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6月23日【今日は何の日?】「乳酸菌の日」 あの小さな菌が、まさか宇宙まで?

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語呂合わせから始まった、思いがけない大冒険

毎月23日は「乳酸菌の日」。「に(2)ゅうさん(3)」という、なんともストレートな語呂合わせが由来です。カゴメ株式会社が制定したこの記念日、一見すると企業PRの一環のように思えますが…実は、とんでもなく奥が深いんです。

なんと、この小さな微生物たちの物語は、奈良時代の食卓から宇宙ステーションまで続く壮大なドラマだったのです。今日は一緒に、この驚きの旅路を辿ってみませんか?

きっと明日から、ヨーグルトや漬物を見る目が変わるはずです。

実は身近すぎて気づかなかった、日本人と乳酸菌の深い関係

「蘇(そ)」って知ってます?古代の謎めいた健康食

「日本最古のチーズ」なんて呼ばれることもある「蘇」。奈良・平安時代の貴族たちが愛した高級食品です。牛乳を長時間煮詰めて作る、なんだかプリンの素みたいな食べ物でした。

でも実は、これって発酵食品じゃないんです。乳酸菌による発酵の記録が見当たらないので、正確には「日本最古の濃縮ミルク」といったところでしょうか。貴族の健康志向は立派でしたが、乳酸菌との真のお付き合いは、もっと身近なところで始まっていました。

本当の主役は、あの「漬物」だった!

日本の高温多湿な気候。食べ物が腐りやすくて大変…と思いきや、これが逆に日本を「発酵大国」に押し上げたんです。まさに「ピンチはチャンス」の典型例ですね。

奈良時代の木簡にも記録が残る瓜の塩漬け。これが、私たちと乳酸菌の本格的なパートナーシップの始まりでした。野菜についていた野生の乳酸菌が、塩によって活性化され、野菜の糖分をエサに乳酸を作り出す。その乳酸が食品を酸性にして、悪い菌をシャットアウト。

なんて賢いシステムでしょう!しかも、このプロセスで生まれる独特の酸味や旨味。これ、現代の私たちが「美味しい」と感じる漬物の味そのものなんです。

日本酒にも隠れていた、300年先取りの技術

驚くのはまだ早いです。日本酒造りでも、乳酸菌は大活躍していました。酒母(もと)の中で乳酸を作って、雑菌から醪(もろみ)を守る。そして「火入れ」という加熱処理。

これ、フランスのパスツールが低温殺菌法を発見する300年も前から、日本の酒蔵で行われていたんです。科学の理屈は分からなくても、経験と勘で素晴らしい技術を生み出していた日本人。なんだか誇らしくなりませんか?

腸が「第二の脳」って本当?最新科学が解き明かす驚きの真実

メチニコフの大発見:ブルガリアのおじいちゃんたちの秘密

20世紀初頭、ロシアの学者メチニコフがブルガリアを訪れて気づいたこと。「あれ?この地域、長生きする人が多くない?」その理由を探ると、毎日ヨーグルトを食べている習慣にたどり着きました。

これが「プロバイオティクス」概念の始まり。細菌=悪者という常識をひっくり返す、革命的な発見でした。

「腹が立つ」「腹黒い」…日本語が教えてくれていた真実

最近の研究で分かってきたのが「脳腸相関」。脳と腸が、神経やホルモンを通じて密に連絡を取り合っているという、まさに驚愕の事実です。

考えてみれば、「腹が立つ」「腹を決める」「腹黒い」…日本人は昔から、心と腹(腸)のつながりを感じ取っていたんですね。言葉って本当に興味深いです!

100兆個もの腸内細菌が、ただそこにいるだけじゃない。神経伝達物質を作ったり、免疫システムを調整したり、時には私たちの気分にまで影響を与えている。「第二の脳」と呼ばれる理由が、よく分かります。

うつ病と腸内細菌の意外な関係

さらに驚くのは、うつ病や不安障害の人では腸内細菌の多様性が低下しているという研究結果。逆に、特定の乳酸菌を摂取することで、ストレスホルモンが減って気分が改善される可能性も示されています。

「医食同源」という言葉がありますが、これほど文字通りの意味で実証される日が来るとは…!

