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ペットボトル水に潜むマイクロプラスチックの脅威:最新研究が明かす腎臓への深刻な健康リスク

ペットボトル水に潜むマイクロプラスチックの脅威:最新研究が明かす腎臓への深刻な健康リスク - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-04 17:31 by admin

Communications Biology誌に2025年3月に発表された新しい研究によると、ペットボトル水に含まれるマイクロプラスチックが人間の健康、特に腎臓に深刻なリスクをもたらすことが明らかになった。

この研究では、マイクロプラスチック(5ミリメートル未満の微小なプラスチック粒子)が有毒汚染物質であるベンゾ[a]ピレン(BaP)の主要な運搬体として機能し、消化器系を通じて体内に吸収されることが示された。

研究者たちは「腸-腎臓軸」を発見し、ポリスチレンマイクロプラスチック(PS)が腸の防御壁を破壊することで、アラキドン酸などの有害物質が血流に漏れ出すメカニズムを解明した。これらの物質は腎臓に到達し、「フェロトーシス」と呼ばれる鉄の蓄積による細胞死を引き起こす。

2024年にフランス・トゥールーズで行われた研究では、ペットボトル水と水道水のサンプルから検出されたマイクロプラスチックの98%が20ミクロン未満、94%が10ミクロン未満であることが判明した。これらの微細なマイクロプラスチックは腸から血液や臓器に移行しやすいとされている。

国際ボトル水協会(IBWA)は研究の一部の側面に異議を唱えており、現在の科学的証拠ではマイクロプラスチックの検出レベルが人間の健康にリスクをもたらすことを示していないと主張している。

マイクロプラスチックへの曝露を減らすための対策としては、プラスチック包装食品の回避、高品質の浄水器の使用、再利用可能な水筒への切り替え、天然繊維の衣類の選択、非プラスチック製の台所用品の使用などが専門家から推奨されている。

from:Scientists Uncover Alarming Health Risks Linked to Drinking Bottled Water — Here’s Why You Should Stop Drinking It

【編集部解説】

まず、マイクロプラスチックの大きさについて注目すべき点があります。2024年にフランス・トゥールーズで行われた研究によると、ペットボトル水と水道水から検出されたマイクロプラスチックの98%が20ミクロン未満、94%が10ミクロン未満という非常に微細なものでした。これは欧州連合(EU)が設定している検出限界(20ミクロン〜5ミリ)よりも小さく、現在の規制では捉えきれていない問題が存在することを示しています。

特に重要なのは、これらの微細なマイクロプラスチックは腸から血液や臓器に移行しやすいという点です。研究者たちが発見した「腸-腎臓軸」というメカニズムは、マイクロプラスチックが腸の防御壁を破壊し、有害物質が血流に漏れ出すことで腎臓にダメージを与える過程を説明しています。

また、マイクロプラスチックの健康影響については、まだ完全に解明されていない部分も多いことを認識しておく必要があります。世界保健機関(WHO)は2019年と2022年の主要レビューで、マイクロプラスチックの摂取や吸入が健康リスクをもたらすかどうかを判断するには研究が不足していると結論づけています。しかし、10マイクロメートル未満の最小の断片は生物学的に取り込まれる可能性が高いと警告しています。

国際ボトル水協会(IBWA)はこのような研究結果に対して異議を唱えており、マイクロプラスチックの検出レベルが人間の健康にリスクをもたらすことを示す科学的証拠は現時点では不十分だと主張しています。これは業界団体としての立場を反映したものと考えられますが、私たちはより慎重な姿勢で対応する必要があるでしょう。

長期的な視点では、2024年12月に発表された研究で、マイクロプラスチックの慢性的な曝露が腎臓の線維化を引き起こす可能性が示されています。この研究では、人間が摂取する可能性のある濃度のマイクロプラスチックを6ヶ月間マウスに与え、炎症と多数の炎症細胞の蓄積を促進することで腎臓の線維化を誘発することが確認されました。

私たちの日常生活では、マイクロプラスチックへの曝露を減らすための実践的な対策として、再利用可能な水筒への切り替え、高品質の浄水器の使用、プラスチック包装食品の回避などが考えられます。これらの小さな行動の積み重ねが、長期的な健康リスクの軽減につながる可能性があります。

テクノロジーの進化により、より微細なマイクロプラスチックを検出できるようになったことで、これまで見えなかった問題が明らかになってきています。2024年1月にコロンビア大学とラトガース大学の研究者たちは、ペットボトル水1リットルあたり平均約24万個のナノプラスチック断片が含まれていることを発見しました。これは以前の推定値の最大100倍に相当します。

今後は、マイクロプラスチックの検出技術のさらなる向上と、健康影響に関するより詳細な研究が進むことで、より明確な規制やガイドラインが策定されることが期待されます。私たち消費者としては、入手可能な情報に基づいて賢明な選択をしていくことが重要でしょう。

【用語解説】

マイクロプラスチック
直径5mm以下の微小なプラスチック粒子。環境中に広く存在し、特に海洋環境で大きな懸念材料となっている。

ナノプラスチック
マイクロプラスチックよりさらに小さい粒子で、一般的に0.001~0.1μm(1~100nm)のサイズとされる。2024年の研究では、ペットボトル水1リットルあたり約24万個のナノプラスチックが検出された。

ベンゾ[a]ピレン(BaP)
発がん性を持つ有害な多環芳香族炭化水素の一種。マイクロプラスチックに吸着して体内に運ばれることがある。タバコの煙や焦げた食品にも含まれる。

フェロトーシス
鉄の蓄積によって引き起こされる細胞死の一種。2012年に発見された比較的新しい細胞死のメカニズム。マイクロプラスチックの摂取によって腎臓で発生する可能性がある。

腸-腎臓軸
腸と腎臓の機能的なつながりを示す概念。マイクロプラスチックが腸の防御壁を破壊し、有害物質が血流を通じて腎臓に到達するメカニズム。

【参考リンク】

国際ボトル水協会(IBWA)(外部)
ボトル入り飲料水業界の国際的な業界団体。業界の利益を代表し、品質基準の策定や規制問題に取り組んでいる。

Communications Biology(研究掲載誌)(外部)
ネイチャー・リサーチが発行するオープンアクセスジャーナル。生物学分野の幅広い研究を掲載している。

【参考動画】

【編集部後記】

皆さんは普段どのような水を飲んでいますか?ペットボトル派、水道水派、それとも浄水器派でしょうか。今回の研究結果は、私たちの日常的な選択が健康に影響を与える可能性を示唆しています。マイボトルの活用や浄水器の導入など、できることから始めてみるのはいかがでしょうか。皆さんならどのような対策を考えますか?SNSでぜひ共有してください。私たちも一緒に考えていきたいと思います。

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TaTsu
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