Microsoft研究|AI活用で従業員の64%が批判的思考を軽視 – 自己効力感が鍵に

 - innovaTopia - (イノベトピア)

マイクロソフトリサーチとカーネギーメロン大学の研究チーム7名が2025年2月10日に発表した調査で、職場でのAIツール使用が従業員の批判的思考に影響を与えることが明らかになった。

調査の主なポイント:

  • 調査対象:週1回以上AIを使用する319名のナレッジワーカー
  • 収集データ:936件の実際のAI使用事例
  • 調査期間:2024年後半から2025年初頭
  • 発表時期:2025年2月10日

主な調査結果:

  • 調査対象者の36%のみが積極的に批判的思考を適用
  • AIの能力に対する信頼が高いほど、批判的思考のための努力が減少
  • 定型的な作業や重要度の低いタスクでは特にAIへの依存が顕著
  • AIツール使用者は同じタスクに対してより画一的な結果を生み出す傾向
  • 自己効力感の高い従業員は、より批判的思考を行使

from:https://scienceblog.com/ai-tools-make-workers-less-critical-more-confident-microsoft-study-finds/

【編集部解説】

このマイクロソフトリサーチとカーネギーメロン大学の共同研究は、生成AIが人間の認知プロセスに与える影響について、初めて大規模な実証データを提供しました。

研究チーム7名(マイクロソフト6名、CMU 1名)は、936件の実例を詳細に分析。特に注目すべきは、調査対象者の64%が批判的思考を積極的に行使していないという発見です。

AIへの信頼度と批判的思考の逆相関関係は、私たちに重要な警鐘を鳴らしています。特に定型業務において、人間が判断力を鍛える機会を失っているという「認知的筋力の低下」が懸念されます。

【編集部追記】

 あまり意外な研究内容ではないが、今回の研究はマイクロソフト社とカーネギーメロン大学という権威ある機関が大規模な調査の結果論文の形としてまとめたことの意義は大きく、ぼんやりとした共通認識がある種の常識やデータに基づいた事実であることを示唆している。今回の調査はナレッジワーカーに限ったものであり統計標本としては偏りがある可能性はあるが、それでも自己効力感が批判的思考を生み出していることや、AIの能力を信頼するあまり仕事について人間の創造性が発揮されないことが示唆されている。

【用語解説】

認知的オフロード(Cognitive Offloading)
デジタル機器やAIに思考や記憶を委ねることで、脳の負担を軽減すること。例えば、電話番号を携帯に保存して覚えないようになったのと同様の現象。

批判的思考(Critical Thinking)
情報や主張を鵜呑みにせず、論理的に分析・評価する思考法。例えば、ニュースを読むときに「なぜ」「本当か」と検証する姿勢。

自己効力感

自己効力感とは、「自分がある目標を達成するための能力を持っていると認識すること」を指し、簡単に言えば「自分ならできる」「きっとうまくいく」という確信のことです

【参考リンク】

  1. Microsoft Research(外部)
    マイクロソフトの研究開発部門。AI、クラウド、量子コンピューティングの先端研究を実施
  2. CMU Human-Computer Interaction Institute(外部)
    人間とコンピュータの相互作用に関する世界最先端の研究を行う研究機関
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