ランド・フィッシュキン氏が共同創業者を務めるSparkToroが、Similarwebのクリックストリームデータを用いて、Googleのゼロクリック検索に関する継続的な分析を公開した。
分析によると、Google検索の68.01%がクリックされずに終了している。Google内で完結する再検索や、AI Mode・YouTube・Maps・ImagesなどGoogle側のサービスへのクリックも含めて見ると、オープンウェブへ向かうクリックは約23%程度にとどまる。Similarwebのデータはこの傾向を示している。
クリックされた32%の内訳は、66%がオープンウェブ、27%がAI Mode・YouTube・Maps・Imagesなど、6%が有料広告である。アメリカでのGoogle検索1,000件あたり、オープンウェブへ向かうクリックは232件となる。この傾向は、GoogleがGoogle検索内にAI Overviewsを導入して以降、より顕著になっている。
From:
Report: Google Zero Click Searches To Open Web Fall To 27.6%
【編集部解説】
まず押さえておきたいのは、この調査が示すのは「あなたのサイトへのクリックが減った」という話ではなく、「Google検索が、どこへもクリックさせずに完結する場になりつつある」という構造の変化だという点です。分析を主導したランド・フィッシュキン氏は、2026年最初の4カ月でGoogle検索の68%が、どこへも遷移せずに終わったと述べています。これは特定サイトの問題ではなく、オープンウェブ全体が痩せていく現象です。
ここで一つ、元記事を含む多くの報道で混同されやすい点を整理させてください。今回の流入減を「AIの回答(AI Mode)のせいだ」と読むのは、まだ正確ではありません。フィッシュキン氏自身、2026年1〜4月にAI Modeへ到達した検索はわずか0.34%にすぎず、現時点ではAI Modeがこの変化を引き起こしたわけではないと明言しています。
では何が効いているのか。短期的には、独立した対話モードであるAI Modeよりも、通常の検索結果の最上部に答えを表示する「AI Overviews」や、検索内で完結する回答全般の影響が大きいと見られています。AI Overviewsは現在20%以上の検索に表示され、表示時はクリック率をおよそ60%押し下げるとされます(この数値自体はAhrefsの集計で、クエリや業種により変動します)。ただし今回の調査はAI Overviewsの寄与を厳密に切り分けたものではないため、断定は避けるべきです。AI Mode(独立した対話型の検索モード)とAI Overviews(通常の検索結果上のAI要約)が別物であることを押さえたうえで、複数の要因が重なって生じている現象として捉えるのが適切でしょう。
そして重要なのは、この流れがAIブーム以前から続く長期トレンドだということです。10年前は約45%だったゼロクリック率が、今は68%。差し引き23ポイントの上昇です(SparkToroはこれを33.8%増とも表現していますが、誤解を避けるため本稿では「23ポイント上昇」を主に用います)。2024年の60.45%から2年で7.56ポイント上がっており、これは過去10年で最も速い加速とされます。AIはこの坂道を急にしただけで、坂そのものは以前から存在していました。
数字の中身も見ておきましょう。検索後の行動は3つに分かれます。39%が次の行動をせずに終わり、29%がGoogleの検索窓で再び検索し、32%が何らかのクリックに至ります。そのクリックのうち、オープンウェブへ向かうのは66%。結果として、米国のGoogle検索1,000件あたりオープンウェブに到達するのは232件、つまり約23%にとどまります。3件に2件以上は、外の世界へ出ていかないわけです。
なぜGoogleがこの方向を止めないのか。答えは身も蓋もないのですが、構造的にビジネスとして成立しているからだと考えられます。フィッシュキン氏は、こうした変化がGoogleの広告収益と投資家の信頼をともに押し上げており、この進化が鈍化・反転する可能性は低いと指摘しています。ユーザーをプラットフォーム内にとどめるほど再検索が増え、広告が見られ、収益が上がりやすい。利用者の利便性と企業の収益が同じ方向を向いている以上、技術的にも経営的にも逆回転しにくいわけです。
規制の観点も見逃せません。米国の対Google反トラスト訴訟は、2025年9月の救済判断で一つの節目を迎えました。裁判所はGoogleにChromeやAndroidの売却(事業分割)までは命じず、この点は多くの専門家からGoogle側の勝利と受け止められています。一方で、検索を初期設定にする独占的な配信契約の禁止や、一部の検索データを競合へ開放する義務、6年間の監視といった是正措置は命じられました。とはいえ、検索の優位を支えてきた仕組みそのものが解体されたわけではなく、控訴も見込まれます。少なくとも当面、検索体験をエコシステム内へ囲い込む流れに、外圧で急ブレーキがかかる状況にはなっていません。
もっとも、Google側はこの見方に反論しています。検索担当バイスプレジデントのリズ・リード氏は、オーガニックのクリック総量は「比較的安定している」とし、AI機能によってユーザーが短い確認目的のクリックをしなくなる一方で、実際にサイトへ移動するクリックの質は高まっていると説明しています。ただしGoogleはこれを裏づける詳細なデータを公開しておらず、SparkToroが測っているのは「検索あたりのクリック率」であって、クエリ数の増加が補えば総量は横ばいでも成立しうるため、両者は必ずしも矛盾しません。どちらが実態に近いのかは、データを握るGoogle自身しか証明できないのが現状です。
