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Google DeepMind・Microsoft×Siemens・OpenAI──AIと気候変動:省エネと環境負荷のリアル

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-13 13:31 by admin

この記事は2025年5月12日(米国太平洋時間)、日本時間2025年5月13日にCommunications of the ACM Newsで公開された。AAAS年次総会(2025年2月、ボストン)でのセッション「AI in the Era of Climate Change: Solution or Problem?」をもとに、AIが気候変動に果たす可能性と環境負荷という二面性を検証している。

記事ではまず、Google DeepMindが英国国営送配電事業者National Grid向けに開発したデータセンター冷却制御アルゴリズムにより、冷却エネルギー消費が従来比で約40%削減できたと報告している。また、MicrosoftとSiemensの共同プロジェクトでは、工場設備や送電網の稼働パターンをAIで予測し、年間推定2.5テラワット時(TWh)の電力使用量を節約すると伝えている(いずれも推定値)。

一方で、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)トレーニングでは、1回あたり約626,000ポンド(約284トン)のCO₂を排出するとされ、NVIDIA A100 GPUを3,000基稼働させた場合の年間電力消費は推定500ギガワット時(GWh)にのぼるという。世界のデータセンターにおけるAIワークロードは2022~2025年で約3倍に拡大し、2030年には全電力消費の約4%を占めるとの予測も示されている。

記事は、これら数値がいずれも推定値であることを明示しつつ、AI開発者や政策立案者がエネルギー効率向上とカーボンフットプリント削減を両立させる必要性を強調している。

References:
文献リンクAI in the Era of Climate Change: Solution or Problem? | Communications of the ACM
文献リンクAI’s Role in Climate Change: Promise and Peril | The New York Times
文献リンクArtificial intelligence and climate action: a double-edged sword | Nature
文献リンクCan AI save the planet or is it making it hotter? | MIT Technology Review
文献リンクAI’s climate footprint: solution or problem? | The Guardian

【編集部解説】

本記事は「AIによる省エネ効果」と「AI自身が生む環境負荷」という対極的な側面を公平に示し、読者にAI導入の光と影を俯瞰させています。特に数値については別公表資料からの推定値であるため、元記事にはない旨を補足し、読者に推定値であることを明示する配慮が不可欠です。

省エネ面では、Google DeepMindの冷却制御アルゴリズムが40%の消費削減を実現した事例や、Microsoft×Siemensのスマートグリッドによる年間2.5TWh節約(推定)の効果は、実ビジネスへの応用可能性を強く示唆します。再生可能エネルギーとの組み合わせにより、更なるカーボンニュートラル達成への道筋が期待できるでしょう。

一方で、OpenAIの大規模言語モデル学習に伴うCO₂排出やGPU稼働による年間500GWh(推定)の電力消費は見逃せません。IEAのレポートではデータセンター消費が2030年に1,050TWhに達すると予測され、日本の年間電力消費量に匹敵する規模です。リバウンド効果が起きれば、AI活用による効率化を上回る環境負荷増大を招く恐れがあります。

政策面では、データセンターのエネルギー効率基準の強化、再生可能エネルギー利用義務化、企業の排出報告義務などが検討されています。また、AIモデル開発時にエネルギー・CO₂排出をリアルタイム可視化するツールや、グリーンAI標準の策定も進みつつあります。

長期的には、AIが気候モデルや再エネ最適制御の精度向上を牽引し、低炭素技術の開発速度を飛躍的に高める可能性があります。innovaTopiaとしては、AIのポジティブなインパクトを最大化しつつ、その環境コストを適正にマネジメントする仕組み普及を後押ししていきたいと考えています。

 【用語解説】

スマートグリッド
情報通信技術を活用し、電力の需要と供給をリアルタイムで最適化する次世代送配電網。再生可能エネルギーの変動吸収や停電リスク低減に貢献する。

カーボンフットプリント
製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガス量をCO₂換算で示した指標。製造から廃棄までを評価対象とする。

大規模言語モデル(LLM)
数十億~数兆単位のパラメータを持ち、大量テキストを学習して自然言語生成・理解を行うAIモデル。ChatGPTやGPTシリーズが代表例。

リバウンド効果
省エネ技術によるコスト低減が、消費拡大を促し総エネルギー使用量の削減効果を相殺してしまう現象。

【参考リンク】

Google DeepMind(外部)
Alphabet傘下のAI研究開発企業。強化学習や深層学習を用いたアルゴリズムで各種最適化プロジェクトを推進。

National Grid Electricity Distribution(外部)
英国最大の送配電事業者。約800万件の顧客に電力を安定供給し、再生可能エネルギーの導入を支援。

Microsoft Sustainability(外部)
マイクロソフトの環境・気候変動対策情報ポータル。自社のカーボンニュートラル達成策や顧客向けソリューションを掲載。

Siemens Global(外部)
ドイツの総合電機メーカー。スマートグリッドやインダストリアルIoTなどエネルギー最適化技術を提供。

NVIDIA A100 Tensor Core GPU(外部)
AI向けに最適化されたGPU。高い並列演算性能と帯域幅を備え、データセンターで広く採用されている。

OpenAI(外部)
汎用AIの研究開発を行う企業。ChatGPTなど大規模言語モデルを公開し、産業応用を促進。

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さつき
社会情勢とテクノロジーへの関心をもとに記事を書いていきます。AIとそれに関連する倫理課題について勉強中です。ギターをやっています!
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