Last Updated on 2025-05-20 13:55 by admin
MITとウッズホール海洋研究所の共同研究チームは、3Dガウシアンスプラッティングを応用した水中映像処理技術を開発した。複数角度から撮影した画像から光の散乱・吸収効果を物理モデルで除去し、水の影響を受けない3Dシーンを構築可能。従来の2D画像処理技術「Sea-Thru」と比較して、計算時間を87%短縮しつつサンゴ礁の3次元構造をマイクロメートル精度で可視化する。
References:
Imaging technique removes the effect of water from underwater scenes | MIT News
Coral Reef Monitoring Project | Woods Hole Oceanographic Institution
【編集部解説】
水中視覚のデジタル浄化
この技術は水中カメラの「レンズ曇り」をソフトウェアで解決する画期的な手法です。例えば水深20mで撮影した赤いサンゴは、青色光の散乱で実際の色より最大60%褪せて記録されますが、物理モデルに基づく逆計算で本来の色調を復元します。
生態監視の新地平
2025年4月の実証実験では、紅海のサンゴ礁で1cm²あたり300個のポリプを識別可能でした。研究者は「水中ドローンで撮影したデータを船上で即時処理し、白化現象の早期警告システム構築が可能」とコメントしています。
産業応用の展望
現在1フレームの処理にGPUを要しますが、2026年までにエッジコンピューティング対応を目指しています。実用化されれば、海底ケーブル検査や海洋プラスチック調査の効率化が期待されます。
【用語解説】
3Dガウシアンスプラッティング:
複数の視点画像から3Dモデルを構築する手法。ガウス分布で表現した粒子状の点群を使い、自然な3D再構成と高速なレンダリングを実現します。
後方散乱:
水中でカメラと被写体の間を往復する光が画像に白濁やぼやけをもたらす現象。波長や水質によって影響が異なります。
光の減衰:
水中で光が進むにつれて波長ごとに吸収され、特に赤色光が急速に失われる現象。水深が深いほど顕著です。
【参考リンク】
MIT News(外部)
MITが発表した水中3Dモデリング技術の詳細と研究背景を解説した公式ニュース。
Woods Hole Oceanographic Institution(外部)
ウッズホール海洋研究所によるサンゴ礁モニタリングプロジェクトの概要と最新成果。