AIモデルの競争では、パラメータ数の大きさだけで実力を測ることはできません。NVIDIAが開発を進める新たなNemotron 4ファミリーでは、1兆パラメータ級のモデルが報じられる一方、その性能や構成はまだ明らかになっていません。現行Nemotronとの差分から、NVIDIAの次の一手を読み解きます。
NVIDIAが次世代オープンAIモデル「Nemotron 4」を開発しているとThe Informationが報じた。最大モデルは少なくとも1兆パラメータになる見込みで、最終トレーニングはまだ完了しておらず、公開時期も未定だが、早ければ2026年晩秋に準備が整う可能性があるという。
NVIDIAは開発自体を認めているが、今回報じられた詳細は確認していない。
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Nvidia developing Nemotron 4 open-source AI models to rival leading systems: Report
【編集部解説】
Nemotron 4で最も目を引くのは、最大モデルが少なくとも1兆パラメータになるとの報道です。現行のNemotron 3 Ultraは、NVIDIA公式情報では550B(5500億)パラメータのMixture-of-Experts(MoE)モデルで、そのうち推論時に利用するアクティブパラメータは55B(550億)です。
単純な総パラメータ数だけを見れば、報道されているNemotron 4最大モデルはNemotron 3 Ultraから大きく規模を拡大することになります。しかし、これをそのまま「性能が大幅に向上する」と捉えることはできません。Nemotron 3 Ultraでは総パラメータの一部だけを処理に使うMoE構成が採用されており、2026年に予告された新たなNemotron 4ファミリーについては、アーキテクチャ、アクティブパラメータ数、コンテキスト長などの詳細がまだ公開されていないためです。
さらに、推論能力、コーディング、ツール利用、多言語性能などを競合モデルと比較できるベンチマークも現時点では公表されていません。1兆という数字はモデル規模を示しますが、オープンモデルの最前線に到達したかを判断する材料にはまだ足りません。
なお、NVIDIAは2024年にも「Nemotron-4-340B」という名称のモデルを公開しています。2026年に予告された「Nemotron 4 family」は新たなファミリーを指しており、旧モデルと名称が重複するため、本記事では2026年に予告された新世代を「新たなNemotron 4ファミリー」として区別します。
一方、Nemotron 4そのものの詳細とは別に、NVIDIAが公式に明らかにしている重要な情報があります。2026年3月に発足した「NVIDIA Nemotron Coalition」です。Black Forest Labs、Cursor、LangChain、Mistral AI、Perplexity、Reflection AI、Sarvam、Thinking Machines Labが参加し、データ、評価手法、研究ノウハウなどを持ち寄ってオープンなフロンティアモデルを共同開発します。
最初の基盤モデルはMistral AIとNVIDIAが共同開発し、NVIDIA DGX Cloudで学習されます。そして、このモデルが今後のNemotron 4ファミリーの基盤になることをNVIDIAは明言しています。
つまり、今回確実に確認できる変化は、単にNVIDIAが巨大なモデルを作っているということだけではありません。複数のAI企業がデータや評価、専門知識を持ち寄る共同開発体制が、Nemotron 4の開発基盤を支える点も重要です。
現在のNemotron 3ファミリーを見ると、NVIDIAはすべての処理を最大モデルに任せる設計を取っていません。Nemotron 3 Ultraは複雑な計画や推論を担い、2026年8月11日に公開されたNemotron 3.5 Lightningは30Bパラメータ、3Bアクティブパラメータという比較的小型のMoEモデルとして、ツール呼び出しなど大量の処理を低遅延で実行する用途に最適化されています。
同時に公開されたNeMo Switchyardは、処理内容に合わせて複数のモデルから適切なモデルへリクエストを振り分ける仕組みです。NVIDIA自身が、複雑な計画にはフロンティアモデル、大量の実行処理には小型モデルを使う「system of models」という構成を示しています。
この流れを考えると、Nemotron 4最大モデルの1兆パラメータという規模だけを見るより、将来公開される大小のモデルがどのように組み合わされるのかを見る必要があります。ただし、新たなNemotron 4ファミリーがNemotron 3と同じモデル構成やルーティング思想を採用するかについては、現時点で公式な詳細は示されていません。
現時点でNVIDIAが公式に確認しているのは、新たなNemotron 4ファミリーを開発していることと、Nemotron Coalitionの成果がその基盤になることまでです。少なくとも1兆パラメータという規模や2026年晩秋にも準備が整う可能性について、NVIDIAはThe Informationの報道内容を確認していません。
