CASTER NEO Assistant 提供開始|「AIが受付、人が品質」の新BPaaS

「面倒な仕事、誰かに丸ごと頼めたら」——そう思ったとき、私たちはまず「人」を思い浮かべます。でも、その依頼を最初に受け取る相手が24時間眠らないAIだったら、働き方の感覚は少し変わるかもしれません。オンラインアシスタントで実績を積んできたキャスターが、その入り口をAIに置き換える一手に出ました。しかも、仕上げの品質は人が握ったまま。「全部AIに任せる」でも「今まで通り人に頼む」でもない、その中間にある新しい選択肢が、7月から動き出します。


株式会社キャスターは、オンラインアシスタント「CASTER BIZ」シリーズをAIアシスタント「CASTER NEO」シリーズへ順次刷新する。その一環として「CASTER NEO Assistant」を2026年7月1日より提供開始する。

同社の本社は東京都千代田区にあり、代表取締役は中川祥太である。「CASTER NEO Assistant」は、Slackで届いた業務依頼をAIフロントが24時間365日受け付け、人のAIコーディネーターが作業指示、進行管理、納品前チェックを担う。同社は累計6,300以上のアカウント支援で蓄積したワークフローデータと、ClaudeなどのAIを組み合わせる。対応業務は秘書、事務、経理、採用、人事、労務、マーケティングなどである。

料金はBasicプランが年間契約で30時間/月 月額132,000円(税込)、半年契約で月額145,200円(税込)、Trialプランが1か月契約で月額145,200円(税込)で、初期費用はない。既提供の「CASTER NEO Accounting」「CASTER NEO EC support」に続く展開である。

From: 文献リンクキャスター、オンラインアシスタントをAIアシスタントへ刷新 | 株式会社キャスター

【編集部解説】

このプレスリリースを一読すると「オンラインアシスタントのAI化」という定型的な発表に見えますが、注目すべきは何をAIに置き換えたかという点です。キャスターがAIに任せたのは、業務そのものよりもまず「依頼を受け付ける窓口」でした。Slack上のAIフロントが24時間365日、依頼受付・不足情報の確認・手順整理・進捗共有を担い、実務の指示と品質担保は人間のAIコーディネーターが握る。この役割分担の設計思想が、本サービスの核心です。

ここで押さえておきたいのが「BPaaS」という言葉です。Business Process as a Service の略で、業務プロセスそのものをクラウドサービスのように外部から利用する仕組みを指します。従来のBPO(業務の外注)が「人に代わってもらう」発想なのに対し、BPaaSは「仕組みごと使う」発想に近いものです。今回キャスターが掲げる「AI共生型BPaaS」は、その仕組みの一次接点にAIエージェントを据えた点に新しさがあります。

なぜ今なのか。背景には同社の一貫した歩みがあります。キャスターは2025年3月にAIエージェント制作代行「CASTER NEO」を、同年8月には生成AIと専門人材のハイブリッド型「NEO assistant」を投入してきました。今回の「CASTER NEO Assistant」は、その延長線上で既存の「CASTER BIZ」シリーズを「CASTER NEO」シリーズへ置き換えていく明確な意思表示と読めます。

数字の面で興味深い変化があります。同社は2025年3月時点で「累計5,200社以上」、8月のNEO assistant発表時には「5,700社以上」と実績を示していましたが、今回のリリースでは「累計6,300以上のアカウント支援」という表現に変わっています。実績を示す単位が「社(企業数)」から「アカウント(契約件数)」へと変わっている点は、留意しておきたいところです。同社の注釈によれば、この「6,300以上」は「継続提供サービスにおいて契約実績のあるアカウントの累計件数」と定義されています。過去の企業数ベースの数値とは基準が異なるため、「5,700社から6,300社へ増えた」と単純に比較することはできません。

技術的な下支えとして、リリースがAnthropic社の「Claude」を名指ししている点も見逃せません。特定の生成AIブランドを公式リリースに明記するのは、その選定に自信があることの表れとも言えます。バックオフィス業務は正確性と文脈理解が問われる領域です。あくまで筆者の見立てですが、そこにClaudeを組み合わせるという判断からは、同社が品質をどう捉えているかの一端がうかがえます。

ポジティブな側面は明快です。AI専任人材を抱えられない中小企業でも、Slackで依頼するだけで受付から整理までが即座に進み、業務開始までの待ち時間の短縮が期待できます。人材採用が難化するなか、AIを自前で使いこなせない企業にとって、導入の心理的・技術的なハードルを大きく下げる選択肢になり得ます。ただし、こうした効果を示す定量的な実績はまだ公表されておらず、実際の短縮幅は今後の運用のなかで見えてくるものと考えられます。

一方、潜在的な論点も残ります。料金は契約時間からLLMトークン使用量やAIエージェントツール利用料、作業指示や納品前チェックの工数が時間換算で差し引かれる方式です。つまり、契約した30時間のすべてが人的作業に充てられるとは限りません。コスト構造の透明性は評価できますが、利用者側にはこの仕組みを理解したうえでの運用が求められます。また「AIが受け付け、人が品質を担保する」という設計は安心感を生む反面、AIと人の責任分界をどこに引くかは、今後の運用実績のなかで検証されていく論点でしょう。