一方で、この調査の数字を絶対視しすぎない冷静さも必要です。2016年と2019年の数値は今は存在しないJumpshot、2024年はDatos、2026年はSimilarwebと、年ごとにデータ提供元が異なり、フィッシュキン氏自身が年をまたいだ比較を「リンゴとオレンジの比較」と呼んでいます。傾向の方向は各社のデータで概ね同じですが、小数点以下の精度を真に受けるより、「3分の2が外に出ない時代に入った」という地殻変動として読むのが適切です。
では、私たちはどう動けばよいのか。フィッシュキン氏が提示する処方箋は、SEOの否定ではありません。検索順位は依然として重要であり、むしろAIの回答は上位表示されたコンテンツを大量に参照するため、上位を取ること自体がブランドの影響力につながります。変わるのは目的のほうです。「サイトへ連れてくる」から「サイトに来てもらわなくても態度変容を起こす」へ。トラフィックをKPIから外し、ブランド認知や影響力を測る指標へ移行するという発想転換が、これからの数年を左右すると言えるのでしょう。
【用語解説】
ゼロクリック検索(zero-click search)
検索した利用者が、検索結果ページ上で答えを得てしまい、どのサイトへも遷移せずに終わる検索のこと。AIによる要約、強調スニペット、ナレッジパネルなどが答えを直接示すことで起きる。
AI Overviews
Googleの通常の検索結果ページの最上部に、AIが生成した要約を表示する機能。米国では20%以上の検索に表示され、表示時はクリック率を約60%押し下げるとされる。AI Modeとは別物である。
AI Mode
Googleが提供する対話型の検索モード。通常の検索結果とは独立した体験であり、2026年1〜4月時点では検索全体の0.34%にとどまる一方、Search Engine LandはGoogle I/O 2026で月間ユーザーが10億人を超えたと報じている。
クリックストリーム(clickstream)
利用者が実際にどのページをどの順でクリックしたかを記録した行動データ。アンケートではなく実際の挙動を集計するため、検索行動の分析で信頼性が高いとされる。
反トラスト訴訟(antitrust case)
独占禁止法に基づき、市場での競争を阻害する行為を問う訴訟。本件では、米国の対Google訴訟で2025年9月に救済判断が出され、Chrome等の事業分割は回避された一方、独占的な配信契約の禁止やデータ開放などの是正措置が命じられた。
バウンスクリック(bounce click)
利用者が必要な事実だけを得てすぐ離脱する、滞在の短いクリックのこと。GoogleはAI機能によって短い確認目的のクリックが減る一方、実際にサイトへ移動するクリックの質は高まっていると説明している。
【参考リンク】
SparkToro(外部)
今回のゼロクリック分析の発表元。共同創業者フィッシュキン氏が長年データを公表するオーディエンスリサーチ企業。
Similarweb(外部)
今回の分析の元データを提供した分析企業。デスクトップとモバイルのクリックストリームのパネルを保有する。
Google(外部)
調査対象の検索エンジンを運営。AI OverviewsやAI Modeなど、検索へのAI統合を進める当事者である。
【参考記事】
In 2026, Less than One Third of Google Searches Still Send a Click(外部)
本件の発表元による一次分析。68.01%がクリックなしで終了し、主因はAI ModeではなくAI Overviewsと示す。
Google Search Sends 23% Of Queries To The Open Web(外部)
一次データを最も明確に整理。オープンウェブ到達は1,000件あたり232件(約23%)と算出し、Googleの反論も紹介する。
Google zero-click searches reach 68% in early 2026: Study(外部)
同分析を報道。クリック発生率が9.51ポイント(22.9%)減、I/O 2026のAI Mode10億人なども整理する。
In a major antitrust ruling, a judge lets Google keep Chrome but levies other penalties(外部)
2025年9月のメータ判事による救済判断を報道。Chrome売却回避と、独占契約禁止・データ開放などの是正措置を整理。
【関連記事】
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SparkToro調査の前史にあたるPew研究所の調査。別データでも同じ傾向が示されている点を確認できる。
【編集部後記】
今回の記事では、私たち自身が「検索からの流入」という地面の上に立っていることをあらためて意識させられました。答えが検索結果のなかで完結していく時代に、わざわざサイトを開いてもらうということがどういうことなのか。便利さに抗うのではなく、便利さの先で「それでも会いに来たい」と思っていただける場所であること。私たちinnovaTopia が目指しているのも、そういう場所です。みなさんが今日この記事に触れてくださったことを、静かに受け止めています。












