Last Updated on 2025-02-15 14:27 by admin
Nature Communicationsは2025年2月、京都大学のBenjamin C. McLellan准教授らの研究チームによる「グローバルな水素経済における鉱物資源需要」の研究を発表しました。
主な研究結果
2050年の水素需要予測は500Mtpa(現在の24倍)に達し、必要な白金量は約5,800トン(現在の年間生産量の31年分)とされています。
重要鉱物の具体的な用途と効率目標:
電解槽(AE/PEM:45 kWh/kgH2、SOEC:40 kWh/kgH2):白金、イリジウム
燃料電池:白金触媒
水素圧縮装置:希土類永久磁石
重要鉱物の生産国の偏在:
白金族金属:南アフリカが世界生産の91%
イリジウム:南アフリカが世界生産の85%
希土類元素:中国が世界生産の60%
研究チームの提言
重要鉱物のサプライチェーン多様化
リサイクル・回収技術への投資
重要鉱物依存度の低い代替技術開発
水素戦略における鉱物資源の利用可能性の考慮
from:https://techxplore.com/news/2025-02-quantifying-hydrogen-economy-small-critical.html
【編集部解説】
水素エネルギーは世界的な脱炭素化の切り札として期待されていますが、その実現には新たな資源制約という課題が存在することが明らかになりました。
特に注目すべきは、水素製造装置の心臓部となる電解槽技術です。アルカリ水電解、PEM水電解、固体酸化物形電解の3方式があり、それぞれが異なる重要鉱物を必要とします。2050年までに必要となる白金量は現在の年間生産量の31年分に相当し、これは深刻な供給制約となる可能性があります。
水素技術のサプライチェーンは、特定国への依存度が極めて高いことも課題です。白金族金属の91%を南アフリカが、希土類元素の60%を中国が生産しており、地政学的リスクが懸念されます。
一方で、水素経済は直接的な電化と比較して全般的に鉱物使用量が少ないという利点もあります。この利点を活かしつつ、リサイクル技術の確立や代替材料の開発を進めることが、持続可能な水素経済の実現には不可欠です。
【用語解説】
電解槽の3方式
アルカリ水電解(AE):最も成熟した技術、コスト低
PEM水電解:高効率だが白金族金属が必要
固体酸化物形電解(SOEC):高温動作、高効率
白金族金属(PGM)
白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの6元素。触媒として優れた特性を持つ。