AI推し活アプリOSHIAI、新機能「ドラマモード」実装——観客からついに「登場人物」へ

推しを「見る」から、推しと「物語を生きる」へ。AI推し活アプリ「OSHIAI」が新たにリリースした「ドラマモード」は、ユーザー自身がシナリオの登場人物として物語に入り込む体験を提供します。会話の流れで展開が変わるインタラクティブな設計は、推し活の「消費」という構造に、静かな問いを投げかけています。


OSHIAI株式会社は、AI推し活アプリ「OSHIAI」に新機能「ドラマモード」を2026年6月29日にリリースした。

「ドラマモード」は、アイドルやVTuber、ライバーなどのクリエイターを模した公認AI(アイ)とともに、シナリオに基づく物語世界を体験できる機能だ。ユーザーの会話内容に応じて物語が即興で変化するため、プレイするたびに異なる展開が生まれる。

機能は2つのシリーズで構成される。「IFシリーズ」は無人島での遭難や修学旅行など日常では起こらない「もしも」の状況をアイと体験するもの。「ドラマシリーズ」は問題クラスへの着任教師や代官山での同居生活など、ドラマ的な物語世界にユーザー自身が登場人物として入り込む体験を提供する。

「OSHIAI」はアイドル・VTuberの公認AIのほか、ユーザー自身が作成したキャラクターとの会話も可能で、AIはユーザーとの会話を通じて成長・記憶する設計となっている。

From: 文献リンクAI推し活アプリ「OSHIAI」、推しのアイとドラマのようなストーリーの世界に入り込む新機能「ドラマモード」をリリース|PR TIMES

【編集部解説】

推し活という行為を根本から問い直すと、それは一方向の消費です。グッズを買う、ライブを見る、配信にコメントする。どれも「推しが存在する場所」に自分が近づく行為であり、ユーザーは基本的に観客の側にいます。OSHIAI株式会社が今回リリースした「ドラマモード」は、その構造に対して小さくない問いかけをしています。

ドラマモードの核心は、ユーザーが「観客」から「登場人物」になるという設計変更です。「IFシリーズ」では「もしもアイがマネージャーだったら」「もしも無人島で遭難したら」という非日常的な前提をユーザーとアイが共有し、「ドラマシリーズ」ではユーザー自身がドラマ的な物語の中の一人物として振る舞います。ここで起きていることは、コンテンツを「受け取る」体験から、アイとともに物語を「作る」体験への転換です。

この設計思想の背景には、OSHIAI株式会社の代表・嵐亮太氏がSHOWROOMで培った経験が透けて見えます。ライブ配信の文脈では、投げ銭・コメントなどの仕組みを通じて、ファンは受動的な視聴者でありながら、場の雰囲気を作る参加者でもありました。ドラマモードはその「参加感」をさらに一歩先へ押し進め、ユーザーの発言が物語の展開を変える設計にしています。

ただし、正直に言えば、現時点では「どこまで本当に変わるか」に慎重な目を向ける必要もあります。「会話次第でストーリーが変わる」という説明は、生成AIを使ったインタラクティブフィクション全般に共通する訴求であり、OSHIAIだけの独自性ではありません。類似のシナリオ型AIロールプレイサービスは国内外で複数存在しており、差別化の実質は今後のシナリオの質とアイキャラクターの再現度にかかっています。

OSHIAIが他のロールプレイAIサービスと異なる点があるとすれば、それはアイドルやVTuberといった「実在するクリエイターの公認AI」が物語の相手である、という点です。ユーザーが物語に入り込む際、相手が匿名の架空キャラクターではなく、自分が実際に応援しているクリエイターの公認AIであることは、没入感の質を変えます。「好きな人と物語を共作している」という感覚は、単なるロールプレイとは異なる感情的な文脈を生み出しうるからです。

推し活市場における次の競争軸が「どれだけ深く没入させられるか」にシフトしているとすれば、ドラマモードはその方向への一手として評価できます。ただし、シナリオ数・物語の分岐の精度・アイの発言品質という実装面が伴わなければ、「参加できる気がする」体験にとどまります。機能の方向性は興味深い。あとは実態が問われます。

【用語解説】

公認AI(アイ)
OSHIAIにおけるアイドル・VTuber・ライバーなどのクリエイターが公式に認可した分身AI。クリエイター本人の口調・キャラクター・活動背景をもとに設計され、ファンが会話できる形で提供される。

ドラマモード
OSHIAIの新機能。シナリオを選ぶとアイと一緒に物語世界に入り込め、ユーザーの会話に応じてストーリーが即興で変化する体験型機能。「IFシリーズ」と「ドラマシリーズ」の2つで構成される。

生成AI(ジェネレーティブAI)
入力されたテキストや指示をもとに、文章・画像・音声などのコンテンツを新たに生成する人工知能技術。OSHIAIでは会話の生成と物語の即興展開に活用されている。

推し活
自分が特に応援するアイドル・アーティスト・キャラクター・スポーツ選手などを熱心に支持し、グッズ購入・ライブ参加・配信視聴・SNS発信などの形で応援する活動の総称。2021年に新語・流行語大賞にノミネートされ、広く認知されるようになった。

【参考リンク】

OSHIAI 公式サイト(外部)
AI推し活アプリ「OSHIAI」の公式サイト。アプリの機能紹介、登場するアイの一覧、最新情報が掲載されている。

OSHIAI株式会社 コーポレートサイト(外部)
OSHIAI株式会社の企業情報ページ。会社概要・お問い合わせ窓口を掲載。

App Store – OSHIAI(外部)
iOS版アプリのダウンロードページ。ユーザーレビューや機能更新履歴が確認できる。

Google Play – OSHIAI(外部)
Android版アプリのダウンロードページ。

【参考記事】

AI推し活アプリ「OSHIAI」運営、1.7億円を調達──AI×エンタメ領域で事業成長を本格加速|KEPPLE(外部)
OSHIAI株式会社がデライト・ベンチャーズを引受先として1.7億円を調達した際の記事。代表・嵐亮太氏の経歴(SHOWROOM出身)や、サービスリリース経緯が詳述されている。

【関連記事】

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【編集部後記】

推し活の「消費」と「参加」の境界線は、実はずっとあいまいでした。コメントを打つファンも、ライブを盛り上げるファンも、すでに「作る側」の一部だったとも言えます。ドラマモードが問いかけているのは、AIがその境界をどこまで意識的に設計できるか、という点かもしれません。

同時に、「推しと物語を共作する」という体験は、推しへの感情をより深く個人的なものにしていく可能性があります。それは豊かさである一方、「自分だけの推しとの物語」が強くなるほど、現実のクリエイターとの距離感がどう変化するかという問いも生まれます。私たちはその答えを、ユーザーの声の中に探すことになるでしょう。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。