株式会社ispace(本社:東京都中央区、代表取締役:袴田武史、証券コード:9348)は、2025年1月15日15時11分(日本時間)、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2のRESILIENCEランダーを、米フロリダ州ケネディー宇宙センター39A射点からSpaceX社のFalcon 9ロケットで打ち上げた。
同日16時44分(日本時間)にロケットからの分離に成功し、日本橋の管制室(Mission Control Center)との通信を確立、ランダーの姿勢の安定と電源供給の確立を確認した。
搭載ペイロード
RESILIENCEランダーには以下の6つのペイロードを搭載:
- 高砂熱学工業の月面用水電解装置
- ユーグレナの月面環境での食料生産実験用自己完結型モジュール
- 台湾国立中央大学宇宙科学工学科の深宇宙放射線プローブ
- バンダイナムコ研究所のGOI宇宙世紀憲章プレート
- ispace EUROPEが開発したマイクロローバー「TENACIOUS」
- スウェーデンのアーティストによる赤い小さな家「ムーンハウス」
今後のスケジュール
- 2025年3月頃:月到着予定
- 2025年5月〜6月:月面着陸予定
- 2026年:ミッション3打ち上げ予定
- 2027年:ミッション6打ち上げ予定
from:ispace、ミッション2マイルストーンSuccess 3「安定した航行状態」を確立!
【編集部解説】
月面開発競争の新たな一歩
ispaceの2度目の月面着陸挑戦が始まりました。今回のミッション2では、前回の失敗から学んだ教訓を活かし、より慎重な姿勢で臨んでいます。
特筆すべきは、今回の打ち上げがSpaceXのロケットに2機の月着陸船を同時搭載する初の試みだという点です。米国のFirefly Aerospace社のBlue Ghostとの相乗りは、月面輸送の効率化という観点から画期的な出来事といえます。
前回との違いと改良点
2023年4月の初回ミッションでは、高度約5kmの地点でソフトウェアエラーにより着陸に失敗しました。今回のRESILIENCEランダーはハードウェアの大きな変更は最小限に抑えられていますが、ソフトウェア面での改良が施されています。
商業的意義
今回のミッションで特に注目すべきは、月の表土(レゴリス)の商業取引に向けた取り組みです。TEMACIOUSマイクロローバーが収集するレゴリスは、NASAへの譲渡が予定されており、日本企業による初の宇宙資源の商業取引となる可能性があります。
今後の展望
5月下旬から6月上旬に予定されている着陸成功までには、まだ多くの課題が残されています。しかし、2024年2月に米Intuitive Machines社が民間企業として初の月面着陸に成功したことで、民間による月面開発の実現性が実証されつつあります。
グローバルな月面開発の文脈
ispaceは日本、ルクセンブルク、米国の3拠点で事業を展開し、約300名の従業員を抱える国際的な企業へと成長しています。2026年のミッション3、2027年のミッション6と、継続的な月面ミッションを計画しており、NASAのアルテミス計画への貢献も視野に入れています。
技術的特徴
RESILIENCEランダーは高さ2.3メートル、幅2.6メートルの八角柱形状で、4本の着陸脚を備えています。太陽光発電システムを採用し、長期的な月面活動を視野に入れた設計となっています。
文化的意義
今回のミッションでは、UNESCOのメモリーディスクを搭載し、人類の言語と文化の多様性を保存するという文化的な使命も担っています。これは月面開発が単なる技術的・商業的な挑戦を超えて、人類の文化的遺産の保存という側面も持つことを示しています。