AI向け半導体の好況は、Samsung全体の利益を押し上げる一方、スマートフォン事業には部品コストの上昇として返ってきました。同じメモリ価格が社内の一方を潤し、もう一方を圧迫する構造から、端末市場の現在地を読み解きます。
Samsung Electronicsは2026年第2四半期、AI向け半導体需要を背景に過去最高の四半期業績を記録した一方、スマートフォンを中心とするMX・ネットワーク部門は売上高33兆2,000億ウォン、営業損失7,000億ウォンとなった。朝鮮日報によると、同社のモバイル事業では1990年代半ばの事業開始以来、初の赤字だという。
DRAMとNANDフラッシュメモリの価格上昇による部品コスト増、中国メーカーとの価格競争、1,000ドル超の高価格帯での苦戦が重なった。Samsung Securitiesは、同部門の2026年から2028年までの累計営業損失を24兆2,870億ウォンと予測している。
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Samsung Electronics’ Semiconductor Profits Can’t Offset Historic Smartphone Loss
【編集部解説】
今回の決算で注目すべき点は、Samsung Electronicsのスマートフォン販売が単純に崩れたことではありません。同じメモリ価格の上昇が、半導体部門には利益をもたらし、スマートフォン部門には部品コストとして重くのしかかったことです。
2026年第2四半期のSamsung Electronicsは、連結売上高171兆5,000億ウォン、営業利益89兆5,000億ウォンを記録しました。このうち半導体を担当するDS部門は、売上高127兆5,000億ウォン、営業利益89兆2,000億ウォンでした。一方、スマートフォンを中心とするMX・ネットワーク部門は、売上高33兆2,000億ウォンに対して7,000億ウォンの営業損失を計上しています。
Samsungは、MX・ネットワーク部門の収益悪化について、業界全体で部品コストの圧力が高まったことを理由に挙げています。反対にDS部門では、AIサーバー向け需要とメモリ価格の上昇が過去最高の収益につながりました。つまり、AIデータセンター向けの需要増によってメモリの供給が限られるなか、半導体を販売する側と、それをスマートフォンに組み込む側で明暗が分かれたことになります。
ただし、半導体部門の利益がそのままスマートフォン部門の損失になったわけではありません。今回の決算発表では、事業部門間の具体的な取引価格や調達条件は公表されていません。確認できるのは、同じ市場環境がDS部門の販売価格を押し上げる一方、MX・ネットワーク部門の製造コストも上昇させたという構造です。
Samsungは半導体、ディスプレイ、スマートフォンを幅広く手がけています。こうした垂直統合型の事業構造は、部品調達面で一定の優位性を持つと一般に考えられます。
しかし、部品を自社で生産していることと、完成品部門が市場価格の上昇から切り離されることは同じではありません。半導体部門には、外部のAIサーバー事業者を含む多くの顧客へ、収益性の高い製品を販売する役割があります。一方、スマートフォン部門には、製品価格を競合と比較しながら決めなければならない制約があります。
半導体価格が上昇しても、その上昇分をスマートフォン価格へすべて転嫁できるとは限りません。特に普及価格帯では、値上げによって販売台数が減る可能性があります。価格を維持する場合には、メーカー側が利益率の低下を受け入れるか、保存容量や部品構成、販売モデルの種類を見直す必要があります。
市場全体でも、メモリ不足と部品コストの上昇を背景に、出荷台数よりも平均販売価格を重視する動きが強まっています。Counterpoint Researchによると、2026年第1四半期の世界スマートフォン市場では出荷が減速する一方、平均販売価格は前年同期比12%増の399ドルとなりました。Samsungも平均販売価格を前年同期比4%引き上げ、低容量モデルを廃止するなど、より高い価格帯へ製品構成を移しています。
Samsung全体では半導体部門の利益がMX・ネットワーク部門の赤字を大きく上回っているため、企業全体の経営が直ちに悪化したわけではありません。しかし、連結利益が大きいことと、スマートフォン事業が持続的に利益を出せることは別の問題です。
Samsungは2026年後半に、Galaxy Z8シリーズやGalaxy S26シリーズを中心としたフラッグシップ製品の販売を拡大し、Galaxy製品全体の高価格帯比率を高める方針を示しています。同時に、コスト上昇の影響を抑えるための効率化にも取り組むとしています。
この方針からは、販売台数を幅広く確保する従来型の戦略よりも、1台当たりの収益を重視する方向への移行が読み取れます。ただし、元記事が指摘するように、高価格帯ではAppleとの競争があり、普及価格帯では中国メーカーとの価格競争があります。高価格帯へ移れば自動的に収益性が回復するわけではありません。
