Bybit×Circle USDC戦略提携:Arcと規制ライセンスで加速するグローバルステーブルコイン基盤

[更新]2025年12月10日

Bybit×Circle USDC戦略提携:Arcと規制ライセンスで加速するグローバルステーブルコイン基盤 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年12月8日、ドバイでBybitがCircle Internet Group, Inc.の関連会社とUSDCのグローバル採用拡大に向けた戦略的パートナーシップを発表した。 提携では、Bybitがスポットおよびデリバティブ市場におけるUSDC流動性を強化し、各種サービスでのUSDC利用を拡大する。

両社はCircleのインフラとパートナーネットワーク、Bybitのグローバルなリーチを組み合わせ、主要市場で法定通貨とデジタル資産の入出金を簡素化することを目指す。 BybitはBybit Earn、Bybit Card、Bybit PayへのUSDC統合を進め、Circleのレイヤー1ブロックチェーン「Arc」のパブリックテストネットにも初期参加している。

BybitはUAEのSecurities and Commodities Authorityからフルライセンスを取得し、欧州経済領域やトルコなどで規制対応を拡大している一方、USDCは現金および現金同等物で全額裏付けされ、1:1で米ドルと交換可能なステーブルコインとして位置付けられている。

From: 文献リンクBybit and Circle Forge Strategic Partnership to Advance Global USDC Adoption

【編集部解説】

今回の提携は、USDCという規制準拠型ステーブルコインと、世界第2位クラスの取引量を持つBybitが、本格的に「法定通貨レベルのインフラ」をクリプト側に持ち込もうとする流れの一端と言えます。 単なる上場追加ではなく、スポット・デリバティブ・入出金・決済・貯蓄・カード決済までUSDCを通底させることで、「USDCを中心とした金融レイヤー」をBybit上に構築しようとしている点が重要です。

技術面で鍵になるのが、Circleが開発するレイヤー1ブロックチェーン「Arc」の存在です。 Arcはステーブルコインを前提に設計されたチェーンであり、USDCをただ動かすだけでなく、清算・送金・決済などの金融オペレーションをオンチェーンで完結させるためのインフラを志向しています。 ここにCEXのBybitがパブリックテストネット初期参加組として関わることで、将来的に「取引所のオフチェーン台帳」と「Arc上のオンチェーン決済レイヤー」が近づいていく可能性があります。

規制という観点では、BybitがUAEのSecurities and Commodities AuthorityからフルのVirtual Asset Platform Operatorライセンスを取得し、EEAやトルコなどでも規制準拠を進めている点が、この提携の信頼性を支える土台になっています。 一方のUSDCも、現金および現金同等物による裏付けと第三者による月次アテステーションを前提とする設計で、「透明性とコンプライアンス」を軸に市場を拡大してきました。 つまり両者は、どちらも「規制に向き合うこと」を前提に拡大しているプレーヤー同士という構図です。

ユーザー視点で見ると、USDCを軸に「取引・利回り運用・カード・日常決済・法定通貨ゲートウェイ」が一つのプラットフォーム内でつながることになります。 ボラティリティの高い銘柄を跨ぎながら資金を移すのではなく、「ローカル通貨 → USDC → 各種暗号資産 → 再びUSDC → ローカル通貨」といった流れが単純化され、ステーブルコインを“中継資産”として使う設計がより自然になっていくはずです。

同時に、USDCのような規制準拠型ステーブルコインと、大手取引所および専用レイヤー1チェーンが強く結びつくと、流動性や開発リソースが特定エコシステムに集中するリスクも生まれます。 規制要件が厳格化した場合、KYCや資本規制がユーザー体験に与える制約が増し、プライバシーや検閲耐性の面でトレードオフが顕在化する可能性もあります。 それでも、トラディショナル金融とWeb3の間に本気で橋をかけようとする動きが、USDC・Arc・Bybitという組み合わせで立ち上がりつつある、という事実は、ポスト投機フェーズのクリプトインフラを占ううえで大きなシグナルだと感じています。

