一度閉じた仮想空間は、名前と機能を戻せば同じ場所として再生できるのでしょうか。AltspaceVRの再始動計画から見えてくるのは、ソーシャルVRにおいて、技術以上にコミュニティの記憶や参加しやすさを受け継ぐ難しさです。
ソーシャルVRプラットフォーム「AltspaceVR」の名称に関する権利を、「SideQuest」のCEOであるShane Harris氏が取得し、2026年秋の再始動を計画している。新サービスは旧版の完全な復元ではなく、2016~2017年頃の機能や文化を引き継ぐ精神的後継と位置づけられる。
旧AltspaceVRのスタッフや初期利用者が開発に参加し、ロボット型アバターの刷新とカスタムアバター対応を予定する。Microsoft傘下だった旧サービスは2023年3月に終了していた。元記事では、対応機器、料金、正式な公開日は明らかにされていない。
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AltspaceVR Will Relaunch This Fall Under SideQuest CEO Shane Harris
【編集部解説】
今回の再始動で特徴的なのは、終了時点のAltspaceVRをそのまま復元するのではなく、2016~2017年頃の機能や体験を基準としていることです。Shane Harris氏は、新しいAltspaceを旧サービスの「精神的後継」と位置づけ、旧スタッフや初期から活動していた利用者とともに開発を進めていると説明しています。
これは、サービス終了直前の状態を技術的に再現する計画とは異なります。新しいシステムや多機能なアバターを競うのではなく、利用者が集まり、会話し、イベントやコミュニティを形成していた初期Altspaceの設計を、現在のVR環境に合わせて作り直そうとしていると考えられます。ロボット型アバターを現代向けに刷新しながら、カスタムアバターにも対応する方針からも、過去の象徴を残しつつ現在の利用者にも選択肢を与える姿勢が読み取れます。
SideQuestは、すでに「Banter」というソーシャルVRサービスを運営しています。Banterは、物理演算を使った遊び、数百のワールド、カスタマイズ可能なアバター、ミニゲーム、日常的なイベントなどを特徴として掲げています。
そのため、新しいAltspaceがBanterと似た機能を備えるだけでは、SideQuestが2つのソーシャルVRサービスを運営する意味が分かりにくくなります。現時点では両サービスの役割分担は発表されていませんが、Banterが物理的な動きやゲーム性を前面に出す一方、Altspaceは会話、イベント、コミュニティ運営を中心とした空間として再構築される可能性があります。これは公表済みの計画ではなく、両サービスの現在の説明から読み取れる編集部の見方です。
ソーシャルVRでは、アプリを公開するだけでは以前の体験を再現できません。どのような利用者が集まり、どのようなイベントが開催され、利用者同士の行動規範がどのように形成されるかによって、同じ機能を備えたサービスでも体験は変わります。
旧スタッフだけでなく、初期から活動していた利用者を開発チームに加えている点は、機能一覧だけでは再現できないコミュニティの知識を取り込む試みとみられます。一方、元記事および今回確認できた告知では、旧サービスのアカウント、ワールド、イベント履歴、利用者が制作したコンテンツの継承方法は示されていません。対応機器、利用料金、モデレーション体制、正式な提供地域についても、元記事では明らかにされていません。
また、UploadVRは2026年秋の再始動予定と報じていますが、記事内で紹介されたHarris氏の説明は「2026年後半」とする内容です。具体的な公開日が設定されている段階ではなく、今後数週間から数カ月にわたって追加情報が公開される予定です。
今回の計画は、過去の有名サービスを再利用するだけの動きではありません。ソーシャルVRが機能やグラフィックスの多さだけでなく、参加しやすい空間や継続的なコミュニティによって成り立つのかを、改めて検証する取り組みといえます。新しいAltspaceの評価には、公開時の機能数だけでなく、旧利用者と新規利用者が同じ空間に定着できる設計になっているかを見る必要があります。
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【編集部後記】
VRChatのように、多くの人が長く集まり続けられるVRプラットフォームが、これからさらに増えてほしいと感じます。一つのサービスに利用者や文化が集中するだけでなく、それぞれ異なる雰囲気や遊び方を持つ場所が並び立つ方が、ソーシャルVR全体の可能性も広がります。AltspaceVRの再始動が、過去のコミュニティを取り戻すだけでなく、新しい交流の場を生み出すきっかけになるかもしれません。
VR空間を選べる時代が、もう少し広がっていくことを期待したいです。
【用語解説】
ソーシャルVR
VRヘッドセットやPCなどから仮想空間へ入り、アバターを介して会話、イベント参加、共同活動を行うオンラインサービスの総称。
精神的後継
旧作品や旧サービスのプログラムやデータを直接引き継がず、設計思想、体験、文化などを受け継いで新たに制作されたもの。
カスタムアバター
サービスが標準で用意した外見ではなく、利用者や制作者が独自に制作・調整したアバター。
サイドローディング
端末の公式アプリストアを経由せず、外部からアプリをインストールする方法。SideQuestは、Meta Quest向けアプリを発見・導入するためのサービスとして展開。
【参考リンク】
SideQuest(外部)
Meta Questを中心としたVRアプリの発見、評価、導入を支援するSideQuestの公式サイト。インディー作品や早期アクセス作品も掲載。
Banter(外部)
SideQuestが運営するソーシャルVRサービスの公式ページ。物理演算、カスタムアバター、複数のワールド、ミニゲーム、定期イベントなどを紹介。
【参考記事】
Watch AltspaceVR’s Final Moment As Worlds Go Offline|UploadVR(外部)
2023年3月10日にAltspaceVRのサーバーが停止した際の様子を記録した記事。旧サービス終了時の利用者と仮想空間の状況を確認できる資料。
Subject: Focusing on our short- and long-term opportunity|Microsoft(外部)
Microsoftが2023年に発表した全社的な人員削減と事業優先順位の見直しに関する公式説明。AltspaceVR終了当時の企業状況を示す資料。
How Burning Man VR rebuilt after Microsoft shut it down|The Verge(外部)
AltspaceVR上で活動していたBurning Man関連コミュニティが、サービス終了後に独自プラットフォームを構築した経緯を紹介。仮想空間の閉鎖とコミュニティ継承を考える参考事例。












