サグラダ・ファミリア財団公認VR「永遠なるガウディ」来日|新宿にVRシアター「WAHHHP」が8月5日グランドオープン

[更新]2026年7月14日

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VRヘッドセットを着けていても、隣にいる人の顔が見える。そんな没入体験が、新宿の一等地に常設の居場所を得ました。ガウディが弟子に託した物語を、あなたは誰と分かち合うのでしょうか。100年越しの節目に上陸する体験から、読み解いていきます。


未来沢点株式会社は2026年8月5日、東京都新宿区のヨドバシ新宿西口駅前ビル10Fに常設型没入VRシアター「Storydive Theater WAHHHP」をグランドオープンする。こけら落とし作品は、サグラダ・ファミリア財団が国内向けに正式ライセンスを付与したVR体験『永遠なるガウディ〜VRで辿る、サグラダ・ファミリアの奇跡〜』。

ガウディ没後100年およびサグラダ・ファミリア主塔「イエスの塔」完成の節目に合わせた企画で、上映期間は同年12月31日までを予定する。30分につき最大30名が同一VR空間に入り、互いの姿を見ながら体験する社会的没入型で、対応言語は日本語・英語・中国語・韓国語・フランス語の5言語。チケット料金は大人2,500円(平日)〜2,800円(休日)。

From: 文献リンクガウディ没後100年・「イエスの塔」完成記念、サグラダ・ファミリア財団公認のVR体験『永遠なるガウディ』が新宿に上陸——8月5日、”物語に飛び込む”VRシアター「WAHHHP」がグランドオープン

【編集部解説】

VRの体験というと、ヘッドセットを被った瞬間に世界にひとり取り残される感覚を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

隣に誰がいても、見えているのは自分だけの仮想空間。そんな「個の没入」が当たり前だったジャンルに、WAHHHPは真逆の設計を持ち込みました。ヘッドセットを装着したまま、隣にいる人の姿がちゃんと見えるのです。

友人と、家族と、恋人と、同じ奇跡を同時に体験し、終わった瞬間に語り合える。この発想自体は実は目新しくありません。新宿にはすでにTyffoniumという複数人参加型のストーリーVR施設が根を張っています。では、WAHHHPの本当の勝負どころはどこにあるのか。答えは設計思想ではなく、何を持ってきたかにあります。

こけら落としに選ばれた『永遠なるガウディ』の正体を辿ると、思いのほか壮大な旅路が見えてきます。原題は『Gaudí, l’Atelier du Divin』。制作はフランスのSmall Creative社とGEDEON Programmes、そしてNHKとCNCが名を連ねる国際共同プロジェクトで、サグラダ・ファミリア財団の協力のもとに完成しました。2026年2月にはバルセロナ大聖堂でスペイン初上陸を果たし、ガウディ没後100年と主塔「イエスの塔」完成という、これ以上ないタイミングで世界デビューを飾っています。新宿上陸は、この国際巡回作品がついに極東まで辿り着いた瞬間というわけです。

ただし、ここで一つだけ引っかかる数字があります。制作元のSmall Creative社は、この作品を「6名同時参加型の集団VR体験」と説明しています。ところがWAHHHPのリリースは「30分につき最大30名が同じVR空間に入る」と謳う。6人と30人、この5倍の開きは一体何を意味するのでしょうか。単にシアターの回転定員を指しているだけなのか、それとも技術的な拡張によって本当に30人が同じ仮想空間を共有するのか。公開情報だけでは判定できません。もし後者なら、それは原作を超える技術的挑戦です。もし前者なら、表現がやや踏み込みすぎているだけかもしれません。この謎は、現地に足を運んだ人の報告を待つほかなさそうです。

