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Google、核融合スタートアップCFSから200MW電力購入契約 – 2030年代商業化目指す

Google、核融合スタートアップCFSから200MW電力購入契約 - 2030年代商業化目指す - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-07-01 13:30 by admin

Googleは2025年6月30日、マサチューセッツ州を拠点とする核融合スタートアップCommonwealth Fusion Systems(CFS)から200メガワットの核融合エネルギーを購入する契約を締結したと発表した。

CFSがバージニア州チェスターフィールド郡で建設予定のARC核融合発電所は2030年代前半の稼働開始を目指し、総出力400メガワットを予定している。

Googleは2021年にCFSの18億ドル資金調達に参加しており、今回さらなる投資を行うが金額は非公表である。核融合発電の商業利用契約は2例目で、2023年にMicrosoftがHelionと50メガワットの契約を締結している。

CFSはトカマク型原子炉技術を採用し、高温超伝導磁石を使用してプラズマを閉じ込める方式を採用している。これまで80年以上の研究開発が行われてきた核融合技術だが、投入エネルギーを上回るエネルギー生産を達成した商業炉は存在していない。

From: 文献リンクGoogle to buy power from fusion energy startup Commonwealth – if they can ever make it work

【編集部解説】

今回のGoogleとCommonwealth Fusion Systems(CFS)の契約は、核融合エネルギーの商業化において極めて重要な節目となります。これまで「30年後には実現する」と言われ続けてきた核融合発電が、ついに具体的なタイムラインと商業契約を伴って現実味を帯びてきました。

CFSが採用するトカマク型原子炉は、1950年代から研究されている確立された技術基盤の上に構築されています。しかし同社の革新性は、高温超伝導磁石技術にあります。この技術により、従来のトカマク炉よりもはるかにコンパクトで効率的な核融合炉の実現を目指しているのです。

注目すべきは、GoogleとMicrosoftという2大テック企業が相次いで核融合スタートアップと電力購入契約を締結している点です。AI開発競争の激化により、データセンターの電力需要は爆発的に増加しており、従来の再生可能エネルギーだけでは24時間365日の安定供給に限界があることが背景にあります。

ただし、現実的な課題も山積しています。CFSは実証炉「SPARC」の建設を進めていますが、これがネット・エネルギー・ポジティブ(投入エネルギーを上回るエネルギー生産)を達成できるかは未知数です。過去80年間、誰も商業的に成功した核融合炉を建設できていない現実があります。

規制面では、核融合発電所の安全基準や認可プロセスがまだ確立されていません。原子力規制委員会などの規制当局は、従来の核分裂炉とは根本的に異なる核融合技術に対する新たな法的枠組みを構築する必要があります。

長期的な視点では、核融合発電の成功は地政学的なエネルギー構造を根本から変える可能性を秘めています。化石燃料への依存から脱却し、事実上無限のクリーンエネルギーを実現できれば、気候変動対策の決定打となるでしょう。

しかし投資リスクも相当なものです。CFSの前回資金調達額18億ドルは核融合スタートアップとしては史上最高額ですが、商業化に失敗すれば巨額の損失となります。Googleのような巨大企業でさえ、この「ムーンショット」プロジェクトには慎重にならざるを得ないのが現状なのです。

【用語解説】

トカマク型原子炉
ドーナツ状(トーラス)の形状で、強力な磁場を使って超高温プラズマを閉じ込める核融合装置。1950年代にソ連で開発され、現在の核融合研究の主流となっている。

高温超伝導磁石(HTS)
従来の低温超伝導磁石よりも高い温度で動作し、より強力な磁場を生成できる磁石技術。CFSの核心技術で、小型化と高効率化を実現する。

ネット・エネルギー・ポジティブ
核融合反応で生成されるエネルギーが、反応を開始・維持するために投入されるエネルギーを上回る状態。商業的な核融合発電の実現に必要な条件。

磁場反転配置(FRC)
Helionが採用する核融合方式で、プラズマを自己安定的なトーラス状に閉じ込める技術。トカマクとは異なるアプローチ。

小型モジュール炉(SMR)
出力300MW以下の小型原子炉。工場で製造してモジュール化することで建設期間短縮とコスト削減を図る次世代原子力技術。

国立点火施設(NIF)
米国ローレンス・リバモア国立研究所にあるレーザー核融合実験施設。2022年に世界初のネット・エネルギー・ポジティブを達成した。

【参考リンク】

Commonwealth Fusion Systems(外部)
MIT発の核融合スタートアップ。高温超伝導磁石技術を活用したトカマク型原子炉を開発中

Google Sustainability(外部)
Googleの持続可能エネルギー戦略。2030年までの24時間365日カーボンフリー電力達成を目標

Helion Energy(外部)
ワシントン州を拠点とする核融合スタートアップ。磁場反転配置技術を採用

【参考記事】

Google inks its first fusion power deal with Commonwealth Fusion Systems(外部)
TechCrunchによる詳細報道。CFSの技術と実証炉SPARCの開発状況について解説

Google strikes deal to buy fusion power from MIT spinoff Commonwealth(外部)
ロイターによる報道。MIT発スピンアウトとしてのCFSの背景と商業プラント建設計画

Google just bought 200 megawatts of fusion energy that doesn’t exist yet(外部)
CNNによる報道。核融合技術の課題とテック企業のクリーンエネルギー需要増加の背景

【編集部後記】

核融合発電がついに「夢物語」から「投資対象」へと変わりつつある今、私たちはエネルギー革命の目撃者になっているのかもしれません。

GoogleやMicrosoftといった巨大企業が相次いで核融合スタートアップと契約を結ぶ背景には、AI時代の膨大な電力需要があります。みなさんは、もし核融合発電が実用化されたら、私たちの生活や社会はどのように変わると思いますか?

また、これほどリスクの高い技術に巨額投資する企業の判断をどう評価されるでしょうか?ぜひコメント欄で、未来のエネルギー社会についてのご意見をお聞かせください。

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TaTsu
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