毎日の心拍数や睡眠スコアを眺めていても、なぜか「健康になった実感」が持てない。そんな経験はないでしょうか。RingConn Gen 3は、この問いに対して「単発の数値ではなく、時間をかけて現れるパターンを見よ」という設計思想で応えようとしています。ウェアラブルは今、何を変えようとしているのでしょうか。
RingConn(2021年設立)は2026年5月29日、スマートリング「RingConn Gen 3」を海外向けに正式発売した。本製品の核となる新機能は「血管トレンドトラッキング」で、単一時点の計測にとどまらず、血管の状態変化を時間軸で継続的に観察し、睡眠・回復・ストレス・活動量との相関を示す。計測項目は心拍数・血中酸素濃度(SpO₂)・心拍変動(HRV)・呼吸数・皮膚温度・ストレス・歩数・消費カロリーを含む24時間計測に対応する。
ディープラーニングによる睡眠時無呼吸リスク検知では、RingConnと上海瑞金医院との共同研究による内部テストで精度90.7%を達成。皮膚温度を用いた月経周期予測では、公式ブログによると精度98%(誤差±3日以内)を実現したとされる。本体は重量2.5〜3.5グラム、バッテリー持続は振動機能オンで10〜12日・オフで11〜14日。価格は349米ドル(ベーシック仕上げ)から、月額サブスクリプション不要。公式サイトにて6月10日まで10%オフのセールが実施されている。(日本公式サイトではGen 3は未記載となっている)。
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RingConn Gen 3 Smart Ring Reveals the Hidden Patterns of Everyday Wellbeing | Digital Trends
【編集部解説】
スマートリングの世界で、今まさに主戦場が移り変わっています。
かつてウェアラブルデバイスは「今この瞬間の数値」を競う場でした。心拍数が何拍か、昨日何歩歩いたか、昨夜の睡眠スコアは何点か。計測の正確さと種類の多さが製品の価値でした。ところがここ数年、この基準が静かに変わりつつあります。問われているのは「瞬間の数値」ではなく、「時間をかけて何が変化しているか」です。
RingConn Gen 3が2026年5月29日に正式発売されたタイミングは、この転換をよく示しています。前日には競合のOura Ring 5が発表され、スマートリング市場が一気に動いた週でした。両社の発表を並べると、同じ「長期的な健康把握」という方向性を目指しながら、アプローチがかなり異なることが見えてきます。
Gen 3の最も特徴的な機能は、「血管トレンドインサイト」です。これは血圧の単発測定ではありません。公式サイトは明示的に「Gen 3が提供するのは血管健康の傾向インサイトであり、単一の読み取り値ではない」と説明しています。夜間の血管負荷のパターン、手動入力した血圧の記録、日々の生活習慣の複合的な影響を時間軸で観察する設計です。
この「傾向を見る」という姿勢は、医療機器との境界線を意識した線引きでもあります。血圧値を断定的に出す機能は持たず、あくまで「ライフスタイルのガイダンス」として位置づけることで、医療機器認証が不要な製品カテゴリに留まっています。実用上のメリットとして、規制の対象外であることによる迅速な市場投入と、ユーザー側の過信を防ぐ設計が両立しています。
計測できる項目は心拍数・心拍変動(HRV)・血中酸素濃度(SpO₂)・呼吸数・皮膚温度・ストレス・歩数・消費カロリーにわたります。睡眠中には睡眠時無呼吸リスクの指標と夜間の血管負荷傾向も取得します。これら単体では他の競合製品も備える計測項目ですが、Gen 3の設計意図は「それらを束ねてパターンとして解釈する」点にあります。
価格は349ドルから(ブラッシュ仕上げは369ドル)で、月額サブスクリプションは不要です。これを競合と比較すると差が明確です。Oura Ring 5は本体399ドルに加えて月額5.99ドル(年払いで69.99ドル)のメンバーシップが必要で、上位機能にはさらに別料金のサービスも用意されています。2年間の総所有コストで見ると、差は数百ドル規模になります。
ただし、これはどちらが優れているという話ではありません。Oura Ring 5はサブスクを軸に医療情報との連携や医師へのアクセスといった付加価値を積み上げる戦略を取っており、「ウェアラブルをヘルスケアプラットフォームの起点にする」という方向性が読み取れます。対してRingConn Gen 3は、サブスクなしで長期的なトレンド把握ができることを製品の軸に据えています。どちらを選ぶかは、「ウェアラブルに何を求めるか」によって変わります。