ついに宇宙へ!人類最後のフロンティアで活躍する小さなヒーロー

宇宙は人体にとって究極のブラック企業

国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在。聞いただけでもロマンがありますが、人体にとっては過酷すぎる環境です。無重力、宇宙放射線、閉鎖空間…これらが組み合わさると、まさに「加速老化」が起こってしまいます。

特に深刻なのが免疫機能の低下。JAXAと理化学研究所の研究で、無重力環境では免疫細胞を作る「胸腺」が萎縮してしまうことが分かりました。骨からはカルシウムがどんどん流出し、筋肉も衰えていく…。

これじゃあ、とても火星なんて目指せませんよね。

JAXAとヤクルトの夢のコラボレーション

そこで立ち上がったのが、JAXAとヤクルト本社の共同チーム。2014年、世界初の宇宙でのプロバイオティクス実験がスタートしました。

宇宙飛行士の金井宣茂さんや古川聡さんが、特別に開発された凍結乾燥カプセルを毎日摂取。中には「ラクトバチルス・パラカゼイ・シロタ株」が400億個以上!想像するだけで、お腹の中が賑やかになりそうです。

金井さんの言葉が印象的でした。「乳酸菌で腸の環境を整えれば、病気になりにくい体になる。これは宇宙飛行士の環境にぴったりで、地上に還元されれば医者いらずの健康社会にもつながる」

宇宙での実験が、地球の私たちの健康にも役立つ。これこそ、真のwin-winですね!

あなたの体から地球まで!広がる微生物パートナーシップ

「万人に効く」時代から「あなたに効く」時代へ

21世紀の健康管理キーワードは「パーソナライズ」。今や自宅で便サンプルを送るだけで、あなたの腸内環境を詳しく分析してくれるサービスがあります。

兄弟でも違う腸内細菌。だったら、一人ひとりに合った乳酸菌を見つけて、オーダーメイドのケアをしましょう、という時代に突入しました。なんだかSF映画みたいですが、これが今の現実なんです。

乳酸菌、今度は農業で大活躍!

人間の腸だけでなく、今度は「大地の腸」とも言える土壌でも、乳酸菌が活躍しています。土壌のpHを調整して病原菌を抑えたり、植物の栄養吸収を助けたり。

収穫量アップはもちろん、お米の味が良くなったり、野菜の旨味が増したりという嬉しい効果も。化学農薬に頼らない、持続可能な農業への貢献も期待されています。

腸内環境と土壌環境の相似性。考えてみると、どちらも「循環と再生の現場」という点で共通していますね。

小さな菌に秘められた、無限の可能性

語呂合わせから始まった「乳酸菌の日」。でも、その背景にはこんなにも壮大な物語が隠されていました。

奈良時代の漬物樽から、最新の宇宙ステーションまで。私たちの知らないところで、乳酸菌は黙々と働き続けてきました。そして今、その活躍の場は、個人の体質に合わせたオーダーメイド健康管理から、地球環境を守る農業技術まで、どんどん広がっています。

ヨーグルトを食べるとき、漬物を口にするとき、ちょっと思い出してください。あの小さな菌たちが、どれほど長い間、私たちと一緒に歩んできたかを。そして今も、私たちの健康と地球の未来のために、見えないところで頑張ってくれていることを。

毎月23日の「乳酸菌の日」は、そんな小さくて偉大なパートナーたちに「ありがとう」を伝える日なのかもしれませんね。

【参考記事】

文献リンク宇宙滞在による免疫機能低下の機構を解明-無重力環境が引き起こす胸腺の萎縮と人工重力による軽減

文献リンク株式会社ヤクルト本社とJAXAの国際宇宙ステーションを利用した共同研究の開始について

文献リンク日本の発酵食品 (PDF資料) 

文献リンク院長ひとりごと 2016年5月号 

文献リンク乳酸菌の土壌改良効果とは?農業での活用事例や効果について解説

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荒木 啓介
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