AMDのドライバの奥に、Nvidiaの数字を上回る設定がひっそりと眠っていました。ただし、ドライバの中に「数字」が存在することと、それが画面の上で実際に「動く」ことの間には、意外と大きな距離があります。
AMDが次世代Radeonドライバに、非公開のフレーム生成関連機能を実装していることが明らかになった。Chiphellフォーラムのユーザーが解析ツール「RadeonTuner」でAdrenalin 26.6.2 WHQLドライバを調べ、Radeon RX 9070 XT上でFSR Multi Frame Generation Override、最大8倍まで設定できる生成比率、FSR Ray Regeneration DenoiserとFSR Neural Radiance Cachingのオーバーライドという4つの未公表機能を発見した。
Nvidiaの現行の上限は6倍(生成フレーム5枚)で、AMDの8倍(生成フレーム7枚)はこれを上回る。AMDは現状、生成フレーム1枚の標準的なフレーム生成のみを提供している。
From:
AMD is quietly building a frame generation mode that beats Nvidia at its own game
【編集部解説】
Chiphellフォーラムのユーザーが「RadeonTuner」というツールでAMD Adrenalin 26.6.2 WHQLドライバを調べたところ、公式には一切アナウンスされていない「FSR Multi Frame Generation」の設定項目が見つかりました。倍率は1倍から8倍まで選べる構成になっており、あわせてFSR Ray Regeneration DenoiserとFSR Neural Radiance Cachingのオーバーライド項目も確認されています。
まず押さえておきたいのは、8倍という数値の位置づけです。NVIDIAは2026年1月のCESでDLSS 4.5とともにMulti Frame Generationの6倍モードを発表し、同年内に正式リリースしました。4倍から6倍への引き上げにより、パストレーシングを使うタイトルでは4Kのフレームレートが最大35%向上したとNVIDIA自身が説明しています。Intelも「XeSS 3」で4倍のMFGを提供しており、AMDは現状、生成フレーム1枚のみの標準的なフレーム生成にとどまっています。つまり、もし8倍のMFGが実際に機能するようになれば、AMDは数値上NVIDIAを上回ることになります。
ただし、ここが今回最も重要な点です。ドライバの中に「8倍」という選択肢が存在することと、その機能が実際に動作することは別の話です。RadeonTunerを使ったユーザーがRadeon RX 9070 XT上でこの設定を実際に有効化しようと試みたところ、機能はまったく動作しなかったと報告されています。RadeonTunerの開発者自身も、AMDがドライバの中に「プロファイル上の項目名」だけを先行して用意し、実装コードは後から、あるいは実装されないまま残ることがある、と説明しており、今回の「8倍」もその一例である可能性が報じられています。つまり現時点で確認できているのは、AMDが将来8倍までのMFGに対応する余地をドライバ設計上残しているという事実だけであり、いつ・どのGPUで・どの程度の画質と遅延で機能するようになるかは何も確定していません。
Ray RegenerationとNeural Radiance Cachingのオーバーライドについても、事情は近いところがあります。Ray Regenerationは現状「Call of Duty: Black Ops 7」と「Crimson Desert」の2タイトルにしか正式対応していません。一方Neural Radiance Caching(AMD公式名:FSR Radiance Caching)はSDK上でtechnical preview(開発者向け先行公開)の段階にとどまっており、対応を表明したゲームはまだ一つもありません。いずれもドライバレベルで強制的に有効化できるようになれば対応の裾野が広がる可能性がありますが、これも現時点ではオプションの存在が確認されただけで、AMDから正式な説明は出ていません。
AMDはこの春、次世代の描画技術「FSR Diamond」で機械学習ベースのMulti Frame Generationを投入すると報じられていますが、対応する倍率や今回見つかった設定との関係は明らかにされていません。「Nvidiaを上回る8倍」という見出しが独り歩きしやすい話題ですが、現段階でAMDが公式に確約していることは何もない、という前提を踏まえて評価する必要があります。
【編集部後記】
