Zero Latency VR「Jumanji: The Lost Levels」|コントローラー不要、家族向けVRの入口を変える

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VRを初めて体験する人にとって、意外に大きな壁になるのが「どう操作すればいいのか」です。Zero Latency VRの新作は、その入口からコントローラーを取り除きました。Zero Latencyの調査で家族利用の広がりが示されるなか、手そのものを操作手段にする設計は、施設型VRの体験をどう変えるのでしょうか。


Zero Latency VRは2026年8月18日、Sony Picturesと共同開発した「Jumanji: The Lost Levels」を12月4日に世界各地で提供すると発表した。

5カ国の成人2,386人を対象とした調査では、60%が家族とロケーションベース・エンターテインメントを訪れ、来場者の45.8%を35〜44歳が占めた。同作はZero Latency初の完全ハンドトラッキング対応タイトルで、コントローラーを使わず手の動きで操作する。

From: 文献リンクTHE NUMBERS ARE IN: FAMILIES ARE THE FUTURE OF VR, AND ZERO LATENCY VR’S JUMANJI: THE LOST LEVELS WILL BE READY FOR THEM

【編集部解説】

「Jumanji: The Lost Levels」で注目したいのは、Zero Latency VRとして初めて完全なハンドトラッキングを採用し、専用コントローラーを使わずに遊べるようにした点です。プレイヤーは手を伸ばす、物をつかむ、投げる、押すといった身体動作によってゲーム世界とインタラクションします。

これは単に入力デバイスを置き換えたという話ではありません。VRを初めて体験する人にとって、コントローラーのボタン配置や操作方法を覚えること自体が体験開始までのハードルになります。特に家族のように、ゲームに慣れた人とほとんど遊ばない人が同時に参加する場面では、参加者全員に操作説明が必要になることがあります。

一方、自分の手をそのまま入力手段として使えれば、「手を伸ばして取る」という現実世界の動作と、VR内で求められる操作を近づけることができます。Zero Latency VR自身も今回、コントローラーやボタン操作をなくすことで、ゲーム経験のない利用者にも参加しやすい体験を目指していると説明しています。

この設計変更は、今回突然始まったものではありません。Zero Latencyは2022年にHTCと共同で次世代プラットフォームを導入し、それまでプレイヤーが背負っていたバックパックPCを不要にしました。VIVE Focus 3とWi-Fi 6Eによる無線ストリーミングを採用し、最大8人が同じ空間を歩き回れる仕組みを提供しています。

当時のシステムでは専用の銃型コントローラーを使用する一方、Zero Latencyは将来のタイトルへのハンドトラッキング導入も検討していると明らかにしていました。今回の「Jumanji: The Lost Levels」は、その方向性を実際の商用コンテンツに持ち込むものと位置付けられます。

バックパックPC、ケーブル、そして今回はコントローラーと、プレイヤーが意識しなければならない装置を少しずつ減らしてきたことになります。VRの性能を上げるだけではなく、「VRを操作している感覚」を薄くしていくことが、Zero Latencyの体験設計の一つの方向になっていると読み取れます。

今回の発表では、Zero Latency VRが2026年6月にオーストラリア、米国、カナダ、フランス、スペインの成人2,386人を対象として実施したブランド調査も公表されています。回答者の60%が家族とロケーションベース・エンターテインメントを訪れると答え、Zero Latency来場者の62.9%が家族向けアクティビティとして予約する意向を示しました。また、来場者で最大の年齢層は35〜44歳で、45.8%を占めるとしています。

ただし、これらはZero Latency VRが実施したブランド調査であり、VR市場全体の利用者構成を示した統計ではありません。調査対象も5カ国に限られているため、「VR全体で家族利用が主流になった」とまでは判断できません。

それでも、同社が自社の来場者として家族層の存在を強く意識し、そのタイミングで操作を簡略化したタイトルを投入する点には一貫性があります。家庭用ゲームのように一人ひとりが操作方法を学ぶのではなく、施設に来た複数人が短時間で同じ体験に参加するロケーションベースVRでは、操作説明に必要な時間そのものが体験設計上の負担になります。

ハンドトラッキングは、この負担を減らすための一つの手段になり得ます。

Zero Latency VRとSony Picturesの提携自体は2026年2月に発表されていました。Zero LatencyはJumanjiについて、複数人が協力して進む作品世界と、自社のフリーローム型VRとの親和性を強調しています。

