Last Updated on 2025-05-22 16:33 by admin
Google I/O 2025が2025年5月20日〜21日に開催され、同社は「見えないAI」戦略を発表した。これはAIをあらゆる製品に統合しながらも、ユーザーがその存在を意識せずに利用できるようにする取り組みである。主な発表内容は以下の通り:
AIモデルのアップデート
「Gemini 2.5 Pro」:強力な推論能力を持つ「思考するモデル」として発表。100万トークンのコンテキストウィンドウを持ち、複雑な数学やプログラミング問題を解決できる。LMArenaのベンチマークで大幅なマージンで1位を獲得。
新機能と新製品
- 「AI Mode」:検索エンジンに会話型AIを統合した新機能をアメリカで一般公開
- 「Gemini Live」:スマートフォンの画面やカメラビューをAIと共有できる機能
- 「Imagen 4」:より高品質な画像生成モデルをGeminiアプリに統合
- 「Veo 3」:テキストから音声付き動画を生成できる新モデル
- 「Search Live」:カメラを通してリアルタイムで物体を認識し情報提供
- 「Deep Search」:複雑なクエリを複数の検索に分解して結果を要約する機能
- 「Project Astra」:マルチモーダル処理能力を持つ次世代AIアシスタント
サブスクリプションサービス
「Google AI Ultra」:月額249.99ドル(約36,000円)の高度なAIサブスクリプションプラン。最初の3ヶ月は50%割引の124.99ドル(約18,000円)。Veo 2による動画生成やVeo 3への早期アクセス、Deep Researchの制限緩和などの特典を提供。2025年6月までにGemini 2.5 Proの拡張推論モード「Deep Think」へのアクセスも提供予定。
GoogleのCEO Sundar Pichaiは「より多くの知性があらゆる人に、どこでもアクセス可能になっている」と述べ、AIが日常生活のバックグラウンドでシームレスに機能する未来を描いた。
References:By putting AI into everything, Google wants to make it invisible
【編集部解説】
Google I/O 2025で示された「見えないAI」戦略は、テクノロジーの進化における重要な転換点を表しています。Googleは、AIを特別なものとして扱うのではなく、日常的なデジタル体験の自然な一部として統合することで、ユーザーの抵抗感を減らし、採用障壁を下げる戦略を取っています。
この戦略の背景には、「最も優れたテクノロジーは存在を感じさせないもの」という考え方があります。かつてパーソナルコンピュータやスマートフォンが特別な存在だったように、AIも同様の進化の道をたどっているのです。Sundar Pichai CEOが指摘するように、AI Overviewsのような機能は数億人のユーザーに利用されていますが、多くのユーザーはそれがAIによるものだと意識していません。
特に注目すべきは、GoogleがAIと個人データの統合を強化している点です。GmailやGoogle Docsなどのサービスから得られる個人情報をAIが活用することで、検索結果やレスポンスをより個人化しています。これはGoogleが持つ膨大なユーザーデータという強みを最大限に活かす戦略であり、OpenAIなどの競合に対する差別化要因となっています。
しかし、この「見えないAI」戦略には課題もあります。AIの判断プロセスが不透明になればなるほど、ユーザーはなぜその結果が提示されたのか、どのデータが使用されたのかを理解しにくくなります。Googleは2019年にAIモデルカードを提案し、透明性の重要性を強調していましたが、最近のGemini 2.0 FlashやGemini 2.5 Proではモデルカードが公開されていないという指摘もあります。
また、AIがバックグラウンドで常に動作する世界では、プライバシーやデータ使用に関する懸念も高まります。特に、Googleが公開Webコンテンツを使用してAIモデルをトレーニングする方針に変更したことは、公開情報と個人のプライバシーの境界を曖昧にする可能性があります。
さらに、2025年には「エージェント時代」の幕開けとも言われており、Project Marinerのような技術は、ユーザーの代わりに情報収集や予約、購入などのタスクを自動的に実行できます。これはAIが単なる情報提供ツールから、実際に行動するエージェントへと進化していることを示しています。
Googleの「見えないAI」戦略は、テクノロジーの自然な進化の一環と見ることができますが、その過程で私たちは、AIの透明性、制御可能性、責任の所在について慎重に考える必要があるでしょう。
【用語解説】
AI Mode(AIモード):
Googleが検索エンジンに導入した会話型AI機能。従来の検索結果に加えて、質問に対する直接的な回答や、フォローアップ質問への対応が可能になる。「クエリファンアウト」技術を活用し、質問を複数のサブトピックに分解して同時に検索を実行する。
Gemini 2.5 Pro:
Googleの最新の大規模言語モデル。「思考するモデル」として設計され、回答する前に推論を行うことで性能と精度を向上させている。数学やプログラミングの複雑な問題解決に優れ、100万トークンのコンテキストウィンドウを持つ。
Deep Think:
Gemini 2.5 Proの拡張推論モード。複雑な数学やプログラミングの問題を解決するために設計された高度な推論能力を持つ。Google AI Ultraサブスクライバーに2025年6月から提供予定。
Project Astra:
Google DeepMindが開発する次世代AIアシスタント。マルチモーダル処理能力を持ち、音声コマンドに応答し、カメラを通じて周囲の物体やシーンを理解できる。2025年のI/Oでは、ユーザーからの明示的な指示なしに自律的に行動できる「プロアクティブ」な能力が追加された。
Project Mariner:
Google DeepMindが開発したブラウザを使用するAIエージェント。情報収集、予約、購入など最大10個のタスクを自動的に実行できる。Google AI Ultraサブスクライバーが利用可能。
【関連サイト】
Google Gemini(外部)Googleの最新AIアシスタント。テキスト、画像、音声を理解し、様々なタスクをサポートする会話型AI。
Google AI(外部)GoogleのAI研究と製品に関する公式サイト。最新の技術開発や倫理的アプローチについての情報を提供。
Google DeepMind(外部)Googleの先端AI研究部門。Project AstraやProject Marinerなどの革新的なAI技術を開発している。
Google Search AI Mode(外部)GoogleのAI Mode検索機能に関する公式ブログ。機能の詳細や今後の展開について説明している。