Waymo、ロンドン公道で自律走行テスト開始|欧州初の商業市場、2026年内に展開へ

[更新]2026年4月16日

自動運転で世界をリードするWaymoが、ついに欧州の玄関口に立ちました。2026年中の商業サービス開始を目指す同社にとって、ロンドンは初の国際商業市場となる可能性があります。英国政府の承認プロセスの行方とともに、ロンドンのロボタクシー競争がいよいよ本格化しています。


Alphabet傘下のWaymoは4月14日、ロンドンの公道で自律走行テストを開始したことを明らかにした。

現時点では人間の安全担当オペレーターが同乗した状態で、全電動のジャガーI-Paceが走行している。WaymoのCo-CEOドミトリ・ドルゴフ氏はLinkedInへの投稿で「コアとなる走行AIの汎化は非常に順調」とコメントし、英国の道路での性能検証が進んでいることを示した。2026年中の商業サービス開始計画は、英国政府による運用承認プロセスの完了を条件としている。ロンドンはWaymoにとって初の国際商業市場となる可能性があり、東京でも並行してテストが進められている。英国を拠点とするWayveとUberも同市での完全ドライバーレスサービスを計画しており、ロンドンは複数の事業者が参入を競う戦場となっている。

From: 文献リンクLondon gets closer to its first robotaxi service as Waymo begins testing

📋 編集部注(2026年4月16日更新):本文中「Waymo公式発表、2025年」と記載していたライダーオンリー走行距離の年次表記を「2026年3月時点」に修正しました。Waymo公式安全データ(2025年12月末時点)では1億7,070万マイル(約2.75億km)であり、3億km超が公式に言及されたのは2026年3月の東京メディア向け説明会でした。あわせて、ロンドンのテスト規模・車両仕様に関する情報を編集部解説に追記しています。

【編集部解説】

「AIの汎化」が意味するもの

ドルゴフ氏が述べた「コアとなる走行AIの汎化は非常に順調」という一文は、技術的に極めて重大な意味を持っています。

自動運転において「汎化(generalization)」とは、ある都市で学習した運転能力が、別の都市でもそのまま通用することを指します。従来の自動運転システムは、新しい都市に進出するたびに膨大な高精度地図の作成とルールの手動調整を必要としていました。しかし、Waymoは2025年11月のブログで自社のシステムを「汎化可能なDriver」と表現し、新都市への展開をかつてないスピードで進められるようになったと説明しています。

この加速を支えているのが、2025年12月に公表された「Waymo Foundation Model」です。このモデルは、エンドツーエンド学習(カメラ入力から運転操作までを一気通貫で処理する手法)とモジュール型アプローチ(知覚・予測・計画を個別に設計する手法)の長所を統合したアーキテクチャを採用しています。さらに、2026年2月にはGoogle DeepMindのGenie 3を基盤とした「Waymo World Model」が発表され、竜巻や象との遭遇といった極めて稀な状況をシミュレーション上で再現・テストできるようになりました。

ドルゴフ氏の発言は、こうした技術基盤がロンドンという未知の環境でも機能していることの宣言です。米国11都市での商業運行、3億キロメートルを超えるライダーオンリー(完全無人)走行の蓄積(Waymo公式発表、2026年3月時点)が、左側通行のロンドンでも「効いている」——この事実は、自動運転AIが特定の道路環境に閉じた技術から、より普遍的な運転知能へと進化しつつあることを示唆しています。

英国の規制環境——世界で最も整備された枠組み

Waymoのロンドン進出を可能にしているのは、技術だけではありません。英国は2024年5月に「Automated Vehicles Act 2024(AV Act)」を成立させ、世界で最も包括的な自動運転法制の一つを整えました。

この法律は、自動運転車の認可を二段階で行う仕組みを定めています。第一段階は車両の「型式承認(type approval)」、第二段階は実際の運用に関する「認可(authorisation)」です。注目すべきは、同法が事故時の責任の所在を明確にした点です。自動運転モードで走行中の事故は、運転者ではなく「認可を受けた自動運転主体(authorised self-driving entity)」、すなわち技術開発企業側が責任を負います。この責任の切り分けは、利用者にとって「自動運転中に何かあっても自分が罪に問われない」という安心材料であると同時に、事業者にとっては安全性の証明に対する極めて高いハードルを意味します。

ただし、AV Actは枠組み法であり、具体的な運用規則を定める二次立法はまだ策定途上です。英国政府は2025年6月、自動運転旅客サービス(APS)に関する規制の導入を前倒しし、2026年春から安全運転者なしの商業パイロットを可能にする方針を発表しました。法律の完全施行は2027年を目標としていますが、Waymoが「2026年中の商業サービス開始」と述べている以上、前倒しされたAPS規制の枠組みの中で認可を取得するシナリオが有力です。

