Meta、2026年後半に新スマートグラス4モデル投入か|「Modelo」「Luna」など全コードネームと生産3,000万台体制が判明

スマートグラスが、ファッションアイテムとしての地位を確立しつつあります。MetaのRay-Banグラスは累計販売台数が急増し、同社はウェアラブル市場での存在感を急速に高めています。その勢いに乗って、Metaは次の手をすでに動かし始めていました。社内文書が示す製品ロードマップと生産計画の規模は、これが単なる「グラスの新モデル」の話ではないことを示唆しています。AIとフィジカルな身体の接点が、どこへ向かおうとしているのでしょうか。


The Informationが入手したMetaの社内メモによると、同社は2026年後半に少なくとも4モデルの新スマートグラスを投入する計画だ。メモはMeta Wearable部門バイスプレジデントのアレックス・ハイメルが執筆したとされるが、Metaによる公式確認はまだ出ていない。

新モデルのコードネームは「Modelo」(最短6月)、「Luna」と「RBM2 Refresh」(秋)、「Mojito VIP」(12月)の4種。さらに「Artemis」と「SSG」(スーパーセンシンググラス)もテスト中とされる。これまでのRay-BanやOakleyとの提携を超え、より多くのブランドやスタイルへの展開も視野に入れているという。

同メモでは、AIペンダントの開発も明らかにされた。2025年にMetaが買収したスタートアップ、Limitlessの技術——会話の録音・文字起こし・要約を行うデバイス——に近いものとして説明されており、2027年にテストが始まる予定だ。また、グラスには「Hatch」と呼ばれるAIエージェントの搭載も検討されている。

販売面では、2026年後半に1,000万台のウェアラブル販売を目標とする。Bloombergの報道によれば、MetaとEssilorLuxotticaはすでに生産目標を2倍に引き上げ、年間生産能力を2,000万台に増やし、最大3,000万台まで拡張できる体制を構築中だという。法人向けサブスクリプション「Wearables for Work」の計画も浮上しており、ハードウェアの単発販売に依存しない収益モデルへの転換を図っている。

From: 文献リンクMeta Reportedly Plans 4 New Smart Glasses Models Amid Aggressive 10M Unit Push

【編集部解説】

スマートグラスが「ガジェット」から「プラットフォーム」になる日

2025年という一年が、スマートグラスの歴史において転換点だったことは、数字が雄弁に物語っています。EssilorLuxottica(エシロールルクソティカ)が発表したQ4決算によると、MetaとのパートナーシップのもとでRay-Banブランドのスマートグラスが2025年に出荷した台数は700万台超。2023年から2024年にかけての累計200万台と比べると、1年間で販売数が3倍以上に跳ね上がった計算です。この勢いがあってこそ、今回リークされた社内メモで描かれる「2026年後半に1,000万台」という目標に現実味が生まれます。

しかし今回の報道で注目すべきは、単なる「新モデルが出る」という話ではありません。Metaが描いているのは、スマートグラスを単体のハードウェア製品から、AIサービスを届けるプラットフォームへと格上げするシフトです。

「眼鏡をかける」から「AIを着る」へ——ペンダントが示す方向

社内メモが明かしたAIペンダントの開発は、Metaのウェアラブル戦略の本質を照らし出します。ペンダントの源流は、2025年にMetaが買収したスタートアップ、Limitlessです。会話の常時録音・文字起こし・要約を行うペンダント型デバイスを手がけた同社は、Sam AltmanやAndreessen Horowitzも出資者に名を連ね、3,300万ドル以上を調達していました

「人々が着けていることを忘れるくらい自然に、常にそこにあるAI」——この思想はAIウェアラブル業界全体に通底するテーゼです。報道によればAmazonもAIウェアラブルスタートアップのBeeを買収しており、各社が「環境知能(ambient AI)」の覇権を争っている文脈に、Metaのペンダント開発は位置づけられます。眼鏡は視覚と聴覚のインターフェース。ペンダントは音声を軸にした「記憶の外部化」装置。どちらも、スマートフォン以後の身体拡張の形を探る実験です。

800億ドルの「授業料」が生んだ逆説

Reality Labsが2020年以降に積み上げた累計損失は800億ドル超。2026年1月には同部門から約1,000人以上が削減され、メタバースへの大規模投資は事実上の幕を下ろしました。しかしその長い「失敗」は完全な無駄ではありませんでした。

Metaがメタバースに注ぎ込んだ年月の中で、同社はウェアラブルハードウェアの製造ノウハウ、空間コンピューティングの基礎技術、そして何よりEssilorLuxotticaとの深い提携関係を手に入れました。2030年代にかけて延長されたこのパートナーシップこそが、今日の「年産3,000万台まで拡張可能な生産体制」を可能にしている土台です。スマートグラス市場での現在の推定シェアは約82%。メタバースという遠回りが、実は最も現実的な足がかりへの道だったという逆説が、ここに浮かび上がります。

