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グレイソン・ペリー×AI – 著名アーティストが自身の展覧会で語るAIの在り方

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-19 13:26 by admin

イギリスの現代アーティスト、グレイソン・ペリー(Grayson Perry)は、2025年3月28日から10月26日(現地時間、日本時間同日)まで、ロンドンのウォレス・コレクション(The Wallace Collection)で自身最大規模となる展覧会「Delusions of Grandeur(壮大な妄想)」を開催している。展示では、陶芸やタペストリー、ドローイング、彫刻など約40点の新作が、同館所蔵の14世紀から19世紀の美術品と並べて公開されている。

今回の展覧会では、AI(人工知能)技術を活用したセルフポートレート画像を陶器作品として再構成するなど、伝統的な手法と最先端のデジタル技術を融合させた作品が目玉となっている。AIが生成した画像をもとに、一点物の陶芸作品「Totally Unique Thing」シリーズも制作・販売されている。

ペリーは2025年5月18日にチャールストン文学フェスティバルで、自身の作品がAIの学習データとして利用されることについて「全く気にしない」と発言し、「私は文化的盗用の世界チャンピオンだ」とユーモアを交えて自己紹介した。

グレイソン・ペリーは2023年にナイトの称号を授与され、イギリスを代表する現代アーティストとして知られている。今回の展覧会は彼の65歳の誕生日に合わせて企画され、ウォレス・コレクション史上最大規模の現代美術展となっている。

References:
文献リンクWorld champion of appropriation Grayson Perry says he isn’t bothered by AI using his work | The Guardian
文献リンクExhibition Review: “Delusions of Grandeur” at the Wallace Collection | Observer
文献リンクGrayson Perry: Delusions of Grandeur | The Wallace Collection
文献リンクBritish artist Grayson Perry indulges playful side in new show | The Star

【編集部解説】

グレイソン・ペリーによるウォレス・コレクションでの展覧会は、AI技術と伝統的な陶芸表現が融合した現代アートの最前線を示しています。今回の展示で注目すべきは、AIが生成したセルフポートレート画像をもとにした陶芸作品「Totally Unique Thing」シリーズです。これにより、アーティストの個人的な創作とAIが生み出すデジタルイメージが、物理的な一点物として結実しています。

ペリーは「文化的盗用の世界チャンピオン」と自らを皮肉交じりに語っていますが、これは芸術家が常に過去の作品や他者の表現から影響を受けてきたという芸術史の本質を示唆しています。AIもまた膨大な過去のデータを学習し、新たな表現を生み出す点では人間の創作と共通点があります。しかし、AIによる創作は独自性や意図、責任の所在が曖昧になりやすく、著作権侵害やディープフェイクなどの倫理的・社会的リスクが現実の問題として浮上しています。

現代のAI技術は、単なる模倣を超えて、時に人間の創造性を刺激し、伝統と革新の新たな接点を生み出す可能性を持っています。一方で、AIが生成する作品の権利帰属や、文化的要素の無断利用がもたらす社会的影響については、国際的にも議論が続いています。特に欧米では、AIによる創作物の著作権や原作者へのロイヤルティ分配の法整備が進められつつあり、今後のグローバルな基準形成が注目されています。

AIと人間の創作活動が今後どのように共存し、社会に受け入れられていくかは、技術の進化だけでなく、私たち一人ひとりの理解と選択にかかっています。ペリーのようなアーティストの実践は、AI時代の創造性や芸術の価値を考える上で、重要な問いを投げかけているといえるでしょう。

【用語解説】

グレイソン・ペリー(Grayson Perry)
1960年生まれのイギリス現代アーティスト。陶芸やタペストリー、ドローイングなど幅広い表現で社会やジェンダー、アイデンティティをテーマに作品を発表している。2003年ターナー賞受賞、2023年にナイトの称号を授与。

文化的盗用(Cultural Appropriation)
他文化の要素や表現を無断で取り入れ、独自の文脈や利益のために利用すること。芸術やファッション、音楽などで倫理的な議論が起きやすい。

アウトサイダーアート
美術教育を受けていない人や社会の主流から外れた立場の人々による芸術活動。独自の世界観や表現が評価される。

シャーリー・スミス(Shirley Smith)
ペリーが展覧会のために創作した架空の人物。自身をウォレス・コレクションの正当な後継者と信じる女性で、展覧会の物語の軸となっている。

【参考リンク】

The Wallace Collection「Delusions of Grandeur」(外部)
ロンドンの歴史ある美術館。グレイソン・ペリー展「Delusions of Grandeur」の公式情報、チケット予約、展示概要を掲載している。

Victoria Miro(外部)
グレイソン・ペリーの所属ギャラリー。展覧会や作品情報、アーティストの最新ニュースを提供している。

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