本体はチタン製で重量2.5〜3.5グラム、厚み2.3mm(最薄部)、IP68(水深100m相当)防水仕様です。バッテリーは振動機能オンで10〜12日、オフで11〜14日持続します。同社のGen 2(12日)やGen 2 Air(10日)と比べると振動機能が追加されながらもバッテリー性能が向上しており、これはIEEE国際シンポジウム(ISCAS 2026)で発表した超低消費電力チップ設計によるものとされています。
日本での購入については、現時点では日本公式サイト(ringconn.jp)にGen 3が未掲載となっており、Amazon.co.jpにおいても取り扱いが確認できないため、公式の発表を待つ必要があります。
なお睡眠時無呼吸リスクの検知精度については、RingConnと上海瑞金医院との共同研究による内部テスト結果であり、独立した第三者機関による検証との区別が明確ではありません。同様に月経周期の予測精度98%についても、試験条件の詳細は公式情報から確認できていません。いずれも参考値としてご理解ください。
【用語解説】
RingConn(リングコン)
2021年設立のウェアラブルメーカー。スマートリング製品を手がけ、Gen 1・Gen 2・Gen 2 Air・Gen 3を展開している。月額サブスクリプション不要のビジネスモデルを特徴とする。
血管トレンドインサイト(Vascular Trend Insights)
RingConn Gen 3が搭載する機能。血圧の単発測定値を出すのではなく、夜間の血管負荷パターンや日々の生活習慣データを組み合わせ、時間軸での傾向変化を示す。医療機器としての診断機能ではなく、ライフスタイルガイダンスとして位置づけられている。
心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)
心拍と心拍の間隔のゆらぎを示す指標。自律神経の状態を反映するとされ、ストレス・疲労・回復度の推定に活用される。スマートリング各社が「準備度スコア」などの計算に使用する主要データの一つ。
IP68
電子機器の防水・防塵規格。IP68は「粉じん完全防護」かつ「水深1m以上での継続浸水に耐える」ことを示す。RingConn Gen 3はATM10(水深100m相当)にも対応している。
光電脈波センサー(PPGセンサー)
皮膚に光を当て、その反射光の変化から血流を検出するセンサー。スマートリングが心拍数・SpO₂・HRVなどを計測する際の基本技術。指先は手首より動脈が表面に近いため、センサーと皮膚の接触精度が高くなりやすい。
【参考リンク】
RingConn 公式サイト(Gen 3製品ページ)(外部)
RingConn Gen 3の価格・スペック・カラー展開・前世代製品との比較表・FAQが掲載されている公式製品ページ。サイジングキットの申込や購入もここから。日本語対応あり。
RingConn 公式ブログ:Gen 3の新機能解説(外部)
血管トレンドインサイト・振動アラート・センサー構成など、Gen 3の各機能の設計意図を詳しく解説した公式ブログ記事。「なぜ血圧の単発測定ではないのか」という設計判断の背景も説明されている。
【参考記事】
RingConn Gen 3 Smart Ring Officially Launches: Expanding Long-Term Health Awareness in Everyday Life|PR Newswire(外部)
RingConn Gen 3のグローバル正式発売を告知した公式プレスリリース。発売20日で1,000万ドル超の売上、著名人・スポーツ団体による採用事例、ISCAS 2026での低消費電力チップ技術展示など、製品の背景情報が網羅されている。
Oura unveils its Ring 5 with a thinner, lighter design starting at $399|TechCrunch(外部)
Oura Ring 5の発表を伝えるTechCrunchの報道。Gen 3出荷前日という競合タイミング、Health Radar機能、医師連携サービスの詳細、RingConnら競合の台頭がOuraの開発サイクル短縮につながった背景などを報じている。
【関連記事】
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【編集部後記】
「パターンを見る」という発想は、健康管理の話だけでなく、私たちが日常の中でどれだけ「今この瞬間」しか見ていないかを気づかせてくれます。数値を集めることと、その流れを読むことは、実は全く別のことです。スマートリングが「今日の心拍数」ではなく「この2週間の傾向」を見せようとするとき、それはデバイスの進化というより、健康との向き合い方そのものの問い直しに近いと感じます。毎朝スコアを確認して安心する習慣と、数週間のパターンから自分の状態を読む習慣では、身体への関心の向け方がかなり違ってきます。私たちはウェアラブルに何を期待しているのか。そしてどんな問いを持って、データと向き合っているのか。改めて考えてみてもいい機会かもしれません。