「Wearables for Work」が示す収益モデルの転換

新モデルの投入と並行して計画されている法人向けサブスクリプション「Wearables for Work」は、Metaのビジネスモデル転換の意志を示す動きとして見落とせません。社内メモによれば、少なくとも10社の組織を顧客として獲得し、大口導入先では100台超の購入も想定しているとされます。ハードウェアの単発販売に依存せず、AIサービスを軸にした定期収入を生み出す構造——Appleがサービス事業で確立した道筋を、Metaはウェアラブルで歩もうとしています。

Reality Labsの赤字は2026年第1四半期だけでも40億ドルに上ります。2025年通年では190億ドルの損失。この数字は依然として重く、スマートグラス事業の黒字化がいつ訪れるかは見通せません。「Hatch」と呼ばれる未公開のAIエージェントや、未詳の「Artemis」「SSG」が市場でどう受け入れられるかも、まだ誰にも分かりません。

ただ一つ確かなことがあります。ウェアラブルの地平は、かつてのVRヘッドセットより遥かに広いということです。眼鏡は世界で数十億人が着けています。スマートフォンが「電話」から「コンピュータ」になったように、「眼鏡」が「AIへのゲートウェイ」になる日を、Metaは本気で見据えています。その世界が来たとき、1,000万台は序章に過ぎないかもしれません。

【用語解説】

Reality Labs(リアリティ・ラブズ)
Metaのハードウェア・XR研究開発部門。Quest VRヘッドセット、Ray-BanスマートグラスのほかAR/VR技術の研究開発を担う。2020年以降に累計800億ドルを超える損失を計上してきたが、2026年よりスマートグラス・AIウェアラブルに軸足を移した。

EssilorLuxottica(エシロールルクソティカ)
Ray-Ban・Oakleyなど世界有数の眼鏡ブランドを擁するフランス・イタリアの光学大手。2019年よりMetaとスマートグラスの共同開発を行い、2024年に2030年代にかけての長期提携を延長。Metaは同社の株式約3%(約30億ユーロ)を保有している。

Limitless(リミットレス)
会話の常時録音・文字起こし・要約を行うAIペンダント型デバイスを手がけたスタートアップ。a16z・Sam AltmanらのVCから3,300万ドル超を調達。2025年にMetaに買収された。

ambient AI(アンビエントAI)
「環境知能」とも訳される。常時着用デバイスが周囲の音声・映像を継続的に取得し、ユーザーの日常をコンテキストとしてAIに供給する概念。スマートグラスやAIペンダントが代表的な実装例。

Wearables for Work
Metaが計画中の法人向けウェアラブルサブスクリプションサービス。企業顧客が大口でデバイスを導入し、会議の文字起こしや業務AI機能を利用できるとされる。

【参考リンク】

Ray-Ban Meta AIグラス 公式サイト(Ray-Ban)(外部)
現行のRay-Ban Meta Gen1・Gen2・Displayグラスの仕様・購入情報。150種類以上のフレーム・レンズの組み合わせを確認できる

Meta Ray-Ban Display 公式サイト(Meta)(外部)
インレンズディスプレイ搭載の最上位モデル「Meta Ray-Ban Display」の製品詳細・購入案内・デモ予約

EssilorLuxottica ニュースルーム(外部)
Ray-Ban・Oakleyの親会社による公式発表。Metaとの提携に関するプレスリリースや四半期決算を確認できる

Meta × EssilorLuxottica 長期パートナーシップ発表(2024年)(外部)
2030年代にかけての長期提携延長を発表したプレスリリース原文。両社のスマートグラス戦略の原点を示す一次資料

【参考動画】

【参考記事】

Meta Reportedly Plans 4 New Smart Glasses Models Amid Aggressive 10M Unit Push(外部)
Road to VR(2026年6月1日)。The Informationが入手したMetaの社内メモを起点に、新モデル4件・AIペンダント・Wearables for Workを報告

Ray-ban maker EssilorLuxottica says it more than tripled Meta AI glasses sales in 2025(外部)
CNBC(2026年2月11日)。2025年通年での販売台数700万台超(前年比3倍超)を報告したEssilorLuxotticaのQ4決算ニュース

Meta acquiring AI wearable company Limitless(外部)
CNBC(2025年12月5日)。Limitless買収を発表した際のCEO・Dan Sirokerのコメントと製品概要

Meta’s VR layoffs, studio closures underscore Zuckerberg’s massive pivot to AI(外部)
CNBC(2026年1月13日)。Reality Labsの約1,000人以上削減と、VRからAIグラスへの戦略転換を詳報

Meta Plans AI Pendant, New Smart Glasses in ‘Wearables for Work’ Expansion(外部)
TechRepublic(2026年6月1日)。AIペンダントのプライバシー上の懸念とWearables for Workの企業向け戦略を詳しく解説

【編集部後記】

AIが「使うもの」から「着けるもの」へと変わろうとしている。スマートフォンを取り出して画面を見る、というあの動作が、いつか「古い人の習慣」になる日が来るかもしれません。

ただ、私たちが少し立ち止まって考えたいのは、常時録音・常時接続のデバイスが日常に溶け込むとき、何が変わるのかという問いです。記憶が外部化され、会話がすべてアーカイブされる世界で、私たちの「忘れる権利」や「オフでいる時間」はどこに行くのでしょうか。技術の進化を歓迎しながら、その問いを手放さずにいたいと思います。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。