同社のフリーロームVRは、現実の広い空間を複数人で歩きながら同じ仮想空間を体験する形式です。現在は30カ国で150以上のアリーナを展開し、累計600万回以上のプレイを記録したとしています。

ここに映画として広く知られるJumanjiというIPと、コントローラーを覚える必要のない操作方式を組み合わせることで、VRそのものを目的に施設へ来る人だけではなく、「Jumanjiを家族で体験したい」という利用者も参加しやすい設計になります。

つまり今回の重要な点は、ハンドトラッキングという技術単体ではなく、VRを知らなくても遊び始められるところまで入口を近づけようとしていることです。

一方で、実際のハンドトラッキング精度や、複数人が同時に動く環境でどの程度安定して操作できるのかは、今回の発表だけでは判断できません。また、Zero Latency VRは12月4日に世界各地の拠点で提供するとしていますが、日本で利用できる施設や開始時期について、今回の発表には具体的な記載がありません。

「コントローラーなし」が本当にVR初心者の負担を減らせるかどうかは、実際のサービス開始後に見えてくる部分です。それでも、VR普及の課題をヘッドセットの性能だけではなく、「初めて来た人が説明なしで何をできるか」という体験設計から解こうとしている点は、ロケーションベースVRの現在地を見るうえで興味深い動きです。

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【編集部後記】

今回の発表を見て、VRの普及を左右するのは性能だけではなく、「最初の一歩をどれだけ軽くできるか」なのだと感じました。コントローラーを覚えなくても、自分の手をそのまま使えるなら、VRに慣れていない人でも参加しやすくなります。とくに家族で同じ体験を共有する場では、操作方法の説明に時間を使わず、すぐに遊び始められることの価値は大きそうです。Jumanjiのように多くの人が知る作品と組み合わされることで、VRそのものに興味がなかった層にも届く可能性があります。機器を増やして機能を足すのではなく、逆に操作を減らしていく方向に進んでいる点が印象に残りました。
VRが特別な技術ではなく、映画館やアミューズメント施設のように自然な選択肢になるには、こうした「使い方を意識させない設計」が鍵になるのかもしれません。


【用語解説】

ロケーションベースVR(LBE VR)
自宅ではなく、専用施設に設置された空間や機器を使って体験するVR。広い実空間を歩き回るフリーローム型や、複数人が同じ仮想空間に参加する形式などがある。

フリーロームVR
プレイヤーが決められた実空間の中を実際に歩き、その動きを仮想空間へ反映するVR方式。Zero Latency VRでは、複数人が同じアリーナ内をケーブルにつながれずに移動できるシステムを採用している。

ハンドトラッキング
カメラやセンサーを使って手や指の位置・動きを認識し、VRやAR内の操作に反映する技術。専用コントローラーを持たず、つかむ、押す、指し示すといった身体動作を入力として利用できる。

6DoF(6 Degrees of Freedom)
前後・左右・上下の位置移動と、上下・左右・傾きの回転を合わせた6方向の動きを追跡する方式。プレイヤーが仮想空間内を自然に移動するための基盤となる。

【参考リンク】

Zero Latency VR(外部)
フリーローム型のロケーションベースVRを世界各地で展開するZero Latency VRの公式サイト。施設検索や提供中のVR体験などを確認できる。

Zero Latency VR:Jumanji VR(外部)
Sony Picturesとの提携とJumanjiのVR体験について紹介する公式発表。フリーロームVRへJumanjiの世界観を展開する経緯を説明。

Sony Pictures:Jumanji(外部)
Sony Picturesによる映画「Jumanji」の公式ページ。今回のVR体験の基となる映画フランチャイズに関する公式情報。

【参考記事】

ZERO LATENCY VR UNLOCKS THE WORLD OF JUMANJI IN IMMERSIVE VR|Zero Latency VR(外部)
2026年2月に発表されたSony Picturesとのライセンス契約。JumanjiをZero Latencyの次世代フリーロームVRへ展開する経緯と、複数人による共有体験を重視する狙いを説明。

Zero Latency Launches The First Truly Wireless Free Roam VR System|Zero Latency VR(外部)
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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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