ロンドンという試験場の特殊性

なぜロンドンなのか。この選択には、戦略的な計算があります。

ロンドンは左側通行であり、ラウンドアバウト(環状交差点)が多用され、歩行者・自転車・バスが複雑に入り乱れる都市です。米国の多くの都市に比べて道路幅は狭く、車線標示も不明瞭な区間があります。Wayve CEOのアレックス・ケンダル氏は、ロンドンを「信号のない複雑で動的な都市」と位置づけています。

しかし、だからこそ価値がある。ロンドンで機能する自動運転技術は、パリ、ベルリン、東京への展開を説得力をもって裏付けます。Waymo自身も元記事で、ロンドンを「欧州でのビジネス拡大の基盤」と位置づけています。つまりロンドンは単なる一市場ではなく、欧州全体、ひいてはグローバル展開の足掛かりとしての意味を持っています。

また、Waymo公式FAQページが明言している興味深い事実があります。ロンドンで使用されているI-Paceは米国仕様の左ハンドル車です。英国は左側通行のため、通常ドライバーは右座席に座りますが、自律走行中はシステムが操舵を担うため技術的な問題はありません。安全担当者(Autonomous Specialists)は英国の交通法規に沿って左ハンドル車を操作するための特別訓練を受けており、Waymoはこれを「経験こそが最善の教師」と表現しています。なお、ジャガーI-Paceは2024年に生産終了しており、Waymo広報は「ロンドンの展開が拡大する段階で将来の車両プラットフォームを検討する」と述べています。完全自律走行への移行は、英国政府によるAPS(自動運転旅客サービス)パイロット規制の最終確定を条件とするため、現時点でWaymoが確認している商業サービス開始の期限は「2026年末まで」です。

【2026年4月16日 追記】
TechCrunchが4月14日(現地時間)に記事を更新し、ロンドンのテスト規模が明らかになりました。現在、ジャガーI-Pace約100台100平方マイル(約260km²)、ロンドン32区のうち19区にわたるエリアで自律走行テストを実施しています。

競合が競うロンドン——WaymoとWayve、アプローチの違い

ロンドンのロボタクシー市場は、すでに競争が始まっています。英国発のスタートアップWayveは、Uberとの提携を通じて2026年中にロンドンでL4(レベル4)自律走行のトライアルを実施する計画です。SoftBank、NVIDIA、Microsoftといった大手が出資するWayveは、Waymoとは根本的に異なるアプローチを取っています。

Time誌の報道によれば、Wayveは2025年に世界500都市で145万キロメートルの走行テストを実施し、そのいずれの都市でも「標準的なナビゲーション地図のみ」で走行したとしています。Waymoが高精度の3D地図を事前に作成するのに対し、Wayveは人間のように汎用的な地図だけで運転できるAIを目指しています。カメラ主体のセンサー構成で、LiDARを必要としない点もWaymoとの大きな違いです。

ただし、同じTime誌の記事は重要な留保も付けています。Waymoの最新世代車両はセンサー数を前世代比42%削減しており、ハードウェアコスト面でのWayveの優位性は縮小しつつあります。また、Wayveが完全無人(ドライバーレス)で走行するには、現在のカメラ主体構成ではセンサーの追加が必要になるとの指摘もあります。

なお、WaymoのロンドンでのサービスはWaymo単独ではなく、ナイジェリア発のモビリティ企業Moove(ムーブ)との共同事業として計画されており、車両調達・運行面でのパートナーシップを担う見込みです。

ロンドンでの直接対決は、「実績のWaymo」対「軽量さのWayve」という構図を鮮明にするでしょう。どちらのアプローチが、ロンドンの複雑さに適しているのか。その答えが出るには、もう少し時間が必要です。

東京との並行——日本市場への示唆

Waymoはロンドンと並行して東京でもテストを進めています。日本交通およびタクシーアプリGOとの提携のもと、2025年4月から東京都内で手動運転による地図作成を開始し、その後自律走行テストに移行しています。2026年3月には東京でメディア向け説明会を開催し、CPO(最高プロダクト責任者)のサシュワット・パニグラヒ氏が「数カ月以内」のローンチの可能性に言及したと報じられています。

一方、東京でもWaymoは競合に直面します。Wayve・Uber・日産は2026年3月に東京でのパイロットプログラムに関する覚書に署名しました。ロンドンと東京が同時に競争の場となり、しかも両都市でWaymoとWayve、Uberが対峙するこの構図は偶然ではありません。