国内のVR施設ビジネスは、実は華やかな成功譚ばかりではありません。2017年に鳴り物入りで開業した「VR ZONE SHINJUKU」は、わずか2年足らずで営業を終えています。常設×大型×VRという組み合わせは、過去に一度、新宿で敗れているのです。WAHHHPが掲げる「常設施設+コンテンツ定期入替」というモデルは、この苦い前例への一つの回答に見えます。単発イベントの熱量に頼らず、コンテンツを継続的に入れ替えることでリピーターを作る発想は理にかなっています。とはいえ、こけら落とし1本の情報だけでその持続力を判断するのは早計です。本当の勝負は、12月以降に何を上映するかで決まります。

価格設定にも小さな発見があります。新宿の大人料金2,500〜2,800円は、バルセロナ大聖堂版の18ユーロとほぼ同水準です。文化財ライセンスを冠したVRコンテンツというジャンルが、国境を越えてほぼ同じ値付けで成立しつつある。これは偶然にしては出来すぎています。ガウディが積み上げた石の物語を、私たちは今、世界中でほぼ同じ価格で追体験できる時代に生きているのかもしれません。

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【編集部後記】

複数人で同じVR空間に「いる」ことと、複数人が同じVR空間で「同じ体験を共有している」ことは、似ているようで違います。6人という原作の設計と、30人という新宿版の謳い文句。この間にある空白を、今回のリリースだけでは埋めることができませんでした。そして忘れてはならないのが、新宿という土地の記憶です。かつて一つの大型VR施設が、同じ街で静かに幕を下ろしました。常設という形を選んだWAHHHPが、その前例を超えられるかどうかは、こけら落とし1本では分かりません。私たちは、こうした体験型コンテンツの「規模」や「持続力」の語られ方に、もう少し注意深くあってもよいのかもしれません。


【用語解説】

社会的没入型VR(ソーシャルVR):複数人が同一のVR空間に同時に入り、互いの姿を認識しながら体験するVRの形式。個人単位での没入を前提とする従来型VR体験との対比で用いられる呼称。

ストーリーダイブ・シアター:物語(Story)に飛び込む(Dive)体験を軸に据えた常設型VR施設を指す、WAHHHP独自の呼称。

LBE(ロケーションベース・エンターテインメント):特定の物理施設に足を運ぶことで体験する没入型エンタメの総称。VR/ARに限らず、映像投影や物理セットのみで構成される形式も含む広義の概念。

イエスの塔:サグラダ・ファミリアの主塔。高さ172.5メートルで、2026年6月10日(ガウディ没後100年の当日)に完成披露され、教会建築として世界最高となった。

【参考リンク】

Storydive Theater WAHHHP公式サイト(外部)
2026年8月開業予定の常設型VRシアターの公式サイト。施設・チケット情報を確認できる。

サグラダ・ファミリア財団公式サイト(外部)
サグラダ・ファミリアの建設・保存・運営を140年以上担う公式機関のサイト。

Small Creative公式サイト(外部)
『永遠なるガウディ』の原作『Gaudí, l’Atelier du Divin』を制作したフランスの映像スタジオ。

Gaudí VR公式サイト(バルセロナ大聖堂)(外部)
同作のスペイン版がバルセロナ大聖堂で上演中であることを確認できる公式チケットサイト。

【参考記事】

Gaudí, the Atelier of the Divine|Small Creative(外部)
原作が「6名同時参加型の集団VR体験」として設計されていることを示す一次資料。サグラダ・ファミリア財団の著作権表記も確認できる。

New VR experience takes visitors inside Gaudí’s workshop|Catalan News(外部)
同作がガウディ没後100年記念事業としてバルセロナ大聖堂でスペイン初上陸したことを報じる記事。制作体制の詳細も含む。

サグラダ・ファミリア、「イエスの塔」完成 それでも144年続く工事は終わらず|CNN.co.jp(外部)
2026年6月の「イエスの塔」完成披露の経緯と、教会全体の完成がなお先であることを伝える記事。

#1301: “Gaudi, L’Atelier Du Divin” Explores Gaudi’s Work Place|Voices of VR Podcast(外部)
制作者インタビューを通じ、同作が「6人制の集団VR体験」として設計された経緯と意図を詳述する記事。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。