Last Updated on 2024-12-09 16:04 by admin
国連主導のプラスチック汚染対策条約(INC-5)の交渉が2024年11月25日から12月1日まで韓国・釜山で開催されました。170カ国以上から代表団が参加し、900人以上の科学者が支持を表明しました。
主な争点
・プラスチック生産量の規制
・有害化学物質の規制
・途上国支援のための資金調達
85カ国が「Stand Up For Ambition」宣言に署名し、法的拘束力のある条項を求めましたが、サウジアラビアなどの産油国が強く反対。2025年の再交渉が決定されました。
OECDの予測では、対策を取らない場合、世界のプラスチック消費量は2019年の4億6,000万トンから2060年には12億3,100万トンまで増加する見込みです。
from:These 3 Things Are Standing in the Way of a Global Plastics Treaty
【編集部解説】
プラスチック汚染対策の国際条約交渉(INC-5)について、いくつかの重要な点を補足させていただきます。
今回の交渉は、2022年11月から始まった一連の協議の第5回目にあたります。170カ国以上から3,300人を超える代表団が参加し、440以上のオブザーバー組織も加わった大規模な国際会議でした。
特筆すべきは、85カ国が「Stand Up For Ambition(野心的な目標のために立ち上がろう)」宣言に署名し、法的拘束力のある条項を求めたことです。これは、プラスチック汚染問題に対する世界的な危機感の表れといえます。
ルワンダのジュリエット・カベラ代表が行った演説は、会場の大多数の支持を得て、まさに歴史的な瞬間となりました。これは、途上国がプラスチック汚染対策でリーダーシップを発揮できることを示した象徴的な出来事です。
一方で、石油産出国の強い反対は、エネルギー転換期における経済的利害の複雑さを浮き彫りにしています。特に、プラスチック市場は2060年までに生産量が3倍になると予測されており、産油国にとって重要な収入源となっています。
EUのジェシカ・ロスウォール環境委員は、合意に至らなかったことを強く遺憾とする声明を発表しました。これは先進国の環境政策と途上国の経済発展のバランスをどう取るかという、より大きな課題を示唆しています。
次回の交渉は2025年に予定されていますが、その間も各国は国内での対策を進めていくことになります。日本としても、この国際的な動向を注視しながら、独自の施策を展開していく必要があるでしょう。
プラスチック汚染問題は、環境保護と経済発展、技術革新と規制のバランス、先進国と途上国の協力など、現代社会が直面する多くの課題を包含しています。この問題の解決には、技術革新による代替材料の開発や、循環型経済モデルへの移行など、複合的なアプローチが不可欠となるでしょう。