韓国メディアNewsPimによると、SamsungのAndroid XRヘッドセット「Project Moohan」は2025年10月13日に韓国で発売される。予約注文は同年9月29日に韓国で開催されるSamsung Unpackedイベントで開始される。同製品は順次グローバル展開される予定である。一方、7月にニューヨークで開催されるSamsung Unpackedイベントでは製品の正式ローンチは行われず、プロトタイプデモとティーザー映像の公開にとどまる予定である。
SamsungのXRヘッドセットは2024年に初回発表され、GoogleがAndroid XRソフトウェアを担当、QualcommがSnapdragon XR2+ Gen 2チップセットを提供する。このチップセットはMeta Quest 3およびQuest 3Sに搭載されるXR2 Gen 2の上位版である。韓国The Elecによると、ディスプレイにはApple Vision Proより高解像度・広色域のSony製1.35インチ3552×3840マイクロOLEDを採用する。Business Postは年間生産台数を10万台と報じており、高価格設定が予想される。
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Samsung Android XR Headset Will Reportedly Launch In October
【編集部解説】
Samsung Project Moohanの発売報道は、XR市場における重要な転換点を示しています。Apple Vision Pro発売から約1年、ようやく真の競合製品が登場することになります。
最も注目すべきは、GoogleのAndroid XRというオープンプラットフォームの採用です。これまでのXR市場は、Apple、Meta、ByteDance(Pico)など各社が独自のクローズドエコシステムを構築してきました。Android XRの登場により、スマートフォン市場と同様に、オープンプラットフォーム対クローズドプラットフォームの構図が形成される可能性が高いと考えられます。
技術仕様面では、Sony製マイクロOLEDディスプレイの採用が興味深いポイントです。Apple Vision Proも同じくSony製ディスプレイを使用していますが、Project Moohanはより高解像度を実現するとされています。これは、Samsung Display技術との相乗効果によるものと推測されます。
しかし、年間生産台数10万台という数字は、戦略的な意味を持っています。これはApple Vision Proの初年度出荷予測50万台と比較して控えめな数値です。高価格帯市場での慎重なアプローチか、技術的制約による生産能力の限界かは現時点では不明ですが、いずれにしてもニッチ市場への参入であることは確実です。
Qualcomm Snapdragon XR2+ Gen 2の採用も戦略的判断といえるでしょう。Meta Quest 3との差別化を図りつつ、開発コストを抑制する現実的な選択です。重要なのは、ハードウェア性能よりもAndroid XRとGemini AIの統合による差別化だと考えられます。
2025年10月という発売時期も興味深い点です。Apple Vision Pro 2の発売予測と重なる時期であり、両社の直接対決が予想されます。XR市場の本格的な成長期における重要な一手となりそうです。
【用語解説】
Android XR:GoogleとSamsungが共同開発する拡張現実(XR)専用オペレーティングシステム。VRヘッドセットとARスマートグラスの両方に対応し、Gemini AIが統合されている。
Snapdragon XR2+ Gen 2:Qualcommが開発したXR専用チップセット。Meta Quest 3に搭載されるXR2 Gen 2の上位版で、4.3K解像度×2眼表示と12台以上の同時カメラ処理に対応している。
マイクロOLED:有機ELディスプレイ技術の一種で、極小サイズでありながら高解像度・高コントラスト・広色域を実現する。VR/ARヘッドセット用ディスプレイとして注目されている技術である。
Project Moohan:SamsungのAndroid XRヘッドセットのコードネーム。「무한(ムハン)」は韓国語で「無限」を意味し、無限の可能性を表現している。
Samsung Unpacked:Samsungが定期的に開催する新製品発表イベント。Galaxy スマートフォンやタブレット、ウェアラブル製品などを発表する場として知られている。
【参考リンク】
Samsung公式サイト(外部)
Samsungの最新製品情報、Galaxy シリーズスマートフォン、家電製品、XR技術開発状況などを掲載
Google Android XR公式サイト(外部)
GoogleのAndroid XRプラットフォームの公式情報サイト。対応デバイス、開発者向け情報を提供
Qualcomm Snapdragon XR2+ Gen 2公式サイト(外部)
QualcommのXR専用チップセットの技術仕様、性能詳細、対応機能などの公式情報を掲載
Meta Quest 3公式サイト(外部)
Meta Quest 3の製品詳細、技術仕様、価格情報、対応アプリケーションなどを紹介
Apple Vision Pro公式サイト(外部)
Appleの空間コンピューティングデバイスVision Proの製品情報、技術仕様、価格を掲載
Sony マイクロOLED技術サイト(外部)
Sony Semiconductorのマイクロディスプレイ技術、OLED製品の技術仕様を提供
【参考動画】
「I Tried Samsung’s Secret Android XR Headset!」- Marques Brownlee
テクノロジーレビュアーMarques BrownleeによるSamsung Project Moohanの詳細ハンズオンレビュー。Android XRの機能とGemini AI統合について解説。
「Android XR hands-on: Google’s take on Meta Ray-Ban?」- The Verge
The VergeによるAndroid XRヘッドセットとスマートグラスのハンズオン動画。Google I/Oでの最新デモンストレーション映像を収録。
【参考記事】
Hands-On With Samsung’s Android XR Headset, Shipping In 2025 – UploadVR(外部)
Samsung Project Moohanの実機ハンズオン体験レポート。デザイン、性能、Android XRの機能について詳細に解説
Samsung’s headset will feature Sony 4K micro-OLED displays – UploadVR(外部)
SamsungヘッドセットがSony製4KマイクロOLEDディスプレイを採用するという報道。Apple Vision Proを上回る解像度と色域について詳述
Snapdragon XR2+ Gen 2 Announced For Samsung Headset & More – UploadVR(外部)
Qualcomm Snapdragon XR2+ Gen 2チップセットの発表記事。Samsung向けの技術仕様と性能向上について詳細解説
【編集部後記】
XR市場がついに本格的な競争時代を迎えようとしています。Apple Vision Pro一強の状況に、Samsung Project Moohanという強力な競合が登場することで、私たちユーザーにとってはより多様な選択肢が生まれることになります。
特に興味深いのは、Android XRというオープンプラットフォームの可能性です。スマートフォン市場でAndroidがもたらした変化を、XR分野でも再現できるのでしょうか。また、年産10万台という限定的な生産計画から、Samsungがどのような市場戦略を描いているのかも気になるところです。