日本にとっての意味を考えると、高齢化による運転者不足という社会課題の解決手段としてロボタクシーへの期待が高まる中、複数のグローバルプレーヤーが東京を舞台に競い合うことは、技術の選択肢と安全性の水準を高める可能性があります。同時に、規制整備の速度が市場アクセスを左右するという、ロンドンと同じ構造が日本にも当てはまります。

「展開速度」が常識を変える

Waymoの動きを俯瞰すると、ある転換点が見えてきます。2020年にフェニックスで初の完全無人サービスを開始してから、サンフランシスコ、ロサンゼルスへの展開に数年を要しました。しかし2025年後半から、展開の速度は急激に上がっています。Co-CEOのテケドラ・マワカナ氏は2025年のTechCrunch Disruptで「2026年末までに週100万トリップを目指す」と述べ、米国内だけでも10都市以上の新規市場を計画しています。

この加速の背景にあるのが、先述した「汎化可能なDriver」と「運用プレイブック」の確立です。Waymoは新都市に進出するたびに、手動運転による地図作成→自律走行テスト→社員向け試乗→一般公開という標準化されたプロセスを踏みます。このプロセスが「再現可能」になったことで、自動運転は研究段階を脱し、スケーラブルな事業へと変わりつつあります。

ロンドンでの自律走行テスト開始は、その事業モデルが国境を越えても成立するかを検証する最初の本格的な試金石です。技術の汎化、規制の整備、競合との差別化、この三つの変数が同時に動くロンドンの状況は、自動運転の次の10年を占う先行指標になるかもしれません。

【用語解説】

Waymo Foundation Model
Waymoが2025年12月に公表した、自社の自動運転AIの中核を担う基盤モデル。エンドツーエンド学習とモジュール型アプローチの長所を統合したアーキテクチャで、知覚・予測・計画の各処理を一つのモデルで統合的に学習。「ドライバー(Driver)」「シミュレーター(Simulator)」「クリティック(Critic)」という三つのコンポーネントを同一モデルで駆動し、安全性の継続的な検証を可能にする。

Waymo World Model
2026年2月発表の生成型シミュレーション基盤。Google DeepMindの汎用ワールドモデル「Genie 3」を自動運転向けに特化させたもの。竜巻・洪水・ゾウとの遭遇といった極めて稀な状況(ロングテールシナリオ)を、テキストプロンプトや運転入力で制御しながら高精度に生成。カメラ映像とLiDARデータを同時に出力できる点が技術的特徴。

L4(レベル4)自律走行
米国自動車技術者協会(SAE)が定める自動化レベルの区分。L4は「特定の条件下では人間の介入なしに完全自律で走行できる」段階。Waymoのロボタクシーはこのレベルに相当し、定められた運行エリア内ではドライバーが不要。L5は条件を問わない完全自律走行で、現時点で実用化されたシステムは存在しない。

LiDAR(ライダー)
Light Detection and Rangingの略。レーザー光を照射して反射時間を計測することで周囲の3次元形状を取得するセンサー。自動運転における「目」の役割を担い、カメラでは検出困難な距離・形状情報を高精度で提供。Waymoは複数のLiDARをカメラ・レーダーと組み合わせるマルチセンサー構成を採用。一方でWayveはLiDAR非搭載のカメラ主体構成を目指しており、センサー設計の思想が両社の大きな違いのひとつ。

APS(Automated Passenger Services/自動運転旅客サービス)
英国のAV Act 2024が定義する、自動運転車を用いた旅客輸送サービスのカテゴリー。安全運転者なしでの商業運行を可能にする規制区分で、英国政府は当初2027年に予定していた同規制の導入を2026年春に前倒しした。Waymoが目指す「ライダーオンリー」サービスはこの枠組みの下で認可を受ける必要がある。

ラウンドアバウト(環状交差点)
信号機のない円形交差点。英国では全土に普及しており、進入車両は円内を走行する車両に優先権がある。従来の自動運転システムが苦手とする非定型な交通状況の一つで、英国のロボタクシー事業者が技術的に克服すべき課題として注目されている。

Moove(ムーブ)
ナイジェリア発のモビリティ系フィンテック企業。WaymoのロンドンにおけるロボタクシーサービスのパートナーとしてWaymoと提携し、車両調達・運行面でのサポートを担う。アフリカ・中東・欧州でモビリティサービスを展開しており、自動運転車両のフリート管理にも取り組んでいる。

【参考リンク】

Waymo(ウェイモ)公式サイト(外部)
Alphabet傘下の自動運転技術企業。フェニックス・サンフランシスコ等で完全無人ロボタクシーを商業展開中。ロンドン・東京での2026年サービス開始を目指す。

