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フロリダ大学「BMIは役立たず」発表、1980年代のBIA技術が現代医療の常識を覆す

フロリダ大学「BMIは役立たず」発表、1980年代のBIA技術が現代医療の常識を覆す - innovaTopia - (イノベトピア)

フロリダ大学の研究チームが2025年に『Annals of Family Medicine』誌で発表した研究により、BMI(ボディマス指数)よりも生体電気インピーダンス分析(BIA)による体脂肪測定の方が死亡リスク予測において優れていることが判明した。

研究は全国代表的なサンプルを対象に15年間追跡調査を実施した。BIAで測定した高体脂肪者は低体脂肪者と比較して全死因死亡リスクが78%高く、心疾患死亡リスクは262%高かった。一方、BMIは死亡率との有意な関連性を示さなかった。

研究を主導したアーチ・メイナス教授は「これは究極のコカ・コーラ対ペプシのテストであり、BMIは失敗した」と述べた。BIA技術は1980年代から商業利用されており、現在はフィットネストラッカーやスマートウォッチにも搭載されている。CDC、NIH、WHO、米国心臓協会などがBMIを標準指標として採用しているが、体格、年齢、性別、人種の違いを考慮しない限界が指摘されている。

From: 文献リンクBMI Is an Awful Predictor of Early Death. We’ve Had a Better Option For Decades

【編集部解説】

今回の研究結果は、医療業界における体重・健康評価の根本的なパラダイムシフトを示唆する重要な発見です。フロリダ大学の研究チームが全国代表的なサンプルを用いて15年間追跡した結果、従来の常識を覆す結果が得られました。

特に注目すべきは、成人において、BMIが全く死亡リスクの予測に役立たなかった点でしょう。この発見は、現在の医療現場で広く使用されている健康指標の根本的な見直しを迫るものです。

BIA技術自体は1980年代から存在していたものの、医療現場での標準的な活用には至っていませんでした。しかし、近年のウェアラブルデバイスの普及により、Samsung Galaxy Watch 4のようなスマートウォッチや、Apple Watch向けのAURA StrapのようなアクセサリにもBIAセンサーが搭載され始めています。これにより、日常的な健康管理における体脂肪測定のハードルが大幅に下がっています。

一方で、BIA測定には技術的な課題も存在します。体内の水分量や電解質バランス、測定時の姿勢などが結果に影響を与えるため、測定条件の標準化が重要となります。また、手首型デバイスでは上半身のみ、足型デバイスでは下半身のみの測定となる場合があり、全身の正確な体組成把握には限界があることも理解しておく必要があります。

この研究が医療政策に与える影響は計り知れません。CDC、NIH、WHOなどの主要機関がBMIを標準指標として採用している現状を考えると、今後の診療ガイドライン改訂や保険制度への影響も予想されます。

長期的な視点では、パーソナライズド医療の発展において、より精密な体組成データが重要な役割を果たすことになるでしょう。AI診断システムとの組み合わせにより、個人の体質や生活習慣に最適化された健康管理プログラムの提供が可能になる可能性があります。

【用語解説】

BMI(ボディマス指数)
体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値で、肥満度を判定する国際的な指標。計算が簡単で広く使用されているが、筋肉量や体脂肪率を区別できない限界がある。

BIA(生体電気インピーダンス分析)
体内に微弱な電流を流し、組織の電気抵抗を測定することで体組成を推定する技術。筋肉は水分が多く電気を通しやすく、脂肪は通しにくい性質を利用している。

Annals of Family Medicine
2003年創刊の家庭医学分野の査読付き学術誌。6つの家庭医学組織の共同事業として運営され、オープンアクセスで出版費用は無料。

アーチ・メイナス(Arch Mainous)
フロリダ大学公衆衛生・健康専門職学部教授で、プライマリケア研究分野の権威。400本以上の論文を発表し、被引用数は33,000回を超える。

【参考リンク】

フロリダ大学公衆衛生・健康専門職学部(外部)
1958年設立の米国初の健康専門職学部。8つの大学院プログラムが公立大学トップ20にランクイン

CDC(米国疾病予防管理センター)(外部)
米国の公衆衛生を担う連邦政府機関。BMIを肥満判定の標準指標として採用

【参考動画】

【参考記事】

Body fat predicts major health risk that BMI misses(外部)
同研究をFox Newsが報じた記事。15年間の追跡調査で高体脂肪者の死亡リスクが78%高いことを強調

Beyond BMI: Bioelectrical impedance analysis(外部)
BIA技術の商業的応用について、日本のTanita社の国際商業マネージャーへのインタビューを通じて解説

【編集部後記】

この研究結果を見て、皆さんはどう感じられましたか?私たちが当たり前だと思っていた健康指標が、実は不正確だったかもしれないという事実は、少し驚きでもあり、同時に新しい可能性を感じさせてくれます。最近のスマートウォッチやフィットネストラッカーにBIA機能が搭載されているのを見かけたことはありませんか?もしかすると、私たちの手首にある小さなデバイスが、従来の医療現場よりも正確な健康情報を提供してくれているのかもしれません。皆さんは普段、どのような方法で健康管理をされていますか?体重計の数字だけでなく、体組成にも注目してみると、新たな発見があるかもしれませんね。

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TaTsu
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