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眼科手術ロボット「ORYOM Platform」が125億円調達 ダヴィンチ創設者も投資参加

眼科手術ロボット「ORYOM Platform」が125億円調達 ダヴィンチ創設者も投資参加 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-27 06:59 by admin

イスラエルのForSight Robotics社は2025年6月24日、眼科手術支援ロボット開発のためのシリーズB資金調達ラウンドで1億2500万ドルを確保したと発表した。

同社が開発するORYOMプラットフォームは、AIアルゴリズム、コンピュータビジョン、マイクロメカニクスを活用した眼科手術ロボットで、白内障手術から開始し緑内障や網膜手術への拡大を予定している。人間の眼球の前眼部と後眼部の両方にアクセス可能で、2025年中にヒト臨床試験を開始する計画である。これまでに24名以上の眼科医が動物モデルで数百件の手術を完了している。

この計画はEclipseが主導し、Reiya Ventures、Adani Group、既存投資家が参加した。Intuitive Surgicalとダヴィンチ手術システムの創設者フレッド・モル博士も参加し、同社の総調達額は1億9500万ドルに達した。

同社は2020年にモシェ・ショハム教授、ダニエル・グロズマン博士、ジョセフ・ネイサン博士により設立され、従業員数は110名を超える。競合企業としてオランダのPreceyes Surgical System社があり、2019年にヨーロッパでCEマークを取得、2021年に米国のニューヨーク眼科耳鼻科病院マウントサイナイとの協力で緑内障手術に成功している。

From: 文献リンクForSight Robotics raises $125M for robotic cataract surgery

【編集部解説】

ForSight Roboticsの1億2500万ドル調達は、眼科手術の自動化という新たなフロンティアへの挑戦を象徴する出来事です。同社が開発するORYOMプラットフォームは、人間の手の限界を超えるサブミリメートル級の精度を実現し、これは従来の手術概念を根本から変える可能性を秘めています。

注目すべきは、Intuitive Surgicalの創設者フレッド・モル博士が投資に参加し、さらに取締役会にも加わっている点でしょう。ダヴィンチ手術システムで一般外科にロボット革命をもたらした同氏の参画は、眼科領域でも同様の変革が期待されていることを示唆しています。同社の戦略諮問委員会にはMAKO Surgical創設者のロニー・アボヴィッツ氏も参加しており、手術ロボット業界の重要人物が結集している状況です。

現在の眼科医療は深刻な人材不足に直面しています。世界人口100万人あたりの眼科医は31.7人、白内障外科医は14.1人に過ぎません。2035年までに眼科医は12%減少する一方、需要は24%増加すると予測されており、この需給ギャップは医療アクセスの格差を拡大させる恐れがあります。

特に深刻なのは白内障患者の治療格差です。世界で6億人以上が白内障に苦しんでいるにも関わらず、年間で治療を受けられるのは3000万人に過ぎません。米国でも年間400万件の白内障手術しか行われておらず、需要と供給の大きな乖離が存在します。

ORYOMプラットフォームの技術的優位性は、眼球内のあらゆる部位にアクセス可能な点にあります。前眼部の白内障手術から後眼部の網膜手術まで対応できる設計は、一つのプラットフォームで複数の眼疾患に対応できる汎用性を意味します。これまでに24名以上の眼科医が動物モデルで数百件の手術を完了しており、技術の実用性が証明されています。

同社は過去1年間で従業員数を倍増させ110名を超え、ISO 13485:2016認証も取得しました。これは医療機器の品質管理における重要な規制要件をクリアしたことを意味し、商用化への道筋が整いつつあることを示しています。

しかし、ロボット手術の普及には課題も存在します。高額な初期投資コストと専門的な訓練が必要な点は、導入の障壁となる可能性があります。また、2025年中に開始予定の臨床試験の結果次第では、実用化のタイムラインが変動する可能性もあります。

この技術革新は、外科医の身体的負担軽減と手術の標準化をもたらす一方で、医療従事者のスキル要件や医療費構造にも変化をもたらすでしょう。長期的には、高精度手術の普及により予防可能な失明の減少が期待されますが、技術格差による医療アクセスの不平等も懸念されます。

【用語解説】

ORYOM Platform
ForSight Roboticsが開発する世界初の眼科手術用ロボットプラットフォーム。AIアルゴリズム、コンピュータビジョン、マイクロメカニクスを組み合わせた高精度手術システムである。

シリーズB資金調達
スタートアップ企業の成長段階における2回目の大規模資金調達ラウンド。通常は製品開発の完了や市場拡大を目的とする。

CE Mark
欧州連合の安全基準に適合していることを示すマーク。医療機器がヨーロッパ市場で販売される際に必要な認証である。

ISO 13485:2016
医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格。医療機器の設計、開発、製造における品質管理の要求事項を定めている。

硝子体網膜手術
眼球内の硝子体や網膜に対する手術。網膜剥離や糖尿病網膜症などの治療に用いられる高度な眼科手術である。

前眼部・後眼部
眼球の解剖学的区分。前眼部は角膜から水晶体まで、後眼部は硝子体から網膜までの領域を指す。

【参考リンク】

ForSight Robotics公式サイト(外部)
イスラエルの眼科手術ロボット開発企業。ORYOM Platformの詳細情報や企業概要を掲載

Eclipse公式サイト(外部)
今回のシリーズB資金調達ラウンドを主導したベンチャーキャピタル

Intuitive Surgical(外部)
ダヴィンチ手術システムで知られる手術ロボットの世界的リーダー企業

【参考記事】

ForSight Robotics Secures $125M in Series B Funding(外部)
公式プレスリリース。投資家の詳細と今後の臨床試験計画について発表

ForSight Robotics raises $125M to trial cataract eye surgery platform(外部)
資金調達の背景と市場機会について分析。24名以上の眼科医による実績を報告

ForSight Robotics raises $125M Series B to advance AI(外部)
イスラエル現地メディアによる詳細報道。戦時下での資金調達成功について創設者インタビュー

【編集部後記】

眼科手術にロボットが参入する時代が、いよいよ現実のものとなってきました。私たちの多くが将来直面する可能性の高い白内障手術が、AIとロボティクスによってどう変わっていくのでしょうか。手術の精度向上は素晴らしい進歩ですが、一方で医療費や医師との関係性はどう変化するのか、気になるところです。皆さんは、ご自身やご家族の手術を機械に任せることについて、どのような想いをお持ちでしょうか。ぜひSNSで、率直なご意見をお聞かせください。

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TaTsu
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