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中国が日中の月レーザー照射に成功-宇宙通信の”24時間化”が月面基地計画を加速

中国が日中の月レーザー照射に成功-宇宙通信の24時間化が月面基地計画を加速 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-04 16:49 by admin

中国のDeep Space Exploration Laboratory(DSEL)は2025年4月26日から27日にかけて、強い太陽光干渉下での地球-月間レーザー測距実験を行い、4月28日(日曜日)に世界で初めて成功したと発表した。この実験では、2024年3月20日に打ち上げられたTiandu-1衛星を使用し、日中の強い太陽光の下でも地球から約13万キロメートル離れた位置にあった衛星にレーザーを反射させることに成功した。

これまで地球-月間のレーザー測距は太陽光の干渉により夜間に限られていたが、この技術的障壁を克服したことで観測窓が大幅に拡大された。DSELによれば、この技術の精度は「10,000メートル離れた場所から一本の髪の毛(サブミリメートルの標的)に当てる」ほどの高精度を要するものだという。

Tiandu-1衛星は、Tiandu-2およびQueqiao-2中継衛星と共に2024年3月20日に打ち上げられ、3月29日に月周回軌道に到達、4月3日に分離された。これらの衛星は中国の計画中の地球-月通信・航行ネットワーク「Queqiao中継コンステレーション」の基礎要素として、2030年までに予定されている月着陸船、ローバー、有人ミッションをサポートする技術検証を行っている。

この成果は中国の月探査計画の一環であり、嫦娥6号ミッションが2024年6月25日に月の裏側からサンプルを持ち帰ったことに続き、2028年に予定されている嫦娥8号ミッションでは、ロシアと共同開発している「国際月面研究ステーション」に電力を供給するための小型原子炉などのインフラをテストする予定である。

from:China Fires Laser at the Moon in Broad Daylight—Achieves Unprecedented Deep-Space Targeting Breakthrough

【編集部解説】

中国が成功させた日中の月へのレーザー照射実験は、宇宙開発における「見えない時間帯」という概念を覆す画期的な成果です。複数の信頼できる情報源によると、この実験は中国科学院雲南天文台を中心とした研究チームによって4月26日から27日にかけて実施され、4月28日(日曜日)に初めて成功したことが確認されています。

特筆すべきは、Tiandu-1衛星が地球から約13万キロメートル離れた位置にあったという点です。これは地球-月間の距離(約38万キロメートル)の約3分の1にあたり、この距離でも太陽光干渉下でのレーザー測距に成功したことは、技術的難易度の高さを物語っています。

この実験には1.2メートル望遠鏡に搭載された近赤外線レーザー測距システムが使用されました。従来の技術では太陽光によるバックグラウンドノイズがレーザー信号を圧倒してしまうため、地球-月間のレーザー測距は夜間に限られていましたが、この技術的障壁を突破したことで観測窓が大幅に拡大されました。

レーザー測距技術は、衛星の軌道を正確に把握するための最も精密な方法として知られています。この技術の応用範囲は広く、将来的には月面着陸船の高精度誘導や、月面での複数ローバーのリアルタイム調整など、月面活動の自律性向上に大きく貢献するでしょう。

また、この成果は中国単独ではなく、中国深宇宙探査実験室、中国科学院雲南天文台、上海天文台、中山大学、上海衛星工程研究所、北京航天飛行制御センターなど複数の研究機関による共同研究の結果であることも注目に値します。これは中国が宇宙開発において国内の研究リソースを効果的に結集していることを示しています。

Tiandu-1衛星は2024年3月20日に打ち上げられ、3月29日に月周回軌道に到達、4月3日に分離されました。この衛星は中国の計画中の地球-月通信・航行ネットワーク構築のための技術検証を行っており、2030年までに予定されている月面ミッションの基盤となる技術です。

この技術が実用化されれば、中国とロシアが共同開発を進める「国際月面研究ステーション」計画にも大きく貢献することになるでしょう。同ステーションは2035年までに月の南極での研究活動開始を目指しており、24時間体制での地球-月間通信は長期的な月面活動において不可欠な要素となります。

innovaTopia読者の皆さんにとって、この技術の意義は単なる宇宙開発の一歩にとどまりません。高精度のレーザー照準技術は、地上での自動運転車の障害物検知システムや高精度測位技術など、私たちの日常生活に関わる技術にも応用される可能性を秘めています。

宇宙開発における国際競争が激化する中、日本を含む各国も同様の技術開発を進めていますが、日中の地球-月間レーザー測距に成功したのは中国が初めてです。今後、この技術がどのように発展し、国際協力や競争にどのような影響を与えるのか、引き続き注目していく必要があるでしょう。

【用語解説】

Deep Space Exploration Laboratory (DSEL/Tiandu Laboratory):
中国国家航天局、安徽省、中国科学技術大学が共同設立した深宇宙探査研究機関。本部は合肥市にあり、北京にも拠点を持つ。深宇宙探査の戦略的研究や技術開発を行っている。

レーザー測距:
対象物にレーザーを照射し、その反射光が戻ってくるまでの時間から距離を測定する技術。GPSが使えない月面などの宇宙空間での位置測定に重要である。

Tiandu(天都)衛星:
月周回軌道で通信技術や衛星測位システムの試験を行う中国の人工衛星。天都1号と天都2号の2機から構成され、2024年3月20日に打ち上げられた。

Queqiao(鵲橋)中継衛星:
地球と月の裏側にある探査機との通信を中継するための衛星。鵲橋2号は2024年3月に打ち上げられ、嫦娥6号ミッションをサポートしている。

嫦娥計画:
中国の月探査プログラム。嫦娥6号は2024年6月25日に月の裏側からのサンプルリターンに成功した。計画は段階的に進められており、将来的には月面基地建設を目指している。

【参考リンク】

中国国家航天局(CNSA)(外部)
中国の宇宙開発を統括する政府機関。嫦娥計画など中国の宇宙探査ミッションを管理している。

中国航天科技集団有限公司(外部)
中国の主要な宇宙開発企業。ロケットや衛星、宇宙船の開発・製造を担当している。

【参考動画】

【編集部後記】

この記事を読んで、地球から38万キロメートル離れた月へのレーザー照射技術に思いを馳せてみませんか?私たちの日常では考えられないような精度で、しかも太陽光の干渉下でこれを実現する技術の応用可能性は無限大です。あなたなら、この技術をどんな分野に活かせると思いますか?宇宙開発の進展は、単なる「遠い世界の話」ではなく、私たち一人ひとりの未来を形作る重要な要素かもしれません。ぜひSNSで皆さんのアイデアや感想をシェアしていただければ嬉しいです。

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TaTsu
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