Nvidiaが6倍、AMDが8倍。この数字だけを追いかけていくと、いつか「16倍」や「32倍」という数字も出てくるかもしれません。ですが生成されたフレームは、あくまで元の1枚から推測された「予測」にすぎません。私たちは、倍率という指標がどこまで意味を持ち続けるのか、そろそろ問い直す時期に来ているのかもしれません。数字が伸びるほど、その中身を確かめる視点も必要になりそうです。
【用語解説】
FSR(FidelityFX Super Resolution)
AMDが提供するオープンソースのアップスケーリング/フレーム生成技術群。描画負荷を抑えつつフレームレートを高める仕組み。
Multi Frame Generation(MFG/複数フレーム生成)
AIやモーション推定を用い、実際に描画した1枚のフレームの間に複数枚の補間フレームを生成する技術。倍率が高いほど体感フレームレートは上がるが、遅延や画質への影響も増える。
FSR Redstone
AMDが2025年12月に投入したニューラルレンダリング技術群の総称。Ray RegenerationやNeural Radiance Cachingなどを含む。
FSR Diamond
AMDが今後の投入を予告している次世代の描画技術。機械学習ベースのMulti Frame Generationを含むとされるが、詳細は未公表。
Ray Regeneration(レイ・リジェネレーション)
レイトレーシングのノイズ除去(デノイズ)処理をAIで補完する技術。対応タイトルは現状限定的。
Neural Radiance Caching
間接照明の計算をニューラルネットワークでキャッシュ・近似し、レイトレーシングの負荷を抑える技術。
ADLX(AMD Device Library eXtra)
開発者がAMD GPUの設定・機能をアプリケーションから制御するためのSDK。
RDNA4
AMDのRadeon RX 9000シリーズに搭載される最新GPUアーキテクチャ。
DLSS
NVIDIAが提供するアップスケーリング/フレーム生成技術群。GeForce RTX向け。
XeSS
Intelが提供するアップスケーリング/フレーム生成技術群。Arc GPUおよび対応iGPU向け。
【参考リンク】
AMD FidelityFX 公式ページ(外部)
AMDのFSR技術群の公式ページ。FSR Redstone、各バージョンの対応タイトル一覧を掲載。
NVIDIA DLSS 公式ページ(外部)
NVIDIAのDLSS技術群の公式ページ。DLSS 4.5、Multi Frame Generationの解説を掲載。
Intel Arc Graphics Gaming Technologies 公式ページ(外部)
Intel XeSS・XeSS Multi-Frame Generationの公式解説ページ。
RadeonTuner 公式GitHubリポジトリ(外部)
今回の発見に使われたサードパーティ製ツール「RadeonTuner」の開発者(dumbie)公式配布ページ。
【参考記事】
NVIDIA DLSS 4.5 Dynamic Multi Frame Generation and 6X Mode Officially Arrive|NVIDIA公式(外部)
DLSS 4.5の6倍MFGモード正式リリースと4Kパストレーシングでの最大35%向上を発表した公式記事。
RadeonTuner leak points to AMD FSR multi-frame generation with up to 8x multiplier|KitGuru(外部)
Radeon RX 9070 XTでの実機検証で機能が動作しなかったとする報告と、Nvidia6倍・Intel4倍との比較を報じる。
AMD’s 8X Frame Gen Found Hiding in Radeon Drivers — What It Actually Is|PC Game Check(外部)
RadeonTuner開発者による「プロファイル名を実装前に仕込む慣行がある」という説明を詳報。
AMD reportedly testing FSR Multi Frame Generation up to 8X in Radeon drivers|VideoCardz(外部)
ドライバ内部のプロパティ名(MfgOverride/MfgRatio)や、次世代技術「FSR Diamond」への言及を含む。
AMD Radeon Drivers Silently Add Multi Frame Generation “MFG 8x”…|Wccftech(外部)
今回のリークを最初に報じた記事。RadeonTunerによる発見の経緯とNVIDIA・Intelとの比較を詳述。
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