Last Updated on 2025-06-21 18:40 by admin
プライバシー重視の検索エンジンDuckDuckGoは2025年6月19日、同社ブラウザに搭載されているScam Blocker(詐欺ブロッカー)機能を拡張したと発表した。
従来のフィッシングサイト、マルウェア、一般的なオンライン詐欺に加え、偽の仮想通貨取引所、詐欺的なEコマースストアフロント、スケアウェア(偽のウイルス警告サイト)もブロック対象に追加された。米国連邦取引委員会によると、2024年に消費者が詐欺により失った金額は約125億ドルで、2023年から25%増加した。オンラインショッピング詐欺は2番目に多く報告された詐欺タイプである。
Scam Blockerは独立したサイバーセキュリティ企業Netcraftから悪意のあるサイトURLのリストを取得し、20分ごとに更新する。このリストはユーザーのデバイスにローカル保存され、匿名化ハッシュソリューションによりブラウジングの匿名性を維持する。機能はDuckDuckGoのモバイル・デスクトップブラウザで無料提供され、デフォルトで有効になっている。
From:DuckDuckGo Can Now Warn You About Fake Crypto Exchanges and Other Online Scams
【編集部解説】
DuckDuckGoのScam Blocker機能拡張は、プライバシー保護と詐欺対策の両立という、現代のインターネット利用における重要な課題に対する一つの解答と言えます。
従来のブラウザセキュリティ機能は、GoogleのSafe Browsingのように中央集権的なシステムに依存し、ユーザーの閲覧データが第三者に送信される仕組みでした。DuckDuckGoは独自のローカル処理方式を採用することで、この問題を解決しています。
特に注目すべきは、偽の仮想通貨取引所への対策強化です。暗号資産市場の拡大に伴い、偽の取引プラットフォームによる被害が急増しており、2024年の詐欺被害総額125億ドルの一部を占めています。この機能により、技術リテラシーの高いユーザーでも騙されやすい巧妙な偽サイトから保護されることになります。
技術的な仕組みも興味深い点です。Netcraftからの脅威情報を20分間隔で更新し、デバイス内でローカル処理を行う方式は、リアルタイム性とプライバシー保護のバランスを取った設計となっています。匿名化ハッシュソリューションにより、万が一サーバーとの通信が発生しても、ユーザーの閲覧履歴は保護されます。
スケアウェア対策の追加も重要な進歩です。「デバイスがウイルスに感染している」という偽の警告で不安を煽り、偽のセキュリティソフトの購入や偽のテクニカルサポートへの連絡を促す手口は、特に技術に詳しくないユーザーにとって深刻な脅威となっています。
この機能拡張は、プライバシー重視のユーザー層にとって重要な進歩ですが、詐欺の手口は日々進化しており、技術的対策だけでは限界があることも理解しておく必要があります。最終的には、ユーザー自身の判断力と組み合わせることで、より安全なインターネット利用が実現されるでしょう。
Privacy Pro購読者への追加メリットも、同社のビジネスモデル拡張戦略の一環として注目されます。無料機能で基本的な保護を提供しつつ、有料サービスでより包括的な保護を提供する階層化されたアプローチは、他のプライバシー重視企業にも影響を与える可能性があります。
【用語解説】
Scam Blocker(詐欺ブロッカー)
DuckDuckGoが独自開発したブラウザ内蔵の詐欺サイト検出・ブロック機能。フィッシングサイト、マルウェア配布サイト、偽の仮想通貨取引所、スケアウェアなどを事前に検出し、ユーザーがアクセスする前に警告を表示する。
スケアウェア
「ウイルスに感染している」などの偽の警告を表示し、ユーザーの不安を煽って偽のセキュリティソフトを購入させたり、偽のテクニカルサポートに連絡させたりする詐欺手法。
マルバタイジング
正規の広告ネットワークに悪意のある広告を配信し、ユーザーがクリックしなくても自動的にマルウェアをダウンロードさせる攻撃手法。
匿名化ハッシュソリューション
データを一方向の暗号化処理により変換し、元のデータを復元できない形にする技術。DuckDuckGoではユーザーの閲覧履歴を保護するために使用される。
【参考リンク】
DuckDuckGo公式サイト(外部)
プライバシー重視の検索エンジンとブラウザを提供。ユーザーの追跡を行わず、検索履歴を保存しない方針で運営されている。
Netcraft公式サイト(外部)
英国に本社を置く独立系サイバーセキュリティ企業。フィッシングサイトや悪意のあるウェブサイトの検出・分析を専門とする。
【参考記事】
DuckDuckGo scam blocker detects fake stores, crypto sites, virus alerts, more(外部)
Apple関連メディアによるmacOS・iOS向けブラウザでの機能実装について詳細に報じた記事。
DuckDuckGo’s browser now protects you from fake crypto exchanges and scareware(外部)
Engadgetによる詳細レポート。Privacy Pro購読者向けの月額料金や追加機能について具体的に報じている。
DuckDuckGo’s scam blocker now covers fake ecommerce sites and more(外部)
The Vergeによる機能拡張の解説記事。技術的な仕組みやユーザー体験について詳しく説明している。
New FTC Data Show a Big Jump in Reported Losses to Fraud to $12.5 Billion in 2024(外部)
FTCによる2024年詐欺被害統計の公式発表。125億ドルの被害額と25%増加の詳細データを提供している。
Cybercrime detection company Netcraft raises $100M to drive growth(外部)
Netcraftの1億ドル資金調達と事業拡大について報じた記事。同社の技術力と市場での地位について詳述している。
【編集部後記】
プライバシーと利便性の両立は、私たちが日々直面する現実的な課題ですね。DuckDuckGoの取り組みを見ていると、技術的な解決策がどこまで進化できるのか興味深く感じます。
皆さんは普段、ブラウザのセキュリティ機能をどの程度意識して使われていますか?また、完全なプライバシー保護と引き換えに、多少の利便性を犠牲にすることについてはいかがお考えでしょうか?このような技術の進歩が、私たちのデジタルライフをより安全で快適なものにしてくれる日が来るのか、一緒に見守っていきたいと思います。