SpaceX vs NASA:イーロン・マスク、アルテミス計画を批判 – “アルテミス計画は極めて非効率、我々は火星へ直行する”

SpaceX vs NASA:イーロン・マスク、アルテミス計画を批判 - 月は気を散らすもの、我々は火星へ直行する - innovaTopia - (イノベトピア)

SpaceX創業者イーロン・マスクは2024年12月25日と28日、NASAのアルテミス計画を「非効率的」と批判し、「我々は直接火星へ向かう」と宣言しました。

この発言の背景には以下の重要な出来事があります:

アルテミス計画の遅延

2024年12月5日、NASAは930億ドル規模のアルテミス計画について大幅な遅延を発表しました。

  • アルテミス2号:2026年4月に延期
  • アルテミス3号:2027年半ばに延期
  • 主な理由:オリオン宇宙船の熱シールドの問題

政治的影響力の拡大

2024年12月4日、トランプ次期大統領はジャレッド・アイザックマン(41歳)を次期NASA長官に指名。イーロン・マスクは次期政権の重要な宇宙開発顧問としての役割を担うことになります。

from:Elon Musk Calls Out NASA’s Moon Ambitions: ‘We’re Going Straight to Mars’

【編集部解説】

米国宇宙開発の大転換点

トランプ次期政権下での宇宙開発政策が、大きな転換点を迎えようとしています。

SpaceXのイーロン・マスク氏が月面計画を「気を散らすもの」と批判し、火星直行を主張したことは、単なる一企業の意見表明以上の重みを持っています。

トランプ次期大統領とマスク氏の関係性は、前政権時代よりもさらに緊密になっています。マスク氏は「政府効率化部門」のリーダーとして、NASAの予算配分にも大きな影響力を持つことが予想されます。

新たな宇宙開発戦略の可能性

専門家たちは、今後のNASAに2つの可能性があると指摘しています。1つ目は、NASAがSpaceXの下請け的な立場となり、火星計画を支援するという形です。2つ目は、NASAの研究開発予算を大幅に増額し、1950-70年代のような基礎研究機関としての役割に回帰するというものです。

スターシップの進化

SpaceXのスターシップは、すでに第7号機の打ち上げを2025年1月10日に予定しています。新世代の機体には大幅なアップグレードが施され、初めてのペイロード展開実験も計画されています。

予算と実現可能性

トランプ前政権時代、NASA予算は4年間で約10%増加し、226億ドルまで拡大しました。しかし、新政権下では社会保障費や国防費が優先され、NASAを含む裁量的支出は削減される可能性があります。

技術的課題

多くの専門家は、2028年までの有人火星着陸は技術的に不可能だと考えています。しかし、規制緩和によってSpaceXの開発スピードが加速する可能性も指摘されています。

国際競争の視点

中国との月面開発競争という文脈も重要です。アルテミス計画の方向性が変更されれば、国際宇宙開発における米国のリーダーシップにも影響を与える可能性があります。

産業界への影響

新政権の宇宙政策は、既存の宇宙産業にも大きな影響を与える可能性があります。特に、ボーイングやロッキード・マーティンなど、従来のNASA契約企業への影響が懸念されます。

このような大きな転換期において、私たちはテクノロジーの進化と政策の変更が、人類の宇宙進出にどのような影響を与えるのか、注視していく必要があります。

【用語解説】

  • アルテミス計画
    ギリシャ神話の月の女神アルテミスにちなんで名付けられたNASAの月探査計画です。アポロ計画の「双子」のような位置づけで、今度は女性宇宙飛行士の月面着陸を目指します
  • スターシップ
    全長120メートルの世界最大のロケットで、東京タワー(333m)の約3分の1の高さです。100人以上の宇宙飛行士を乗せることができ、火星までの長距離飛行を想定しています

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