CMFブランドのスマートフォンが消え、その直後にNothingブランドで「4b」が現れる。この入れ替わりは偶然ではなく、RAM価格高騰がブランドの境界線そのものを動かした結果です。Phone 4bとは何者なのか。Phone 4aとの差分と、Nothingが踏み込もうとしている新しい価格帯の意味を整理します。
Nothingは「4b」ブランドの新スマートフォン、Nothing Phone 4bのティーザーを開始し、7月7日の発売を公式に発表した。デザインはトランスペアレントバックパネルを含むNothingの意匠を継承する見込みで、シングルリアカメラが示唆されているが、その後公開された公式スケッチには複数カメラ構成の可能性も含まれている。
別のリーカー・Yogesh Brarによると、発売時のメモリ構成は2種類で、価格はPhone 4aより3,000〜5,000ルピー(約31〜52ドル)低くなる見通しだ。プロセッサやバッテリー容量などの主要スペックはまだ明らかになっていない。
From:
Nothing’s new budget phone could launch on July 7 | Android Authority
【編集部解説】
Nothingは2026年6月、CMFブランドの次期スマートフォン開発を中止すると公式に発表しました。理由はRAMをはじめとするメモリ部品の価格高騰です。同社共同創業者のAkis Evangelidis氏はXへの投稿で、「CMF Phone 2 Proを今の部品コストで製造すれば、価格は3万〜3万5000ルピー(約318〜370ドル)になる」と述べています。CMF Phone 2 Proはインドで2025年4月に約1万9000〜2万1000ルピー(約200〜222ドル)で発売された端末です。倍近い価格になっては、そもそものブランドコンセプトである「手の届くデザイン」が成立しない、という判断です。
ここで注目すべきは、その直後にNothingブランド側で「4b」の名を冠したスマートフォンのティーザーが始まったことです。リーカーのYogesh Brarは、「既存のCMFプロジェクト(CMF Phone 3 Proとなるはずだったもの)がNothingブランドに移行した」とXで述べており、Phone 4bはCMF路線の事実上の引き継ぎ先である可能性が高いと見られています。
Nothingはこれまで、メインブランドの「Nothing Phone」シリーズとサブブランド「CMF by Nothing」の2ラインを明確に使い分けてきました。前者はGlyphインターフェースを持つトランスペアレントデザインのミドルハイ〜ミドルレンジ機、後者はカスタマイズ性を前面に出したより低価格なエントリー帯という棲み分けでした。Phone 4bはその棲み分けの枠を越え、Nothingブランドでありながら価格帯をCMFに近づけるという、新しいポジションに踏み込もうとしている端末といえます。
Phone 4aとの差分という観点では、いくつかの点が注目されます。Phone 4aは日本では128GBモデルが5万8800円で発売されました。ティーザー動画が示すPhone 4bのデザインはトランスペアレントバックパネルを継承しているものの、カメラはPhone 4aのトリプル構成より少ない構成が見込まれています。リーカー情報によれば価格差はインドで3,000〜5,000ルピー(約31〜52ドル)程度とされており、仕様を絞ることでPhone 4aよりも安価な層を取り込む狙いが読み取れます。
ただし現時点では、プロセッサ・バッテリー容量・正式な発売地域・日本展開の有無は一切明らかになっておらず、価格・詳細スペックは7月7日の公式発表を待つ必要があります。部品価格高騰という業界全体の逆風の中で、Nothingがどのコストコントロールでバジェット帯に踏み込めるのか。Phone 4bの正式発表は、Nothingがこの構造的な課題にどう向き合うかを示す最初の答えになります。
【用語解説】
CMF by Nothing
Nothingが2023年に立ち上げたサブブランド。CMFはColor(色)・Material(素材)・Finish(仕上げ)の頭文字。親ブランドのNothing Phoneよりも価格帯を抑えたエントリー〜ミドルレンジ向けの製品群を展開している。スマートフォンのほか、イヤホン・スマートウォッチも販売。背面カスタマイズ性が特徴で、Glyph InterfaceはなくLED通知非搭載。
Glyph Interface(グリフインターフェース)
Nothing Phoneシリーズに搭載される背面LEDによる通知システム。着信・通知・バッテリー残量などを光のパターンで視覚的に伝える。CMF Phoneには搭載されていない、Nothingブランドを象徴する機能の一つ。
Flipkart(フリップカート)
インド最大級のECプラットフォーム。Walmart傘下。インドでのスマートフォン新製品発売においてAmazonと並ぶ主要販路で、メーカーが独占販売契約を結ぶことも多い。今回のPhone 4bのティーザーが同サイトに誤掲載されたとされる。
【参考リンク】
Nothing(公式サイト)(外部)
Nothing Technologyの製品情報・購入ページ。Phone・CMFシリーズの仕様・価格・販売情報を掲載。
Nothing Japan(公式サイト)(外部)
日本向けの製品情報・サポートページ。国内取り扱いモデルの案内・販売チャネル情報を掲載。
Flipkart(Nothing専用ページ)(外部)
現在公開中のFlipkartによるNothing Phone 2026ティーザーページ。具体的な発売日の記載はない。
【参考記事】
Rising RAM prices claims its latest casualty: Nothing’s next CMF phone|Android Authority(外部)
CMF Phone次期モデル(CMF Phone 3 Pro)のキャンセルを報じる記事。共同創業者Akis Evangelidis氏のXコメントを元に、RAM価格高騰の具体的な影響を詳述。
Nothing’s latest teaser may have just revealed the Nothing Phone 4b|Android Authority(外部)
Nothing IndiaのXティーザー動画(「4Bえんぴつ」)を分析。元CMFプロジェクトのNothingブランドへの移行説を含む。
【関連記事】
Nothingが新型CMFスマホを断念——「前進した端末が作れない」、AI需要が引き起こすメモリ危機の実態
Phone 4bが登場した背景にあるメモリ価格高騰の構造については、こちらの記事で詳しく解説しています。
Nothing Phone (4a) Pro / (4a) 4月22日から国内発売、楽天モバイル独占とKDDI新ブランド「au Flex Style」で二軸展開
Phone 4bが価格面で意識するPhone 4aの日本展開については、こちらの記事をご参照ください。
【編集部後記】
「CMFらしさ」とは何だったのか、と改めて考えさせられます。背面カバーの交換、手の届く価格、ファッションに近いデザイン感覚——それらはブランドの哲学であると同時に、部品コストが許す範囲で成立していた設計でもありました。RAM価格が倍近くに跳ね上がった瞬間、その設計の前提が崩れ、ブランドの境界線が引き直されることになったのです。Phone 4bがNothingブランドを名乗る以上、Glyphインターフェースやトランスペアレントデザインというアイデンティティは引き継がれるでしょう。しかし価格帯はCMFが担っていた領域に踏み込む。私たちが見ているのは新モデルの登場ではなく、コスト構造の変化がブランドの地図を書き換えていく過程かもしれません。7月7日の発表が、その答え合わせになります。












