Last Updated on 2024-10-07 06:56 by admin
台湾の半導体産業、深刻な電力不足に直面
台湾は世界の半導体生産の中心地だが、深刻な電力不足に直面している。2023年、北部台湾では930億キロワット時の電力を消費したが、生産は750億キロワット時にとどまり、約200億キロワット時の大幅な不足が生じた。
台湾は2023年時点で世界の半導体ファウンドリ生産能力の約46%を占めているが、2027年には41%に減少すると予測されている。一方で、先進的な製造プロセスでは2027年までに60%の集中度を維持する見込みだ。
台湾政府は2025年までに原子力発電を全廃する方針を掲げており、2023年7月27日に2基目の原子炉を停止した。再生可能エネルギーの目標達成も遅れており、2023年末時点で9.5%にとどまっている。
台湾の産業部門は2023年の電力消費の55%以上を占めており、特に半導体大手のTSMCは2023年に約25,000ギガワット時のエネルギーを消費した。TSMCは再生可能エネルギーの利用を拡大しているが、需要の増加がそれを上回っている。
2024年第1四半期時点で、TSMCは世界の半導体ファウンドリ市場の61.7%のシェアを占めている。同社は2023年に1,490ギガワット時の再生可能エネルギーを消費したが、これは主に海外からの輸入によるものだった。
電力不足は台湾の半導体産業に大きな影響を与える可能性があり、世界的な半導体供給に影響を及ぼす懸念がある。
from:Taiwan Makes the Majority of the World’s Computer Chips. Now It’s Running Out of Electricity
【編集部解説】
台湾の電力不足問題は、半導体産業の中心地として世界経済に大きな影響を与える可能性がある重要な課題です。この問題の背景には、台湾の急速な産業発展と、それに追いつかないエネルギーインフラの整備があります。
まず、台湾の電力需給の現状を見てみましょう。2023年、北部台湾では930億キロワット時の電力を消費しましたが、生産は750億キロワット時にとどまり、約200億キロワット時の大幅な不足が生じました。この不足分は南部や中部からの電力転送で補われていますが、その過程で約6.4億キロワット時の損失が発生し、23億台湾ドル(約100億円)のコストがかかっています。
この電力不足の背景には、台湾政府の野心的なエネルギー政策があります。2016年に蔡英文政権は2025年までに再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げる目標を掲げましたが、2023年末時点で9.5%にとどまっています。同時に、原子力発電の全廃を目指していますが、これが電力供給の安定性に影響を与えています。
半導体産業の電力需要は今後さらに増加すると予測されています。特に、AIチップの生産拡大に伴い、電力需要は急増する可能性があります。TSMCは2023年に約25,000ギガワット時のエネルギーを消費しましたが、この数字は今後さらに増加すると見られています。
この状況は、台湾の半導体産業だけでなく、世界のテクノロジー産業全体にリスクをもたらす可能性があります。TSMCは2024年第1四半期時点で世界の半導体ファウンドリ市場の61.7%のシェアを占めており、その生産に支障が出れば、世界中の電子機器の供給に影響を与える可能性があります。
一方で、この課題は台湾にとって新たな機会ともなり得ます。再生可能エネルギーへの投資を加速させ、エネルギー効率の向上を図ることで、より持続可能な産業構造への転換を促す契機となるかもしれません。
また、この問題は台湾の地政学的な立場にも影響を与える可能性があります。エネルギー安全保障の観点から、台湾は国際協力を強化し、エネルギー源の多様化を図る必要があるでしょう。
今後、台湾政府と産業界がどのようにこの課題に取り組んでいくのか、そしてそれが世界の半導体供給チェーンにどのような影響を与えるのか、注目していく必要があります。