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ーTech for Human Evolutionー

デンマーク著作権法改正でディープフェイク対策強化、身体的特徴や声も法的保護へ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

デンマーク政府は、AIによるディープフェイク対策として、個人が自分自身の身体的特徴や顔、声に対する権利を持つことを保証する著作権法改正を進めている。

2025年6月26日(現地時間、日本時間6月27日)、デンマーク政府はAIによるディープフェイクの作成や拡散を抑制するため、著作権法を改正し、すべての人が自分の身体的特徴、顔、声に対する権利を持つことを保証する方針を発表した。

文化省は夏季休会前に改正案を諮問にかけ、秋に法案を提出する予定である。今回の改正案は、議会議員の9割が支持しているとみられる。法改正が承認されれば、デンマーク国内の人々は同意なく共有された場合に、オンラインプラットフォームに対してそのコンテンツの削除を求める権利を持つことになる。

また、アーティストのパフォーマンスを同意なくリアルにデジタル生成した模倣も対象となり、違反した場合には被害者に補償が認められる可能性がある。新しいルールはパロディや風刺には適用されない。プラットフォームが新法に従わない場合、厳しい罰金が科される可能性があり、欧州委員会が対応することもあり得る。デンマーク政府は、他のヨーロッパ諸国にも同様の取り組みが広がることを期待している。今回の法案の背景には、著名人やアーティストの声や映像が無断でAI生成物に利用される被害の増加がある。AI生成物がどの程度「本人」と類似しているかの判断基準は現時点で明文化されておらず、今後の運用や判例による解釈が注目される。

from:文献リンクDenmark to tackle deepfakes by giving people copyright to their own features | The Guardian

【編集部解説】

デンマークのディープフェイク対策法案は、AI技術の急速な進展に伴い、個人の身体的特徴や声、顔に対する権利を新たに著作権法上で保護する画期的な取り組みです。これまでデンマークには日本の肖像権のように明文化された権利はなく、プライバシーや人格権の一部として保護が行われてきましたが、AIによるデジタル模倣の急増により現行法では対応が困難となっていました。

今回の改正案は、個人の身体的特徴や声を「著作物」として法的に保護し、本人の同意なく生成・拡散されたディープフェイクに対しては、プラットフォームに削除を求める権利を明確に付与します。違反時には損害賠償請求が可能となり、プラットフォームが対応しない場合は厳しい罰金も科される見込みです。一方で、パロディや風刺は表現の自由を尊重し規制対象外としています。

この法案は議会の約9割の支持を得ており、2025年夏に諮問、秋に法案提出、年内または翌年初頭の成立を目指しています。デンマークはEU議長国として、このモデルを欧州全体に広げる意向を示しており、国際的な規制の先駆けとなる可能性があります。

AI生成物がどの程度「本人」と認定されるかについては、現時点で明確な技術的・法的基準は示されておらず、今後の運用や判例形成が注目されます。具体的には顔認識技術の類似度指標や声の波形分析などが参考にされる可能性がありますが、パロディや風刺との線引きも含めて慎重な判断が求められます。

著名人の声や映像が無断でAI生成物に使われる被害が増加していることも背景にあり、セリーヌ・ディオンなど複数のアーティストが警告を発しています。こうした被害を防ぐための法的枠組みとして、デンマークの法案は世界的にも注目されています。

今後、技術の進歩とともにディープフェイクの社会的リスクは増大するため、法整備やプラットフォームの対応強化が不可欠です。デンマークの取り組みは、AI時代の個人のデジタルアイデンティティ保護の新たな基準となり得るでしょう。

【用語解説】

ヤコブ・エンゲル=シュミット
デンマークの文化大臣。ディープフェイク規制法案の中心人物で、市民のデジタルアイデンティティ保護を訴えている。

【参考リンク】

デンマーク文化省(外部)
デンマーク政府の文化政策や著作権法改正に関する公式情報を提供するサイト。

【参考記事】

Denmark wants to strengthen personal rights against deepfakes|heise online
デンマークがEU議長国として、ディープフェイクによる個人データ悪用を防ぐための法改正と権利拡大を目指す動きを詳しく解説している。

Denmark To Fight Deepfake Content With Changing Legislation|The European Conservative
デンマーク政府がAIディープフェイク対策として著作権法改正を進める背景と、議会の広範な支持状況をまとめている。

Denmark clamps down on deepfakes by letting people copyright their own features|TechCrunch
デンマークの新法案の詳細、米国など他国のディープフェイク規制との比較、法案成立までの流れを解説している。

Danes Could Get Copyright to Their Own Image Under AI Bill|TIME
デンマークの法改正が国民に与える影響、著名人や一般市民の被害事例、米国の最新動向との違いを紹介している。

Denmark seeks to make spread of deepfake images illegal, citing misinformation concerns|Euronews
ディープフェイクがもたらす社会的リスク、デンマークの法的対応、国際的な規制の動きについてまとめている。

【編集部後記】

 今回のデンマークのディープフェイク対策法案は、AIやデジタル技術が社会に深く浸透する中で、既存の法律を時代に合わせてアップデートするという意味で非常に象徴的な動きだと言えるでしょう。プライバシーの保護や、ディープフェイクによる被害の未然防止は、今後ますます重要になるテーマです。私自身、生成AIの進化には大きな期待を持っていますが、同時に社会全体が安心して新技術を活用できる環境づくりも不可欠だと考えています。

一方で、規制が強すぎると、開発現場やユーザーがAI技術そのものに対して萎縮し、イノベーションが停滞するリスクもあります。今回のデンマークのように、既存の法体系を柔軟に見直しながら、個人の権利と技術の発展を両立させるアプローチは、他国や他分野にも参考になるでしょう。

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