SPHEREx:NASAの新型宇宙望遠鏡が挑む「宇宙の全体像」と「生命の起源」の謎に迫る

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打ち上げ詳細

打ち上げ予定日は2025年2月27日、場所はカリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地です。

望遠鏡の仕様

メガホン型の特徴的な形状を持ち、3層の円錐形フォトンシールド構造を採用しています。赤外線102色での観測が可能で、6ヶ月で全天をカバーする観測方式を採用しています。

ミッション詳細

主要目的は、宇宙初期のインフレーション現象の解明、銀河からの総光量測定、そして生命の材料となる物質の探索です。450万以上の銀河を観測対象とし、マイナス210度(華氏マイナス350度)という極低温で運用されます。

from:6 Things to Know About SPHEREx, NASA’s Newest Space Telescope

【編集部解説】

NASAの新しい宇宙望遠鏡SPHERExは、既存の宇宙望遠鏡とは一線を画す特徴を持っています。その最大の特徴は、「全天観測」という点にあります。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡が特定の天体を詳細に観測するのに対し、SPHERExは6ヶ月で全天を観測し、2年間で4回の完全な天球マップを作成します。これは、宇宙の大規模構造を理解する上で革新的なアプローチとなります。

特筆すべきは、102種類の赤外線波長での観測能力です。これにより、これまで見えなかった宇宙の姿が明らかになる可能性があります。例えば、星形成領域に存在する水や二酸化炭素などの生命の材料となる物質の分布を、かつてない精度で把握できるようになります。

観測装置の設計も非常にユニークです。メガホンのような形状は、望遠鏡を極低温(マイナス210度)に保つために不可欠な3層の遮光シールドによるものです。この受動的な冷却システムにより、電力消費を冷蔵庫以下の270-300ワットに抑えることに成功しています。

このミッションの意義は、宇宙物理学の根本的な謎の解明にも及びます。特に、ビッグバン直後に起きたとされる急激な宇宙膨張(インフレーション)の検証は、現代物理学の重要課題の一つです。

また、4億5000万以上の銀河と1億以上の恒星のデータを収集することで、宇宙の大規模構造や銀河の進化過程についての理解が大きく進むことが期待されます。

総開発費用は4億8800万ドルと、大規模な宇宙望遠鏡としては比較的低コストである点も注目に値します。これは、将来の宇宙観測ミッションのコスト効率化にも影響を与える可能性があります。

SPHERExの観測データは一般に公開される予定であり、世界中の研究者がこのデータを活用できます。これにより、予期せぬ発見や新たな研究分野の開拓も期待されます。

技術的な課題と今後の展望

一方で、全天観測という特性上、個々の天体の詳細な観測には限界があります。そのため、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの高解像度望遠鏡との連携が重要になってきます。

また、南大西洋異常帯(SAA)での観測データは科学調査から除外される必要があり、これを補完するための観測スケジュール管理が重要な課題となっています。

【用語解説

  • 分光観測:光を虹のように波長ごとに分解して観測する技術
  • 近赤外線:人間の目では見えない波長の光で、宇宙の塵や星間物質の観測に適している
  • インフレーション:宇宙誕生直後の急激な膨張現象

【参考リンク】

  1. NASA SPHERExミッション公式サイト(外部)
    NASAによるSPHERExミッションの詳細情報と最新アップデートを提供する公式ページ
  2. JPL SPHERExプロジェクト(外部)
    ジェット推進研究所による技術詳細と開発状況を紹介する専門ページ

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