ReactOS|名作ゲーム「Half-Life 2」の動作に成功、30年目のオープンソースWindows互換OS

[更新]2026年7月7日

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何十年も前に作られたゲームが、何十年も前のドライバーをまとったまま、いまも実機の上でちゃんと遊べてしまう。ソースコードを一行も見ずに、挙動だけを頼りに積み上げてきた成果が、思いがけない形で顔を出しました。地味な作業がここまで育つのを見るのは、単純に楽しいものです。


オープンソースの「Windows互換」OSプロジェクトReactOSが、Valveのゲーム「Half-Life 2」の動作に成功した。1か月前の6月上旬にはHalf-Lifeの動作が確認されており、その際はIntel Sandy Bridge世代のデスクトップとNVIDIA GeForce 8400GSを使用していた。

今回はReactOSのナイトリービルド上で、GeForce GTX 960にNVIDIA 368.61(一部報道では368.81との記載もあり)のレガシードライバーとCreative Sound Blaster Audigy用Windowsドライバーを導入してテストが行われた。ReactOSユーザーのAotori Hibiki氏がプレイの様子をYouTubeで公開している。また同時期に、ReactOSはWindows NT6系として初のシステムコールを実装し、Windows Vista以降との互換性に向けた最初の一歩とした。

From: 文献リンクReactOS “Open-Source Windows” Project Now Capable Of Running Half-Life 2

【編集部解説】

今回の一件で注目すべきは、「ゲームが動いた」という表面的な事実よりも、それが何を意味するかという点です。Half-Life 2はValveが2004年に発表したSource engineベースの作品で、グラフィック・音声・入力・ファイルシステムなど、Windows APIの広い範囲に依存しています。こうした複合的な要求に応えられたということは、ReactOSという開発プロジェクトの内部で、個別のサブシステムがようやく噛み合い始めていることを示していると考えられます。

ReactOSは、既存のOSの上にWindows互換レイヤーを載せるWineのようなプロジェクトとは、立ち位置が異なります。Wineが既存OSの上に互換層を乗せる発想であるのに対し、ReactOSはOSそのものをゼロから再実装し、Windows NTファミリーとバイナリレベルで互換性を持たせることを目指しています。今回のテストで、グラフィックカードやサウンドカード用の実際のWindows向けレガシードライバーがそのままインストールされ動作した点は、この「バイナリ互換」という目標に対する具体的な進展を示しています。

ただし、この進展を実際以上に大きく見せることには注意が必要です。ReactOSはプロジェクト開始から30年近くが経過していますが、公式には今もアルファ版であり、日常利用ではなく評価・検証目的での使用が推奨される段階にとどまっています。開発の焦点は現在もWindows Server 2003世代の互換性が中心で、Windows Vista以降(NT6系)への対応は、今回報じられたシステムコールの実装をもって、ようやく足がかりができた段階です。

この話題がなぜ今取り上げる価値を持つかといえば、Windowsをめぐる環境そのものが変化しているためです。Windows 10のサポートが終了し、対応要件を満たさない古いハードウェアをそのまま使い続けたいという需要が指摘されています。ReactOSが目指す方向性は、こうした需要に対するオープンソース側からの一つの応答になり得ますが、現状のReactOSがその受け皿として実用段階にあるとは言えず、あくまで技術的な実験と検証が積み重ねられている途上だという点は、正確に伝えておく必要があります。

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【編集部後記】

継続的な仕事は、たいてい可視化に向いていません。ReactOSの開発も同様で、サブシステムが少しずつ噛み合っていく過程そのものは、記事にしにくい性質を持っています。私たちがこの一件に気づけたのは、Half-Life 2という誰もが知る固有名詞が、たまたま検証の閾値として機能したからです。技術の進み方と、それが報じられる契機とのあいだには、常にずれがあります。私たちが「動いた」というニュースとして受け取っているものの多くは、実際にはもっと連続的で地味な過程の、たまたま可視化された断面に過ぎないのかもしれません。

【用語解説】

バイナリ互換性:ソースコードを再コンパイルせず、既存の実行ファイル・ドライバーをそのまま動作させられる互換性の度合い

レガシードライバー:旧世代のOS・ハードウェア向けに作られた、周辺機器動作用の古いドライバーソフトウェア

ナイトリービルド:最新のソースコードから毎日自動生成される、安定性が保証されない開発中のビルド

NT5系/NT6系:Windows NTカーネルの世代区分。NT5系はWindows XP・Server 2003、NT6系はWindows Vista以降を指す

【参考リンク】

ReactOS公式サイト(外部)
オープンソースの「Windows互換」OS開発プロジェクトの公式サイト。ダウンロード、開発状況、コントリビュート方法を掲載。

Half-Life 2公式サイト(Valve)(外部)
2004年発表のSource engineベースFPS作品の公式ページ。開発チームによる説明とストーリー概要を掲載。

Wine公式サイト(WineHQ)(外部)
Linux・macOSなどでWindowsアプリケーションを動作させるオープンソース互換レイヤーの公式サイト。

【参考記事】

ReactOS GitHubリポジトリ(公式)(外部)
現状の開発対象がWindows Server 2003世代中心である点、Vista以降への展望を明記した公式説明。

ReactOS, an Open Source Take on Windows|The New Stack(外部)
Windows 10サポート終了後も既存ハードウェアを使い続けたい層の存在に触れたレビュー記事。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。