【用語解説】

USDC
Circleが発行する米ドル連動型ステーブルコインで、準備資産により1 USDC=1 USDの価値維持を目指すデジタル通貨である。

ステーブルコイン
法定通貨や国債などの資産を担保に価格を一定水準に保つことを目的とした暗号資産の総称である。

レイヤー1ブロックチェーン(Layer-1)
他のチェーンに依存せず自らコンセンサスとセキュリティを提供する基盤ブロックチェーンのことを指す。

オンランプ/オフランプ
法定通貨と暗号資産を相互に交換する出入口機能で、銀行口座やカードからの入金・出金経路を指す。

欧州経済領域(EEA)
EU加盟国にアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを加えた経済圏で、金融・デジタルサービスの共通市場を形成している。

Virtual Asset Platform Operator License
UAEのSecurities and Commodities Authorityが発行する、暗号資産取引や関連サービスの提供を認可するライセンスである。

【参考リンク】

Circle 公式サイト(外部)
USDCや決済ネットワーク、Arcブロックチェーンなどを提供するインターネット金融プラットフォーム企業の公式サイトである。

USDC 公式情報(外部)
USDCの仕組み、準備資産、対応チェーン、利用事例などをまとめたCircleの公式リソースページである。

Bybit 公式サイト(外部)
デリバティブやスポット、Earn、Card、Payなど多様なサービスを提供する暗号資産取引所Bybitの公式サイトである。

Bybit Press(外部)
Bybitに関する公式プレスリリースや最新発表、企業関連ニュースが掲載されているメディア向けページである。

Bybit Earn(外部)
USDCを含む暗号資産の運用商品を提供し、定期・柔軟な利回り商品などをまとめたBybitのEarnポータルである。

Bybit Card(外部)
暗号資産残高を用いた決済やキャッシュバックリワードが利用できるBybitのカードサービス紹介ページである。

Bybit Pay(外部)
暗号資産を用いた支払い・送金・決済ソリューションを提供するBybitの決済サービス公式ページである。

【参考記事】

Bybit and Circle Forge Strategic Partnership to Advance Global USDC Adoption(PR Newswire)(外部)
BybitとCircleの提携内容として、USDC流動性強化、オン・オフランプ連携、Arcテストネット参加、UAEやEEAでの規制対応などを包括的に伝えている。

Circle, Bybit partner to expand global USDC access and adoption(外部)
プレスリリース内容に加え、USDC準備資産やArcネットワークの位置付け、機関投資家向けの意味合いを整理している。[3]

Bybit Partners with Circle to Expand USDC Services Across Platform(外部)
BybitにおけるUSDC取引、Earn、Card、Payへの統合計画と、入出金や決済の利便性向上に焦点を当てている。[4]

Bybit And Circle Forge Strategic Partnership To Advance Global USDC Adoption(外部)
ステーブルコイン市場の背景やUSDCの規制面での位置付け、Arcが目指すインフラ像を解説している。[2]

Bybit Strengthens Stablecoin Presence With Circle’s USDC(外部)
BybitがUSDCを中心にステーブルコイン戦略を強化し、規制対応とグローバルユーザー基盤をテコにTradFiとの橋渡しを狙う姿勢を紹介している。[8]

Bybit, Circle partner to advance global USDC adoption(外部)
UAEでのライセンス取得と中東市場での展開、法定通貨ゲートウェイとしての役割にフォーカスして解説している。[6]

Bybit And Circle Form Strategic Partnership To Accelerate Global USDC Adoption(外部)
Arcパブリックテストネットへの参加やUSDC中心のクロスチェーン流動性構想を取り上げ、提携をエコシステム拡大の一環として位置付けている。[5]

【編集部後記】

今回のBybitとCircleの提携は、「ステーブルコインがインフラになるとしたら、どんな風景になるのか?」を考えるうえで、かなり示唆に富んだ事例だと感じています。 もしUSDCのような規制準拠型ステーブルコインが、取引・貯蓄・決済・カード・オン/オフランプまで一気通貫でつながったとき、自分の仕事や事業、資産の持ち方はどう変わりそうでしょうか。

「価格」ではなく「仕組み」としてのクリプトに触れはじめた方にとって、USDCやArc、そして各国規制とWeb3の折り合いのつけ方は、これから数年を占う重要なテーマだと思います。 この記事が、そうした未来のインフラを一緒にイメージしていくための小さなきっかけになればうれしいです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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