ハッカー御用達ツールの会社が、次に作ったのは「家族に静かにしてもらうための光るデバイス」でした。
Slackのステータスも、Zoomの「取り込み中」表示も、画面の外にいる相手には届きません。それなら、いっそ物理的に光らせてしまえばいい。
そんな、少し回り道に見えて理にかなった発想から生まれた製品です。
Flipper Devicesは、生産性向上に特化した新ガジェット「Busy Bar」を発表した。同社はハッキング・無線通信ツール「Flipper Zero」で知られるが、Busy Barはタイマー設定やアプリブロック、LEDディスプレイへのメッセージ表示機能を持つ。
本体正面には72×16のLEDマトリクスディスプレイ(最大400ニト、1,600万色対応)を搭載し、背面にもステータス表示用のモノクロ画面を備える。3,250mAhバッテリーでアクティブ時最大8時間、スタンバイ最大2週間駆動する。iOS・Android・macOS向けアプリを提供し、macOSとのマイク連携による通話中ステータス表示にも対応する。Matter認証を取得しスマートホームとの連携も可能。価格は先着3,000人が199ドル、それ以降は249ドルで、7月14日より米国・EU・英国・カナダで出荷を開始する。
From:
Flipper Device’s new Busy Bar is a customizable display for productivity
アイキャッチ画像はBUSY Bar公式サイトより引用
【編集部解説】
Busy Barが提案しているのは、目新しい機能の集合体というより、「ステータス表示」という一つの機能を独立したハードウェアに切り出すという発想です。
似たような役割は、すでにSlackのステータスやGoogleカレンダーの予定表示、Zoomの「取り込み中」表示などソフトウェア側でも果たされています。それでもBusy Barが物理的なディスプレイとして存在する意味は、在宅勤務という環境の特性にあります。同僚や上司はPCの画面を見ていませんが、家族や同居人はPCの画面を見ません。在宅勤務で「取り込み中」を伝える相手は、しばしばソフトウェアの外側にいます。
製品の機能構成は、この「画面の外」を意識した設計になっています。本体は正面と背面で異なる情報を表示でき、置き方によって相手に見せる情報を切り替えられます。さらにmacOSとのマイク連携により、通話参加や録画・配信の開始を検知して自動的に「通話中」表示に切り替わる仕組みも備えています。手動で操作しなくても、行動そのものがステータスの引き金になる設計です。
Matter認証による主要スマートホームエコシステムとの連携、開発者向けの公開API・MQTT・Python/TypeScriptライブラリの提供も、単体の通知デバイスというより、家庭内の他の機器と連動する「在宅勤務の状態管理ハブ」を志向していることを示唆しています。前作のFlipper Zeroが無線通信を扱う汎用ツールだったことを踏まえると、ハードウェアを開放的に設計する姿勢は同社の一貫した思想と見ることができます。
価格は先着3,000人が199ドル、それ以降は249ドルに設定されており、この価格帯がニッチな生産性ガジェット市場でどう受け止められるかは、7月14日の出荷開始後、実際の評価を見るほかありません。
【用語解説】
Pomodoroタイマー:作業を一定時間(一般的には25分)の集中ブロックと短い休憩に分割する時間管理手法。Busy Barは作業ブロックの開始・終了を物理デバイス上で可視化する用途で採用している。
Matter:Amazon、Apple、Google等が共同で策定したスマートホーム機器の共通通信規格。異なるメーカーの機器同士が同一プロトコルで連携できるようにすることを目的とする。
LEDマトリクスディスプレイ:多数のLED素子を格子状に配列し、文字や図形、簡易的なアニメーションを表示できる表示装置。
【参考リンク】
Busy Bar公式サイト(外部)
Busy Barの製品ページ。価格・スペック・ウェイトリスト登録の窓口を提供している。
Flipper Devices公式サイト(外部)
Busy Barの開発元であるFlipper Devicesのコーポレートサイト。会社概要や製品ラインナップを掲載している。
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同じFlipper Devicesは、Busy Barと同時期に、ハッキングツールの枠を超えた別方向の製品も発表しています。
【編集部後記】
人類は長らく「邪魔しないでオーラ」を出す技術を求めてきました。
ヘッドホンを着けてみたり、Slackのステータスを「取り込み中」にしてみたり、果てはドアに貼り紙をしてみたり。
しかし結果はご存知の通りです。家族は貼り紙を読みませんし、同居人はSlackを見ていません。
そこにFlipper Devicesが出した答えが、249ドルの光るブロックでした。
ハッキングツールで世界中の鍵をこじ開けてきた会社が、次に挑むのは家庭内の「静かにして」という最大の難関だったわけです。
Pomodoroタイマーがついているあたり、開発陣にも心当たりがあったのかもしれません。
願わくば、この製品が「無視されるハードウェア」の歴史に新たな一行を加えませんように。












