Deep Nanometry|AIでナノ粒子を高感度検出、東大研究チームが新手法を発表

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2025年2月、東京大学先端科学技術研究センターの岩本雄一郎研究員を中心とする国際研究チームが、ディープナノメトリー(Deep Nanometry: DNM)と呼ばれるナノ粒子検出技術の研究成果をNature Communicationsに発表した。

研究チーム

主任研究者:岩本雄一郎(東京大学先端科学技術研究センター)

研究成果の主な特徴

教師なしディープラーニングによるノイズ除去アルゴリズムと先進的な光学機器を組み合わせた分析手法 – 30ナノメートル(髪の毛の太さの約3000分の1)の微小粒子の検出に成功 – 1秒間に10万個以上の粒子を検出できる処理能力を確認 – 従来の技術では検出が困難だった微弱な信号の捕捉に成功

from:https://phys.org/news/2025-02-deep-nanometry-disease-nanoparticles.html

【編集部解説】

東京大学の国際研究チームから発表された「ディープナノメトリー(DNM)」は、医療診断の分野に新たな可能性を示す研究成果として注目を集めています。

従来、細胞外小胞(EVs)の検出には高額な機器と長時間の前処理が必要でした。本研究では、教師なしディープラーニングを活用することで、この課題に対する新たなアプローチを提示しています。研究チームは、1秒間に10万個以上の粒子を分析できる処理能力を実験で確認しました。

技術的な特徴として注目すべきは、30ナノメートルという極小粒子の検出に成功した点です。これは人間の髪の毛の約3000分の1の大きさであり、従来の光学機器では捉えることが困難でした。

医療分野への応用として期待されているのが、がんの早期発見です。EVsは、がんの発生初期段階で特異的な変化を示すことが知られています。本研究は、これまで検出が困難だった微細なEVsの観察への道を開く可能性を示しています。

本研究は現在、実験室レベルでの基礎研究段階にあります。医療機器としての実用化には、以下のような多くのステップが必要です:

  • 様々な生体サンプルでの信頼性確認
  • 実環境での外乱に対する堅牢性の検証
  • 大規模製造に向けた課題解決
  • 生体適合性や安全性の厳密な確認
  • 規制当局の承認取得

しかし、この基礎研究は長期的に見て医療分野に重要な示唆を与えています。現在の「症状が出てから治療する」医療から、「異常を早期に発見して予防する」医療への転換に向けた、重要な一歩となる可能性を秘めているからです。

【用語解説】

ナノ粒子
髪の毛の太さの約1/1000以下の極小粒子。1ナノメートルは10億分の1メートル。医療、材料科学など幅広い分野で研究が進められている。
細胞外小胞(EVs)
細胞から分泌される30-1000nmの小さな粒子。細胞間の情報伝達を担う「小包」のような役割を果たす。がんなどの病気の早期マーカーとしての研究が進められている。
教師なし深層学習
人間が正解データを与えずに、AIが自らデータの特徴やパターンを見つけ出す学習方法。ノイズの多いデータから本質的な特徴を抽出する研究に適している。

【参考リンク】

  1. 東京大学先端科学技術研究センター(外部)
    先端研と呼ばれる日本有数の研究機関。学術と産業の連携を推進する研究拠点として知られる。
  2. Nature Communications(外部)
    自然科学分野の著名な査読付き学術誌。インパクトファクター17.69を誇る。
  3. 科学技術振興機構(JST)(外部)
    本研究の主要支援機関。CREST、GteX、A-STEPなど重要な研究支援プログラムを運営。

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