で、2025年5月29日に110万ドルのシード資金調達を発表した。
CEOはエイダン・ウルフ、共同創設者はケビン・ハビッチとブレント・ブッシュネル(Atari共同創設者ノーラン・ブッシュネルの長男)である。Long Journey Venturesが投資ラウンドを主導し、Founders Inc.が参加した。同社はQRコードをスキャンしてアクセスする物理的なアクセスポイントを通じて、Meta Quest 3ヘッドセットやモバイルデバイスを使用したミックスドリアリティゲームを提供する。
サンタモニカのサードストリートプロムナードとLA郡フェアで既に設置済みで、シアトル、オレンジ郡、各種エキスポや企業イベントへの展開を計画している。2024年のグローバルXRライブイベント市場は36億ドルと評価され、2034年までに年平均成長率48.7%で1,903億ドルまで成長すると予測されている。従来のVR施設建設には100万ドル以上かかるが、DreamParkは既存空間を活用し低コストで没入型体験を提供する。今後は全国展開、IP保有者との提携、Meta Quest 3レンタルユニットの拡大を計画している。
From: DreamPark raises $1.1M to transform real-world spaces into mixed reality theme parks
【編集部解説】
DreamParkの資金調達は、ミックスドリアリティ(MR)技術の新たな活用方法として注目に値します。従来のVRが完全に仮想空間に没入する体験だったのに対し、DreamParkは現実世界をベースにデジタル要素を重ね合わせることで、物理的な制約を克服しています。
最も革新的なのは、そのビジネスモデルです。従来のテーマパークやVR施設が数億円から数十億円の初期投資を必要とするのに対し、DreamParkはQRコードとデジタルマッピングだけで新たな体験空間を創出できます。これは不動産業界にとって画期的な価値提案となるでしょう。
技術的な観点では、Meta Quest 3の外向きカメラを活用したパススルー機能により、VR特有の酔いやすさという課題を解決している点が重要です。モバイルデバイスでもアクセス可能な設計により、ヘッドセットを持たないユーザーも参加できる包括性を実現しています。
一方で、いくつかの課題も見えてきます。公共空間でのヘッドセット着用による安全性の問題、プライバシーへの配慮、そして何より持続可能なコンテンツ供給体制の構築が必要でしょう。また、屋外環境での技術的安定性や、天候による影響も考慮すべき要素です。
Long Journey VenturesのCyan Banisterが「真の現実世界メタバース」と評価したように、この技術は単なるエンターテインメントを超えた社会的インパクトを持つ可能性があります。特に、コロナ禍で失われた「外で遊ぶ楽しさ」を取り戻すソリューションとして、コミュニティ活性化への貢献も期待されます。
DreamParkの成功は、物理空間とデジタル体験の融合という新たなエンターテインメントカテゴリーの確立につながる可能性があります。XRライブイベント市場が2034年までに約29兆円規模に成長するという予測も、この技術の将来性を裏付けています。
【用語解説】
ミックスドリアリティ(MR):
現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術で、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)の中間に位置する。ユーザーは現実空間を見ながら、同時にデジタルオブジェクトと相互作用できる。
パススルー機能:
VRヘッドセットの外向きカメラを使用して、現実世界の映像をヘッドセット内のディスプレイに表示する機能。ユーザーは仮想空間にいながら現実世界を確認できる。
XRライブイベント市場:
拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、ミックスドリアリティ(MR)を総称したXR技術を活用したライブイベント分野の市場。2024年に36億ドル、2034年に1,903億ドルまで成長予測。
アクセスポイント:
DreamParkが設置するQRコード付きマット。これをスキャンすることで、その場所でミックスドリアリティゲームを開始できる物理的な入口となる。
【参考リンク】
Long Journey Ventures(外部)DreamParkの資金調達を主導したVC。「魔法的に奇妙な」企業への投資を専門とする
Meta Quest 3(外部)DreamParkで使用されるミックスドリアリティヘッドセット。高解像度とパススルー機能搭載
Two-Bit Circus(外部)DreamPark共同創設者が運営するロサンゼルスのマイクロアミューズメントパーク
Founders Inc.(外部)DreamParkの資金調達に参加したサンフランシスコのスタートアップインキュベーター
【参考動画】
Two-Bit Circusの施設内部を紹介する動画。VRアリーナやアーケードゲーム、エスケープルームなど、DreamParkの共同創設者が運営する物理的エンターテインメント施設の様子が確認できます。
【参考記事】
DreamPark creating world’s largest XR theme park – Blooloop(外部)テーマパーク業界専門メディアによるDreamParkの詳細分析と市場動向解説
NR30 Innovator in Augmented Reality Spotlight: Aidan Wolf(外部)DreamPark CEOのAidan WolfのAR開発者としての経歴とMagic Leap開発コミュニティでの活動詳述
【編集部後記】
DreamParkの取り組みを見ていると、私たちが普段歩いている公園や商業施設が、まったく違う世界に変わる可能性を感じませんか?従来のVRが部屋の中での体験だったのに対し、外に出て友人と一緒に冒険できるミックスドリアリティは、エンターテインメントの概念を根本から変えそうです。皆さんの身近な場所が突然ゲームの舞台になったら、どんな体験をしてみたいでしょうか?また、この技術が普及することで、地域のコミュニティや商業施設にどのような変化が生まれると思われますか?