Last Updated on 2025-05-12 21:59 by admin
中国内モンゴル自治区オルドス砂漠で史上最大規模とされる3,000万トンのウラン鉱床が発見された。
この発見は2025年1月に中国地質調査局(CGS)によって行われ、5月10日に再び報じられた。オルドス盆地の景川地域で発見されたこの鉱床は、風成砂岩(エオリアン・サンドストーン)でウランが発見された世界初のケースとなり、中国のエネルギー戦略と世界のウラン市場に大きな影響を与える可能性がある。
オルドス砂漠は従来から天然ガスや石炭などの資源が豊富な地域として知られていたが、今回のウラン鉱床の発見は予想外のものだった。
中国は現在、29基の商業用原子炉を建設中であり、すでに56基が稼働している。増加するエネルギー需要に対応するため原子力発電インフラを急速に拡大している。北京ゴールド・アンド・フォレックス・フォーチュン・インベストメント・マネジメントのチーフストラテジスト、趙向斌氏によれば、この発見は中国の長期的なエネルギー安全保障にとって重要な意味を持つ。
中国地質調査局のウラン主任科学者である金若石氏は、今回の発見が中国の他の地域、特にタリム盆地、ジュンガル盆地、松遼盆地などの風成砂岩が広く分布している地域での更なる大規模鉱床発見につながる可能性があると述べている。
一方で、この発見は環境面での課題も提示している。水資源が乏しい厳しい環境下でのウラン採掘は、生態系への影響や放射性廃棄物の管理など、慎重な計画と監視が必要となる。
従来、世界のウラン市場はカザフスタン、カナダ、オーストラリアなどの国々が75%以上を占めてきたが、中国が主要なウラン生産国として市場に参入することで、現在のサプライチェーンと価格構造に変化をもたらす可能性がある。
References:
China Discovers the Largest Uranium Deposit Ever—30 Million Ton Boost to Global Power
【編集部解説】
今回の中国オルドス砂漠での「3,000万トン」というウラン鉱床発見のニュースについて、複数の情報源を確認したところ、いくつかの重要な点が明らかになりました。
まず、この発見は2025年1月に行われており、5月の記事は最新の報道というよりは、1月の発見を改めて取り上げたものです。中国地質調査局(CGS)が1月10日頃に公式発表しており、その後、中国デイリーなどの国営メディアが1月中旬から下旬にかけて報じています。
また、「3,000万トン」という数字については注意が必要です。一般的にウラン鉱床の規模は「トンU3O8(三酸化ウラン)」や「ポンド」で表されることが多く、この数値が純ウラン量なのか鉱石全体の量なのかが不明確です。この規模が事実であれば確かに世界最大級ですが、中国政府の公式発表では「超大型(super-large)」という表現にとどまっており、具体的な数量は明示されていません。
この発見の重要性は、風成砂岩(エオリアン・サンドストーン)という地質構造でウランが発見された世界初のケースである点にあります。これは単に中国のエネルギー安全保障に貢献するだけでなく、世界的なウラン探査の新たな方向性を示す科学的な意義も持っています。
中国の原子力発電の現状については、最新の情報によれば、中国は29基の商業用原子炉を建設中であり、すでに56基が稼働しています。これは他のどの国よりも多い数字です。
エネルギー安全保障の観点から見ると、この発見は中国にとって戦略的に非常に重要です。世界のウラン市場はカザフスタン、カナダ、オーストラリアが75%以上を占めており、中国は自国のエネルギー需要を満たすために安定した国内供給源を確保する必要がありました。特に地政学的リスクが高まる中、資源の自給率向上は国家戦略として重要性を増しています。
この発見がもたらす影響として、世界のウラン市場の再編が考えられます。中国が主要なウラン生産国になれば、少なくとも一時的に世界のウラン価格が下がる可能性があります。2025年のウラン需要は1億9,000万〜2億ポンドに達すると予測される一方、一次生産は6,000万〜7,000万ポンド不足すると見られていましたが、この新たな供給源によって需給バランスが変化するかもしれません。
環境面では、砂漠地域でのウラン採掘には特有の課題があります。水資源が乏しい地域での採掘活動は、地下水汚染のリスクを高める可能性があります。また、放射性廃棄物の管理も重要な課題となるでしょう。中国では放射性廃棄物処分のための研究所建設も進められており、総合的な対策が求められています。
長期的には、この発見は中国のクリーンエネルギー戦略全体を加速させる可能性があります。原子力発電は二酸化炭素排出量が少なく、再生可能エネルギーと組み合わせることで、中国の脱炭素化目標達成に貢献することが期待されています。
最後に、この発見の地政学的意義も見逃せません。エネルギー資源の自給率向上は、国際関係における中国の交渉力を高める可能性があります。特にアメリカからの輸入依存度を下げることができれば、エネルギー分野における自立性が高まり、国際政治における中国の立場にも影響を与えるでしょう。
【用語解説】
ウラン鉱床:
ウラン鉱物を産する鉱床のこと。ウランは酸化環境で水に溶けて移動しやすいため、鉱床の成因や鉱石の産状は変化に富んでいる。火成活動に関わる鉱床、堆積性鉱床、地表水や地下水に溶解して移動したウランが再沈殿した鉱床の3種類に大別される。
風成砂岩(エオリアン・サンドストーン):
風によって運ばれた砂が堆積してできた砂岩のこと。今回の発見は、この地質構造でウランが発見された世界初のケースである。
オルドス盆地:
中国北部の内モンゴル自治区に位置する盆地で、石油や天然ガスなどの資源が豊富な地域として知られている。「エネルギーの宝庫」とも呼ばれる。
中国地質調査局(CGS):
中国自然資源部傘下の機関で、地質調査や資源探査を担当している。1999年から地質大調査を実施し、多くの科学技術成果を上げている。
ウラン濃縮:
天然ウランに含まれる核分裂しやすいウラン235の割合を0.7%から3~5%程度に高める工程。原子力発電の燃料として使用するために必要な処理である。
【参考リンク】
中国地質調査局(China Geological Survey)(外部)中国の地質調査や資源探査を担当する政府機関。今回のウラン鉱床発見を主導した組織である。
日本原燃株式会社(外部)
日本におけるウラン濃縮事業を行う企業。ウラン採掘から発電までの流れを解説している。
【参考動画】
【編集部後記】
エネルギー資源の発見は世界の勢力図を変えることがあります。この中国のウラン発見は、あなたの生活にどう影響するでしょうか?日本のエネルギー戦略も見直しの時期かもしれません。原子力発電の未来について考えたことはありますか?再生可能エネルギーとの組み合わせ、資源安全保障の観点から、私たちが選ぶべき道は何でしょう。SNSでぜひあなたの考えをシェアしてください。未来のエネルギーについて、一緒に考えていきましょう。