より広い視点で見れば、この動きは「人間の仕事がAIに奪われる」という単純な図式への、一つの現実的な回答でもあります。キャスターは全社フルリモートで国内各地に多くの働き手を直接雇用してきた企業です。その人的資本を維持しながらAIを前段に据えるという設計は、雇用を代替するのではなく、人の判断を上流の付加価値へ移す試みと読むこともできます。雇用への影響そのものはこれから検証される段階ですが、バックオフィス業務のAI化という一社の発表の奥に、「AIと人がどう役割を分け合うのか」という、これからの働き方全体に通じる問いが横たわっています。

【用語解説】

BPaaS(Business Process as a Service)
業務プロセスそのものを、クラウドサービスのように外部から利用する仕組みである。人に業務を外注するBPOとは異なり、仕組みごと使う発想に近い。キャスターは受付の一次接点にAIを据えた形態を「AI共生型BPaaS」と呼んでいる。

AIエージェント
与えられた目的に沿って、情報の確認や手順の整理などを自律的に進めるAIプログラムを指す。本サービスでは、Slack上に配備され依頼受付や進捗共有を担う「AIフロント」がこれにあたる。

AIフロント
本サービスにおける、クライアントとの一次接点を担うAIの呼称である。依頼受付、不足情報の確認、手順整理、進捗共有を24時間365日行う。Z

LLM(大規模言語モデル)
大量のテキストを学習し、文章の生成や理解を行うAIの基盤技術である。本サービスの料金では、この処理量を示す「トークン使用量」が契約時間から差し引かれる対象となる。

【参考リンク】

CASTER NEO Assistant(サービスサイト)(外部)
本記事で取り上げたAIアシスタントの公式サービスサイト。サービス内容や対応業務、料金プランを確認できる。

株式会社キャスター(コーポレートサイト)(外部)
本サービスを提供する企業の公式サイト。会社概要やニュース、IR情報を掲載。証券コード9331、東証グロース上場企業である。

CASTER NEO Accounting(外部)
Slackでの指示を起点に、AIが会計処理を自動実行する経理専門サービスの公式ページ。NEOシリーズの一つである。

CASTER NEO EC support(外部)
AIと人によるEC運営支援サービスの公式ページ。NEOシリーズの一つである。

Claude(Anthropic公式)(外部)
本サービスが組み合わせる生成AI「Claude」の開発元Anthropicの公式ページ。モデルの特徴や用途を確認できる。

【参考記事】

キャスター、オンラインアシスタントをAIアシスタントへ刷新(PR TIMES)(外部)
本件の配信版プレスリリース。「6,300以上のアカウント」の定義(※1)や導入企業数No.1の条件(※2:自社調べ・2026年4月)が確認できる。

“ヒト×AI”のハイブリッド業務支援「NEO assistant」8月21日提供開始(外部)
2025年8月の前身サービス発表。当時の実績「5,700社以上」や、支援業務の約7割がルーチン業務であるとのデータが示されている。

ABOUT | 株式会社キャスター(会社概要)(外部)
本社所在地や代表者、証券コードなど会社概要の一次情報。本記事の組織情報の裏取りに用いた。

株式会社キャスター、東証グロース市場への新規上場のお知らせ(外部)
2023年10月4日の上場告知(証券コード9331)。800名以上の直接雇用など人的資本の規模を裏付ける数値の出典である。

キャスター、オンラインアシスタントをAIアシスタントへ刷新 – 日本経済新聞(外部)
本件を報じた大手メディアの記事。2026年6月30日発表、7月1日提供開始という事実の裏取りに用いた。

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【編集部後記】

「AIが受付、人が品質担保」という並びを最初に見たとき、順番が逆かもしれない、と思いました。AIといえば難しい処理や判断を任せる存在、というイメージが先に来るからです。でも改めて考えると、依頼を受けて内容を整理し、足りない情報を聞き返す——この「入り口」の部分こそ、実は時間も気力も削られる工程だったのかもしれません。そこが軽くなるだけで、仕事の体感はずいぶん変わりそうです。

一方で、うまい話には必ず輪郭があります。契約した時間のすべてが人の手に回るわけではないこと、AIと人の境目をどこに引くのかがまだ運用のなかで固まっていくこと。こうした点は、期待とセットで見ておきたいところです。便利さの内側にある仕組みを知っておくことは、サービスを賢く使う側の準備でもあります。

面白いのは、この動きが「AIが人の仕事を奪う」という語られ方とは少し違う絵を描いていることです。受付をAIに預けたぶん、人はより判断が必要な場所へ移っていく。仕事がなくなるのではなく、担う場所がずれていく。その変化を、遠くのニュースとしてではなく、自分の机の上の話として眺めてみると、見え方が変わってくる気がします。みなさんの毎日の仕事のなかにも、「ここをAIが引き取ってくれたら」と思う入り口が、きっとどこかにあるはずです。

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omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。