国際エネルギー機関(IEA)は2025年2月14日、2027年までの世界の電力需要予測に関する報告書を発表した。2025年から2027年までの3年間で、世界全体で3,500テラワット時(TWh)の追加発電能力が必要となる。これは世界第5位の電力消費国である日本の年間消費量(約1,000 TWh)の3.5倍に相当する規模だ。
需要増加の主な要因として、新興国・発展途上国におけるエアコン普及の拡大(特にインド)、欧州連合(EU)におけるヒートポンプと電気自動車の普及、世界的なデータセンターの増加とAI関連施設の電力需要、半導体やEV充電器、エアコン部品などの産業生産拡大が挙げられる。
2025年の世界の発電見通しでは、再生可能エネルギーが世界の発電量の3分の1以上を占め、石炭火力発電を上回る見込みだ。2027年までの新規需要の95%を原子力と再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力)で賄う計画となっている。
from:Our world faces ‘unprecedented’ spike in electricity demand
【編集部解説】
まず注目すべきは、このレポートが「新しい電力の時代(Age of Electricity)」の到来を宣言している点です。これは単なるキャッチフレーズではありません。世界経済の基盤が電力を中心に再構築されていく大きな転換点に私たちは立っているのです。
特筆すべきは、この需要増加の質的な変化です。従来の産業用電力需要に加えて、AIやデータセンター、電気自動車、ヒートポンプなど、新しいテクノロジーによる需要が急速に拡大しています。これは、私たちの社会がデジタル化とクリーンエネルギーへの移行を同時に進めている証左といえるでしょう。
中国の動向は特に興味深いものがあります。2024年に7%の需要増を記録し、2027年まで年平均6%の成長が予測されています。注目すべきは、中国の産業用ロボットの導入数が2020年から2倍になり、2024年には200万台に達した点です。これは、製造業のデジタル化と自動化が急速に進展していることを示しています。
一方で、この急激な需要増加には課題も存在します。気候変動による異常気象は電力システムの安定性を脅かす可能性があり、再生可能エネルギーへの依存度が高まる中で、システムの柔軟性確保が重要な課題となっています。
しかし、明るい展望もあります。2025年以降、原子力発電が新記録を更新し続けると予測されており、再生可能エネルギーと合わせて、新規需要の95%をカバーできる見込みです。これは、持続可能な電力システムへの移行が着実に進んでいることを示しています。
私たち読者にとって、この変化は新たなビジネスチャンスと捉えることができます。エネルギー効率化技術、電力需要管理システム、蓄電技術など、新しい市場が急速に拡大していくことが予想されます。
テクノロジーの観点から見た影響
特に注目したいのは、データセンターの急増がもたらす影響です。AIブームを背景に、予想を上回るペースで需要が伸びています。これは、デジタルインフラの整備が従来の想定を超えて加速していることを示唆しています。
また、産業のデジタル化と電化が同時に進行している点も重要です。特に中国では、太陽光パネルやEVバッテリーの製造など、新エネルギー関連製品の生産が電力需要を押し上げています。これは、グリーン産業の成長が新たな電力需要を生み出すという、興味深い現象を示しています。