また、2026年に予告された新たなNemotron 4各モデルについては、個別のモデルウェイト提供条件、ライセンス、API、料金、日本語性能、日本からの利用条件などの詳細も現時点では示されていません。NVIDIAはCoalitionで開発する基盤モデルをオープンなエコシステムへ提供するとしていますが、Nemotron 4各モデルの具体的な公開方式は今後確認する必要があります。
Nemotron 4が主要なオープンモデルにどこまで迫るのかを判断するには、モデル規模よりも、正式公開後のベンチマーク、実際に推論で動くパラメータ数、必要な計算資源、ライセンスといった情報が重要になります。現段階では「1兆パラメータ級のフロンティアモデルをNVIDIAが開発中」と報じられているところまでが、確認できる現在地です。
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【編集部後記】
NVIDIAが手がける次世代モデルということもあり、Nemotron 4には大きな期待が集まりそうです。GPUだけでなく、AIモデルそのものの開発でもどこまで存在感を高めていくのか注目したいところです。1兆パラメータ級という規模が、実際の性能や使いやすさにどう結びつくのかも気になります。オープンモデルとして、研究者や開発者にどのように活用されていくのでしょうか。
NVIDIAがNemotron 4でどんな活躍を見せてくれるのか、今後の発表が楽しみです。
【用語解説】
NVIDIA Nemotron
NVIDIAが開発するオープンAIモデルのファミリー。モデルウェイトだけでなく、学習データや学習レシピの公開を重視しており、AIエージェント向けの推論、ツール利用、情報検索、安全性など複数の用途をカバーする。
Mixture-of-Experts(MoE)
モデル内部に複数の「エキスパート」と呼ばれるネットワークを持ち、入力に応じてその一部だけを使って処理する方式。全パラメータを毎回動かす必要がなく、大規模なモデル容量と計算効率の両立を狙える。Nemotron 3.5 LightningもMoEを採用し、300億パラメータのうち30億を処理時に使用する。
アクティブパラメータ
MoEモデルが1回の処理で実際に使用するパラメータ数。モデル全体の総パラメータ数とは異なるため、MoEモデルを比較するときは総パラメータ数だけでなく、アクティブパラメータ数も重要な指標となる。
フロンティアモデル
その時点で高度な推論や知識処理などを備えた最先端級のAIモデルを指す表現。NVIDIAはNemotron Coalitionについて、オープンな「frontier-level foundation models」の開発を目指す取り組みと位置づけている。
モデルルーティング
入力された処理の内容に合わせ、複数のAIモデルから適切なモデルを選択してリクエストを振り分ける仕組み。NVIDIAのNeMo Switchyardは、複雑な推論には大型モデル、大量の実行処理には小型モデルを割り当てる構成を可能にする。
【参考リンク】
NVIDIA Nemotron(外部)
Nemotronモデル群の特徴や用途、オープンモデルとしての提供方針、関連する開発リソースを確認できるNVIDIA公式ページ。
NVIDIA Nemotron Developer(外部)
Nemotron 3 Ultraなど各モデルの仕様、利用方法、Hugging FaceやNVIDIA NIMへの導線をまとめた開発者向けページ。
NVIDIA NeMo(外部)
Nemotronを含むAIモデルの構築、カスタマイズ、評価、デプロイ、継続的な最適化を支えるNVIDIAのAI開発ソフトウェア群。
【参考記事】
NVIDIA Launches Nemotron Coalition of Leading Global AI Labs to Advance Open Frontier Models|NVIDIA(外部)
2026年3月に発表されたNemotron Coalitionの公式リリース。参加企業、Mistral AIとの共同開発、最初のモデルがNemotron 4の基盤になることを説明している。
Nemotron AI Models|NVIDIA Developer(外部)
Nemotronファミリーの公式仕様ページ。Nemotron 3 Ultraの550B総パラメータ、55Bアクティブという構成など、現行世代との比較に使用した情報を掲載している。
NVIDIA Nemotron 3.5 Lightning Delivers Fast, Accurate Specialized Task Execution for Long-Running Agents|NVIDIA Technical Blog(外部)
2026年8月11日に公開されたNemotron 3.5 Lightningの公式解説。30B総パラメータ、3Bアクティブという構成や、NeMo Switchyardによるモデルルーティングを説明している。
Nemotron 3 Ultra: Open, Efficient Mixture-of-Experts Hybrid Mamba-Transformer Model|NVIDIA Research(外部)
Nemotron 3 Ultraのモデル構造、学習方法、評価結果などをまとめたNVIDIAの技術レポート。現行の大型Nemotronを技術的に確認するための一次資料。


















