Last Updated on 2024-12-25 10:56 by admin
第2期トランプ政権下でのNASA改革案の主要ポイントが明らかになりました。2027年半ばまでの有人月面着陸計画の実施、開発費用270億ドルのSLSロケットの中止検討など、大規模な改革が検討されています。
改革の主要ポイント
– NASAの研究施設統合(ゴダード宇宙飛行センター、エイムズ研究センターをマーシャル宇宙飛行センターへ)
– 次期NASA長官にShift4 Payments創業者のジャレッド・アイザックマン氏を指名
– SpaceXのスターシップを活用した月面着陸計画の効率化
– 商業宇宙企業との連携強化方針
from:How NASA Might Change Under Donald Trump
【編集部解説】
今回の改革案の最大の特徴は、従来の政府主導型から民間活力を最大限に活用する方向への大きな転換です。特に注目すべきは、次期NASA長官に指名されるジャレッド・アイザックマン氏の存在です。決済処理会社の創業者であり、自身もSpaceXのクルードラゴンで2度の宇宙飛行を経験した実業家である同氏の起用は、NASAの商業化路線を一層加速させる可能性があります。
改革案の中で最も議論を呼びそうなのが、SLSロケットとオリオン宇宙船の見直しです。SLSは1回の打ち上げに41億ドル(約6,150億円)もの費用がかかり、当初の見積もりの4倍に膨れ上がっています。一方、SpaceXのスターシップは1回あたり1,000万ドル(約15億円)以下での運用を目指しており、このコスト差は無視できない状況です。
アルテミス計画の再設計については、現在の2026年9月という月面着陸目標の実現可能性に疑問が投げかけられています。特にオリオン宇宙船の熱シールドに関する安全性の問題が指摘されており、より現実的なタイムラインへの見直しが必要とされています。
一方で、この改革には政治的な課題も存在します。SLSプログラムは全米で69,000人以上の雇用を支えており、特にアラバマ州のマーシャル宇宙飛行センターなど、共和党地盤での反発が予想されます。
気候変動研究への影響も懸念されています。NASAの地球科学ミッションは気候変動の観測において重要な役割を果たしていますが、トランプ政権は前回の任期中にもこれらのプログラムの予算削減を試みています。
しかし、注目すべきは各州が独自に宇宙開発支援を強化している点です。テキサス州の3.5億ドル規模の投資をはじめ、各地で商業宇宙産業の誘致が活発化しています。これは、宇宙開発が単なる科学的探査から、経済的な成長エンジンとして認識されつつあることを示しています。
このような変革は、アメリカの宇宙開発における新しい時代の幕開けを示唆しています。政府と民間セクターの新しいパートナーシップモデルが、より効率的で持続可能な宇宙開発の実現につながる可能性を秘めているのです。