元記事が紹介したSamsung Securitiesの2026年から2028年までの損失予測は、Samsung自身が示した業績見通しではなく、証券会社による予測です。将来の製品価格、メモリ相場、販売台数によって大きく変わるため、確定した損失として扱うべきではありません。
日本市場への具体的な影響は未定ですが、世界的な部品コスト上昇が続けば、今後の日本向けモデルでも販売価格、保存容量、取り扱う機種の選定に波及する可能性があります。これはSamsungだけの問題ではなく、AIインフラへの投資拡大が、消費者向け端末の価格や選択肢にも影響する構造的な問題です。
【関連記事】
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【編集部後記】
半導体からスマートフォンまで手がけるSamsungですら、メモリ高騰の影響を避けられないとは驚きです。AI向け需要が伸びるほど、消費者向け端末のコストが押し上げられる構図は複雑に感じます。
価格上昇だけでなく、保存容量や製品構成にも影響が広がる可能性があります。
スマートフォンを買い替えたい利用者にとっては、決して遠い話ではありません。
このメモリ高騰は、いったいいつになれば落ち着くのでしょうか。
今後の価格動向を引き続き注視したいところです。
【用語解説】
DS部門(Device Solutions)
Samsung Electronicsで半導体事業を担当する部門。DRAM、NANDフラッシュメモリ、HBM、システムLSI、半導体受託製造などを扱う。
DX部門(Device eXperience)
スマートフォン、通信機器、テレビ、家電など、消費者向け完成品を担当する事業部門。
MX部門(Mobile eXperience)
Galaxyスマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末など、モバイル製品を担当する事業部門。Samsungは決算でMX部門とネットワーク部門の業績を合算して公表している。
DRAM
端末やサーバーが処理中のデータを一時的に保持する揮発性メモリ。スマートフォンでは主にLPDDR規格のDRAMが使用される。
NANDフラッシュメモリ
電源を切ってもデータを保持できる半導体メモリ。スマートフォンの写真、アプリ、OSなどを保存するストレージとして使用される。
HBM(High Bandwidth Memory)
複数のDRAMチップを積層し、大量のデータを高速に転送するメモリ。生成AIの学習や推論に使用されるGPU、AIアクセラレーターで需要が拡大している。
BOM(Bill of Materials)
製品の製造に必要な部品や材料を一覧化した部品表。各部品の価格を合計したものはBOMコストと呼ばれる。
垂直統合
部品の製造から完成品の開発・販売まで、複数の工程を同一企業または企業グループ内で手がける事業構造。
【参考リンク】
Samsung Japan公式サイト(外部)
Galaxyスマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末など、日本で販売されるSamsung製品の仕様、価格、キャンペーン情報を掲載する公式サイト。
Samsung Semiconductor公式サイト(外部)
SamsungのDRAM、NANDフラッシュメモリ、SSD、プロセッサ、イメージセンサーなど、半導体製品と関連技術を掲載する公式サイト。
Samsung Global Newsroom(外部)
Samsung Electronicsの決算、新製品、研究開発、事業提携などに関する公式発表を掲載するグローバル向けニュースルーム。
【参考記事】
Samsung Electronics Announces Second Quarter 2026 Results|Samsung Global Newsroom(外部)
2026年第2四半期の確定決算。連結業績に加え、DS部門、MX・ネットワーク部門、家電部門などの売上高、営業損益、2026年後半の事業方針を掲載する公式発表。
2026年第1四半期グローバルスマートフォン市場における売上高を発表|Counterpoint Research(外部)
メモリ不足と部品コスト上昇によるスマートフォン市場への影響を分析。世界平均販売価格の上昇や、Samsungが低容量モデルを減らして高価格帯へ移行する動きを掲載。
Memory Price Surge to Persist in 1Q26; Smartphone and Notebook Brands Begin Raising Prices and Downgrading Specs|TrendForce(外部)
メモリ価格の上昇によって、スマートフォンメーカーが値上げ、仕様の引き下げ、製品構成の見直しを迫られる可能性を分析した市場調査。












