Hisense「A10」発表|カラー画面を”取り外せる”E-Inkスマホ、デュアルスクリーン10年来の弱点を解く

[更新]2026年7月13日

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デュアルスクリーン端末は、なぜこの十年、常に「重さ」という代償を払い続けてきたのでしょうか。ある1台のスマートフォンが、その前提そのものを外してみせました。取り外せる画面という発想が、実際に何を変え、何を変えていないのかを見ていきます。


Hisenseは、背面に磁石で着脱できるカラーLCDパネルを備えたE-Inkスマートフォン「A10」を発表した。正面は6.13インチのE-Inkディスプレイで、パネル装着時は漫画やSNS、動画に対応し、取り外せば軽量で映り込みのない読書端末になる。競合のBigme HiBreak Dual 2はカラー画面を背面に恒久固定しており、着脱式は差別化点となる。

チップは4nmプロセスの8コアQualcomm製(型番は情報源間で未確定)で、Android 16・5G・Wi-Fi 6に対応する。価格は3,999元(約590ドル)前後、中国市場での発売が見込まれ、米国・英国では輸入ルートでの入手が想定される。着脱式カラーパネルが標準同梱かは未確定と報じられている。

From: 文献リンクHisense A10: the E-Ink phone with a color screen you can actually remove

【編集部解説】

Hisenseが発表した「A10」は、E-Inkディスプレイを主画面とするスマートフォンです。最大の特徴は、背面のカラーLCDパネルを磁石で着脱できる点にあります。

E-Ink採用のスマートフォンは長らく、色やコンテンツ本来のニュアンスを再現できないという弱点を抱えてきました。過去のデュアルスクリーン端末はこの弱点をカラー画面の同梱で補おうとしてきましたが、YotaPhoneやLG G8X、Microsoft Surface Duoなど、いずれも第2の画面を常時装着する構造を選び、重量や厚みの増加という代償を払ってきました。直近の競合であるBigme HiBreak Dual 2も、カラーLCDパネルを背面に恒久固定する方式を採っています。

A10が示した回答は単純です。カラーパネルを「常に持ち歩く部品」ではなく「必要なときだけ着ける部品」に位置づけ直したことです。

この設計が面白いのは、1日の中で使い方そのものが切り替わっていく点です。通勤電車の中で本を読むときはE-Inkだけの薄い状態、会議前にカラーパネルを装着して資料や地図を確認し、終業後は再びパネルを外して夜の読書に戻る。カラーパネルは「常時ある機能」ではなく「その時だけ呼び出す機能」として設計されています。E-Inkだけの状態は、重さも薄さもBigme HiBreak Dual 2のような固定式デュアルスクリーン機を確実に上回るはずです。

想定される使い手は、電子書籍や記事を日常的に大量に読むタイプの人、あるいはスマートフォン依存を減らしたいが通話やナビ、決済アプリだけは手放せない層でしょう。読書中はカラーパネルを鞄に置いたまま、必要なときだけ持ち出して装着する使い方が想定できます。一方、常にカラー画面で写真や動画を楽しみたい人や、着脱の手間を煩わしく感じる人には向いていません。

もっとも、見過ごせない懸念もあります。着脱式カラーパネルが標準ボックスに同梱されるかどうかが、複数の報道時点で未確定です。Hisenseは公式に肯定も否定もしておらず、この製品の核となる機能がオプション課金の対象になる可能性が残っています。仮に別売りだった場合、実質的な購入コストは提示されている3,999元(約590ドル)を上回ります。

内部構成は、4nmプロセスの8コアQualcommチップ、Android 16、5G、Wi-Fi 6対応という情報が各媒体で共通していますが、チップの具体的な型番は情報源によって食い違っており、正式発表を待つ必要があります。

Hisenseはこの路線を初めて手がけたわけではありません。2022年発売のA9、2025年の仕様強化版を経て、A10は同シリーズの3世代目にあたります。単発の実験的製品ではなく、E-Inkスマートフォンという狭い市場に継続的に投資してきた結果としての着脱式設計だと捉えられます。

販売面では、A10は中国市場先行での発売となる見込みで、米国・英国の正規販売網には乗りません。過去のA9 Proと同様、AliExpressや専門輸入業者を通じた個人輸入が主な入手経路になるとみられます。価格は、専用E-Inkリーダーとしての性格が強いBoox Palma 2 Pro(399.99ドル)のおよそ1.5倍。専用リーダーとスマートフォンという2台を1台に統合する対価と捉えれば高額ではありませんが、読書用途しか使わないなら、より安価な専用リーダーの方が費用対効果は高いといえます。

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【編集部後記】

E-Inkスマートフォンはこれまで、読みやすさとカラー表示のどちらかを諦める端末として語られてきました。A10が提示したのは、その二択自体を「常時同梱」から「必要時装着」へと組み替える発想です。ただし、着脱式パネルの標準同梱可否もチップの正式型番も、この記事の時点では未確定のまま残っています。私たちは、Hisenseが公式スペックを確定させた段階で、この設計判断が実際にどこまで機能するのかをあらためて検証する必要があると考えています。


【用語解説】

E-Ink(電子ペーパー)
画面が自ら発光せず、外光を反射して文字や画像を表示する技術。紙に近い見えかたで目が疲れにくく、消費電力も小さいが、書き換え速度が遅く、動画やカラー表示を苦手とする。

4nmプロセス
半導体チップの製造における回路線幅の世代を示す指標。数値が小さいほど微細で、消費電力あたりの処理性能が高い傾向にある。

【参考リンク】

Hisense グローバル公式サイト(外部)
Hisenseのグローバル公式サイト。A10自体の製品ページはまだ用意されていないが、企業情報・他製品ラインの確認に利用できる。

Bigme公式ストア(外部)
競合として言及したBigme HiBreak Dual 2をはじめ、同社のE-Inkスマートフォン・タブレット製品を扱う公式オンラインストア。

BOOX Palma 2 Pro 製品ページ(Onyx Boox公式)(外部)
価格比較の対象としたBoox Palma 2 Proの公式製品ページ。仕様・価格・購入バンドルを確認できる。

【参考記事】

Hisense’s new e-ink phone has a detachable color screen|Gizmochina(外部)
Hisense公式ティザーの内容を報じる一次報道。チップ・OS・通信仕様の記述元。型番の明記はない点を確認した記事。

Hisense A10 is a new E INK phone with a detachable rear display|Good e-Reader(外部)
Snapdragon 8 Gen 3説と、着脱パネルが標準同梱されない可能性をリーカー情報として報じる記事。

New Hisense e-ink phone debuts with detachable secondary display|Notebookcheck(外部)
同じくSnapdragon 8 Gen 3説を報じ、ベゼルサイズがBigme HiBreak Dual 2に近いと指摘する記事。

New Hisense A10 smartphone: E-Ink display and unique detachable screen|hi-tech.ua(外部)
価格3,999元(約590ドル)の情報を裏付ける記事。

A New E Ink Phone With a Detachable Color Screen: Hisense A10|The Gadgeteer(外部)
YotaPhone・LG G8X・Microsoft Surface Duoなど過去のデュアルスクリーン端末との比較を提供する記事。Snapdragon型番・Android版数の記述は他媒体と食い違うため未採択。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。