Waymo公式ブログ「Waypoint」(外部)
Foundation Model・World Model・各都市の進捗など、Waymoの技術動向を把握するための公式一次情報源。

Waymo|ロンドン自律走行テスト開始(2026年4月14日)(外部)
今回の記事の直接的な一次ソース。自律走行テスト開始の背景と安全データを公式に説明するWaymoの短報ブログ。

Wayve(ウェイブ)公式サイト(外部)
ロンドン拠点の自動運転スタートアップ。SoftBank・NVIDIA等が出資。Uberと提携しロンドン・東京でのL4トライアルを計画。

UK AV Act実装プログラム(英国政府)(外部)
Automated Vehicles Act 2024の実装状況を追える英国政府の公式ページ。APSパイロット規制の導入スケジュールや二次立法の進捗を確認できる。

GOタクシーアプリ(外部)
Waymoの東京テストパートナー・GO株式会社が運営する配車アプリ。Waymoロボタクシーの将来的な日本向け配車窓口として注目される。

日本交通株式会社(外部)
東京最大手のタクシー事業者で、Waymoの東京テストにおける現地パートナー。2025年4月から地図作成フェーズを担当。

Waymo in UK — よくある質問(Waymo公式)(外部)
ロンドンでのテスト仕様・車両・規制対応に関するWaymo公式FAQ。左ハンドル車の使用理由や安全担当者の訓練内容を含む、一次情報として信頼性の高いページ。

【参考動画】

Waymo: The future of autonomous driving | Vincent Vanhoucke(Google DeepMind公式)(外部)
ハナ・フライ教授とWaymoエンジニア、ヴィンセント・ヴァンホウク氏の対談。自動運転AIの仕組みからロンドン展開の展望まで約50分で解説(英語・字幕あり)。

【参考記事】

Demonstrably Safe AI for Autonomous Driving — Waymo公式ブログ(2025年12月)(外部)
Waymo Foundation Modelの技術詳細を公式解説。エンドツーエンド学習とモジュール型統合アーキテクチャ、三位一体の安全検証サイクルを説明。

The Waymo World Model: A New Frontier For Autonomous Driving Simulation — Waymo公式ブログ(2026年2月)(外部)
Google DeepMind Genie 3を基盤とした生成型シミュレーション環境の発表。竜巻・象との遭遇などのロングテールシナリオ生成の仕組みを図解。

Safe, Routine, Ready: Autonomous Driving in New Cities — Waymo公式ブログ(2025年11月)(外部)
「汎化可能なDriver」と標準化された「運用プレイブック」による都市展開加速を説明。ロンドン進出の技術的背景を理解するための一次情報。

UK’s Automated Vehicles Act 2024: A Comprehensive Overview — 39 Essex Chambers(2024年)(外部)
英国トップクラスの法律事務所による、AV Act 2024の包括的な法的分析。型式承認・運用認可の二段階プロセスと責任帰属を正確に解説。

Waymo Wants to Take On Waymo—and Put Self-Driving Tech in Every Car — Time誌(2026年4月2日)(外部)
WaymoとWayveの技術アプローチを詳細比較。Wayveの500都市テスト実績、両社のセンサー設計思想の違い、カメラ主体構成の課題を掘り下げる。

Wayve and Uber Partner to Launch L4 Autonomy Trials in the UK — Wayve公式プレスリリース(2025年6月)(外部)
WayveとUberがロンドンでのL4自律走行トライアルを発表。ロンドンの道路環境の複雑さに関するWayve CEOのコメントを収録。

Wayve, Uber and Nissan Announce Collaboration on Robotaxis — 日産公式プレスリリース(2026年3月)(外部)
Wayve・Uber・日産の三社による東京パイロット合意の公式発表。2026年末までの東京ローンチ計画と10都市以上へのグローバル展開方針を確認できる。

【編集部後記】

ロンドンの公道を走り始めたWaymoの車両は、私たちに一つの問いを残します。自動運転が「どの都市でも走れる技術」に近づいたとき、次に問われるのは技術の優劣だけではなく、「誰が、どんなルールのもとで、街の移動を担うのか」という社会としての選択ではないでしょうか。技術は国境を越えました。しかし、信頼はまだこれから積み上げるものです。ロンドンの実験がどんな答えを導くのか、東京でも同じ問いが動き始めている今、私たちにとっても遠い話ではありません。

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まお
おしゃべり好きなライターです。趣味は知識をためることとゲームをすること(ソシャゲや音楽ゲームが大好きです)。最近はAIの情勢や地政学の問題を勉強中。時折記者として会見や発表に赴いたり、インタビューを行ったりもしています。