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InteRecon:MITが開発した思い出をインタラクティブに保存するミックスドリアリティ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-08 12:15 by admin

MITのコンピュータサイエンス・人工知能研究所(CSAIL)の研究者たちが、現実世界のオブジェクトをミックスドリアリティ環境でインタラクティブに再現できる「InteRecon(インテレコン)」プログラムを開発した。この技術は2025年4月7日にMITのニュースサイトで発表された。

InteReconは、iPhoneアプリを使って物理的なアイテムを3回スキャンし、その3Dモデルをミックスドリアリティインターフェースにインポートする。ユーザーはHoloLens 2やQuestなどのヘッドセットを通じて、モデルの特定部分をインタラクティブに動かすことができる。例えば、人形の腕や頭の動き、ビンテージテレビでのビデオ再生など、物理的世界のインタラクション機能を再現することが可能だ。

この研究の筆頭著者は、CSAILの客員研究員であり香港科技大学の博士課程学生であるジス・リー氏。共著者には、MITの電気工学・コンピュータサイエンス博士課程学生のファラズ・ファルキ氏などが名を連ねている。

研究チームは、2025年のACM CHI(ヒューマンファクターズ・イン・コンピューティングシステムズ)会議でInteReconを発表する予定である。

研究者たちは、InteReconが教育、ヘルスケア、文化展示などの分野に革新をもたらす可能性があると考えている。今後の展開として、リー氏はより大きな物理的環境のデジタルツイン作成に向けた自動的なパイプラインの開発に取り組み、ファルキ氏は3Dプリンターを通じて失われたアイテムを物理的に再現するアプローチの構築を目指している。

この研究は、香港科技大学(広州)のAPEXラボとMITのHCIエンジニアリンググループの協力によってサポートされている。

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【編集部解説】

現実とバーチャルの境界を超える「InteRecon」の可能性
皆さん、MITが開発した「InteRecon」は単なる3Dスキャン技術ではありません。これは私たちの思い出や大切なものをデジタル世界に「機能ごと」持ち込む革新的な技術なのです。

従来の3Dスキャン技術では物体の外観を再現することはできましたが、その「動き」や「機能」までは再現できませんでした。例えば、お気に入りの首振り人形をスキャンしても、デジタル空間では首が動かないのです。InteReconはこの課題を解決し、物理的な特性や機能までもミックスドリアリティ空間に再現します。

この技術はMIT、香港科技大学、ETHチューリッヒの研究者たちによる共同開発であり、単に見た目だけでなく、機能までも再現する「Interactive Digital Item(IDI)」という概念に基づいています。

使い方は比較的シンプルです。まずiPhoneアプリで対象物を3回スキャンし、その3DモデルをMeta QuestなどのMRヘッドセットを通じてInteReconインターフェースにインポートします。そこで物体の各部分を分割し、それぞれにどのような動きをさせるかをプログラムできるのです。

特に注目すべきは電子機器の再現能力です。例えば古いiPod Shuffleをスキャンし、実際に機能するボタンや音楽再生機能までMR空間で再現できます。また、おもちゃのテレビセットであれば、チャンネル切り替えのつまみの動きや、画面上での動画再生まで可能にします。

この技術がもたらす影響は計り知れません。個人的な思い出の保存という側面だけでなく、教育、医療、文化展示など様々な分野での応用が期待されています。例えば、博物館では展示物をよりインタラクティブに体験できるようになり、医学教育では複雑な手術手順を視覚的に学ぶことができるようになるでしょう。

研究チームは今後、より精密な物理シミュレーションエンジンへのアップグレードや、大規模言語モデルと生成AIの統合を計画しています。これにより、言葉で説明するだけで失われた品物を3Dモデルとして再現することも可能になるかもしれません。

一方で、このような技術には潜在的な課題もあります。プライバシーの問題や、デジタルとリアルの境界があいまいになることによる心理的影響、さらには知的財産権の問題なども考慮する必要があるでしょう。

MITのCSAILは別途、AIリスクリポジトリという700以上のAI関連リスクをカタログ化したデータベースも公開しており、新技術の社会的・倫理的影響に対する関心の高さがうかがえます。

このような技術の進化は、私たちの記憶や思い出の保存方法、そして現実とデジタルの関係性を根本から変える可能性を秘めています。

【用語解説】

ミックスドリアリティ(Mixed Reality):現実世界とバーチャル世界を融合させる技術。ARがデジタル情報を現実に重ねるのに対し、MRは現実とデジタルが相互に影響し合う環境を作り出す。

デジタルツイン:実世界の物体やプロセスを、データに基づいて仮想空間に再現したもの。特定の頻度と忠実度で同期的に相互作用する。

インタラクティブデジタルアイテム(IDI):InteReconが作成する、外観だけでなく機能性も再現されたデジタルオブジェクト。

セグメンテーション:3Dモデルを機能的な部分ごとに分割する作業。例えば人形の腕や頭など、動かしたい部分を個別に指定する工程。

【参考リンク】

MIT CSAIL公式サイト(外部)MITのコンピュータサイエンス・人工知能研究所の公式サイト。最新の研究成果や発表が掲載されている。

MIT News(外部)MITの公式ニュースサイト。InteReconの発表を含む最新の研究成果が公開されている。

ACM CHI Conference(外部)InteReconが発表される人間とコンピュータの相互作用に関する国際会議の公式サイト。

HCI Engineering Group at MIT(外部)InteRecon開発に関わったステファニー・ミュラー教授率いる研究グループのサイト。

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乗杉 海
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