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CISA人員削減の真相 – 米国サイバーセキュリティ体制の現状と課題

CISA人員削減の真相 - 米国サイバーセキュリティ体制の現状と課題 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-05 09:55 by admin

米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)において、大規模な人員削減が実施された。この削減はトランプ政権下で進められている。

CISAの広報担当者は、これらの人員削減は「従業員の解雇ではなく、契約の問題」であるとし、「すべての契約を見直して、新政権の優先事項に合致していることを確認している」と説明している。

解雇された職員の中には、国の重要インフラを外国や国内のサイバー攻撃から保護する任務を負っていた優秀な人材や、高給の民間企業の仕事を辞めて連邦政府に加わった元民間部門の労働者、国土安全保障省の革新的な採用プログラム「サイバー人材管理システム」を通じて採用された職員、最高機密の安全保障許可を持つアナリストなどが含まれていた。

CISAの元サイバーセントリープログラム責任者であるケリー・ショー氏は、「CISAの人員の半分を削減すれば、我々の能力に壊滅的な打撃を与えるだろう」と懸念を表明している。

from:CISA Layoffs Are a Momentary Disruption, Not a Threat

【編集部解説】

米国のサイバーセキュリティ体制に大きな変化が起きています。今回のCISAの人員削減は、単なる政府機関の縮小にとどまらず、国家安全保障の根幹に関わる重要な問題です。

注目すべきは、解雇された人材の質です。彼らの多くは「サイバー人材管理システム(CTMS)」を通じて採用された高度な専門性を持つ人材でした。CTMSは民間企業並みの高給で優秀なサイバーセキュリティ専門家を政府に招き入れるための革新的なプログラムです。

CISAの役割と位置づけについて、John Spencer-Taylor氏の解説記事では、CISAは米国のサイバーセキュリティ活動の中核ではなく、FBI、NSA、エネルギー省、保健福祉省など多くの機関がサイバー防衛の役割を担っていると指摘しています。しかし、CISAには他の機関が担っていない「攻撃後の修復支援」という重要な役割があります。

この視点は興味深いものの、現実にはCISAの役割は年々拡大しており、政府ネットワークの防衛だけでなく、民間企業や州政府の支援、安全なソフトウェアの促進、国際パートナーとの協力など多岐にわたっています。特に中小企業や地方自治体など、独自のサイバーセキュリティ体制を構築するリソースが限られた組織にとって、CISAの支援は不可欠です。

サイバーセキュリティの世界では「人材」が最も重要な資源です。高度な専門知識と経験を持つ人材の育成には長い時間がかかります。一度失った人材を取り戻すのは容易ではなく、組織内の混乱や士気の低下といった目に見えない損害は簡単には回復しません。

日本の読者にとって、この問題はどのような意味を持つのでしょうか。米国のサイバーセキュリティ体制の弱体化は、同盟国である日本の安全保障にも直接影響します。サイバー空間では国境がなく、米国のインフラや企業を標的にした攻撃の手法やツールが、日本に対しても使用される可能性があるからです。

さらに、日本も深刻なサイバーセキュリティ人材不足に直面しています。米国の事例は、高度な専門人材の確保と維持がいかに重要か、そして政治的な判断が専門機関の機能にどのような影響を与えるかを示す教訓となるでしょう。

【用語解説】

CISA(サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁)
米国国土安全保障省の下部組織で、国家のサイバーセキュリティと重要インフラの保護を担当する機関。2018年に設立され、サイバー攻撃の防止、脅威情報の共有、インフラのセキュリティ対策の指導などを行っている。

レッドチーム
組織のセキュリティを評価するために、実際の攻撃者の手法を模倣してサイバー攻撃シミュレーションを行うチーム。防御側の弱点を発見し、改善するために重要な役割を果たす。

サイバー人材管理システム(CTMS)
米国政府が優秀なサイバーセキュリティ専門家を採用・維持するために導入した特別な人事制度。民間企業並みの高給で人材を確保することを目的としている。

修復支援
サイバー攻撃を受けた組織が、システムやデータを回復し、通常業務に戻るための技術的・実務的な支援のこと。CISAの重要な役割の一つである。

【参考リンク】

CISA公式サイト(外部)
米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁の公式サイト。脅威情報や対策ガイドラインを提供。

NSA公式サイト(外部)
米国の情報機関で、外国のシグナルインテリジェンス収集とサイバーセキュリティを担当。

FBI公式サイト(外部)
米国の連邦法執行機関。テロリズム、サイバー犯罪、ホワイトカラー犯罪などの捜査を担当。

【編集部後記】

みなさん、サイバーセキュリティについて考えたことはありますか?スマートフォンやパソコンを使う私たちの日常生活も、実はサイバー空間の一部なのです。今回のCISAの人員削減のニュースは、私たちにも無関係ではありません。自分の情報を守るために、どんな対策をしていますか?パスワードの管理や、不審なメールの扱いなど、ちょっとした心がけで大きな違いが生まれます。一緒にサイバーセキュリティについて学び、考えていきませんか?

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TaTsu
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